安岡章太郎のレビュー一覧

  • 海辺の光景ほか六編

    Posted by ブクログ

    短編集。

    表題作は緊張感ある作品であった。
    主人公と母親、そして父親との関係を母親の狂気と死からはじき出そうとしている。隠喩も巧みであり、没入した。本人の体験もその下地になっているという。

    「宿題」という小学生の独白体の小説があった。
    青森ののんびりした小学校から青山の学校に移って落ちこぼれ、宿題をサボり、やがて学校もサボる姿を描いている。

    いつぞやの自分のような?
    はっはっはっはー。

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    2010年05月08日
  • 質屋の女房(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

     悪い奴じゃない、でも、良い人にもなれなかった…。安岡章太郎の小説っていうのは、そういうどっちつかずの人間の悩みが描かれている。さて、そういう半端な人間の王様といえば、やっぱり童貞だ。ここに収録された主人公達も実は皆童貞だ。ものすごく童貞について悩んでる。この本は「童貞傑作選」と呼んでも過言ではない。

     それはさておき、中でも安岡は「家族」のうまくいかない感じにわりとこだわっている。この問題、古く見えるかもしれないけれど、全然古くないと思う。と言うのは、確かに父権性とか家族主義っていうのは、昔に較べたらゆるくなってきた。だけど心のどこかで「でもやっぱりおれ家族の中で育ったんだよ」っていう気持

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    2009年10月04日