小林亜津子のレビュー一覧
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医学生が生命倫理を学ぶって当たり前だが、意外と一般人は知らないんじゃないかと思う。私も法学や心理学などは学ぶだろうなと思っていたが、「生命倫理学」という学問があることも知らなかったくらいだ。
そして、この本を読むと、医師は患者とその家族の命や生き方に(時にはかなり深く)関わるのだから、医師になる前にこれを学ぶのは絶対に必要だということがわかる。そして私たちは本書を読むことで、「いのち」という概念がいかにあやふやなものであるかを知る。
人間はいつから人間なのか?という問に、受精の瞬間と考える人もいれば、着床した時(受精しても着床するのは20%というのは初めて知った。)と考える人もいる。胎内で人の -
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この本を読んで、いのちのあり方はそれぞれの価値観によって大きく変わり、いのちの所有権などの「権利」が深く関わっていると感じた。
どちらのいのちが優先か?などのテーマが面白かった。双子の分離手術の話も読んでいて自分だったらどうするだろう、と自分に置き換えて読むことが出来、今まで考えてこなかった生命倫理について考えるきっかけをくれた。
いのちの質、という話も興味深くその質は誰から見た質なのか?その質が劣っていたら価値のない人なのか?など倫理的な問題も知ることができ勉強になった。
こういった問題を考えるのはとても難しいし、答えをひとつに決めるのはもっと難しい。しかし知っておくことで固定観念に流 -
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生命倫理を調べる中で。
扱ってるテーマがわかりやすくて良いです◎
整形、ドーピング、スマートドラッグなど。あと映画の話題もあってよかったです。
スマートドラッグ、知らなかった。
ヒルドイドも然り、医療用のものを目的外で使うというのはやっぱり良くない(当たり前!!)なぁと思います。
でも、「すばらしい新世界」にもそんな薬ありましたよね。精神を安定させる薬だったかな。
読者は高校生くらいを想定してると思うんですが、ミルの他者危害原理で、なぜミルは「判断能力のある大人」としたのか、とか、もう少し突っ込んで解説があると良かったかも。(単に、ミルが言ったからとか、子供だから決められないよね、では納得でき -
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読みながら色んなことを考えた。
自分が、家族が苦しみから解放されたいと願うときに、自分がで下せるのか?とか…。
昔見た「ミリオンダラーベイビー」の場面が思い浮かんだ。
死について、誕生について、また医療を受けること、動物や結合双生児など、さまざまな議論を紹介する。
国によっても考え方や法律が違う。
また、宗教によっても意見が分かれる。
考えても考えても、正解がないことだと思う。
生命倫理について、枠組みから考えるってことや、これまで考えたことがあまりなかったことについても考えられた。
これまでは私自身、中絶は認められるし、安楽死も賛成、動物は好きだけど命の優先順位や人間と同じに扱うのはどう -
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ネタバレ体外受精で生まれた子供は14人にひとり。
エンハンスメント=強化は、生命倫理学の新しいテーマ。
治療技術がエンハンストメントに使われる。
美容整形は自由か。
親に遠慮しなければいけないか。整形は私の自由か。
自由主義社会の倫理では、①判断能力がある大人で、②自分の生命身体財産など自分のことに関して、③他人に危害を及ぼさない限り、④たとえ当人に不利益なことでも、⑤自己決定の権限を持つ。
美容整形を受けない自由にも影響を与えないか=他者による支配が作用しないか。
心のトラウマは美容整形をしても治らないのではないか。
歯列矯正をさせない親はひどい親と思われないか。
ドーピングはなぜいけないのか。 -
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ネタバレ冷凍精子で妊娠して、父親の死後300日経過すると嫡出と認められない。
健康な受精卵を選ぶことは自然か。
自然界では、一定の割合で子孫を残せない固体がある。人間も1割ほどが不妊カップル。
体外受精と精子凍結、卵子凍結が発達した。
同性婚で自分の子供を作ることができる。
代理母出産は、治療といえるか。
救済治療と根治治療の違い。コンタクトレンズは救済治療。臓器移植も救済治療。
生殖治療も救済だが、命の危険にさらされているわけではない。
野田聖子議員は、自分の卵子ではなく米国で卵子ドナーで出産。卵子の老化をしらなかった。
卵子は老化するが、生む能力は年齢によって変わらない。若い卵子があれば出産可能 -
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生命倫理に関心があったり、実際にジレンマを感じていたりする人が、最初に手にする本として、とても良いのではないかと思いました。
医療原則については言及していますが、その原則の歴史や、他の規範倫理(義務論とか功利主義とか)の説明は出てきません。倫理を履修したことはないけれど、死ぬ権利や延命治療、意思決定、中絶などに関心がある人に向けて書かれているように思います。
数ある「入門」倫理書に比べて、かなり噛み砕いて、分かりやすく表現しているので、実際にジレンマを言語化するときのヒントにもなりそうです。
また、ブラック・ジャックを読みたくなります。
ボリュームは物足りないので、参考文献やその他の本と合わせ -
Posted by ブクログ
ちくまプリマ新書の想定される読者層は、本来主に中高生なのだろうけど、大人でも十分読み応えある本が多いと思う。本書もまさにその1冊。
生命倫理学は、学生の頃(当時は「生命倫理学」としてジャンルがきちんと確立していなかったかもしれないけど)講義を受けたことはあるが、社会人になり忙しさにかまけて、ニュースなど実際のケースの報道に接しても、正直そこまで深くは考えていなかった。なので本書で改めて、深く考えるきっかけを与えてもらったし、数十年前に比べると、学説や裁判例などもかなり蓄積されていて、論点もかなり整理されてきているのだなあという感想を持った。さらに当時では考えられなかった新しい論点も出てきている -
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Quality of Life=生活の質(よりよく生きる)とはどういうことか、わかりやすく論じている。QOLとは何かというより、それについて考えをめぐらせるきっかけになると思う。
たとえば、本人が意識あるうちに延命治療拒否の意思を示していたら、私は本人がその後意思が変わっていたとしても、その示した意思どおりに対応すればいいと思っているんだけど、実際に生命を左右する手を下すことになる医師であったり救急救命士などとなれば煩悶するのもわからんでもない。特に、いまの責任をとりたがらない日本の人々を相手にしていては、とり返しのつかない生命を止めてしまう行為には二の足を踏んでしまうだろう。
私自身のことな