小林亜津子のレビュー一覧
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QOLが主題に付されていますが、副題である「医療とケアの生命倫理」が内容の中心であり、QOLはそれにアプローチするためのフレーム、という位置づけだと解釈しました。むしろ生命倫理についてのホットな諸問題について、それぞれの問題の核心はなにかをコンパクトにまとめてくれています。当該分野の初心者に最適だと思いました。
本書を読んで、医療問題の解決策がわかるわけではありません。むしろ読みすすめるほど、この問題に汎用性のある答えが存在しないことが身にしみてわかります。どんな医療が正解なのかは当事者にすら容易に判断がつかない場合も多く、答えは各事例の関係者がその都度模索してゆかねばならないのでしょう。 -
Posted by ブクログ
普通のちくま新書はよく読むけど、ちくまプリマー新書を読んだのはこれがはじめてです。ちくま新書が少々専門性が高いのに対して、ちくまプリマー新書は小学校高学年ぐらいの児童から大人まで、誰でも読める敷居の低さがある気がします。
ただ、「敷居低い=内容が簡単」というわけでは決してありません。特に、本書『はじめて学ぶ生命倫理』の場合は。
いのちの終わりの決定権、いのちのはじまりの判断、いのちの質(QOL)の考え方、いずれも生命倫理上の難問ばかりが本書では取り扱われています。近年の海外での判例などが取り扱われているので、こういう問題に通じた人が読んでも、意外な発見があるかもしれません。
中学、 -
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生命倫理って解決策のない底なし沼のようだ。著者は生命倫理は「対話」として展開されてきた学問だという。教師として分かりやすく問題提起し理性的に読者を対話の場に引き込もうとする。教育・研修等でこのような本を教材に討論したら大いに勉強になるだろう。しかし生命倫理って意見を集約し議論をまとめて正解を出していくという学問というよりも、理屈はそうだけど実際貴方はどうするのどう考えるのという一人ひとりの内面に還元され自己決定にゆだねられるような学問のように思う。一人ひとりの人間性、生き方を根こそぎ問われる学問のようだ。結局はどのような選択も概ね尊重され社会的事情の審査を受けて承認されるべきと思うが、他の生命
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前に読んだ『はじめて学ぶ生命倫理』が大変よかったので、こちらも読んでみた。
こちらはテーマが美容整形、ドーピング、スマートドラッグで、生命の危険は基本的にないものなので、中高生の話し合いのテーマとしても、いいと思う。
どれも、安全性、公平性、主体性または人間性の観点から論じられており、この観点を持てること自体がとても大切だと思う。
また、「判断力のある大人が自由意志で行っている」としても、それは本当に自由なのか。美容整形を何度も行っている人達の顔は似ている。つまり、自分が美しいと思っている顔になりたいのではなく、世間が美しいと思っている顔になりたいのである。
といった指摘はとてもよかった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ中高生向けの、生命倫理学についての本。
「QOL」とは「Quality Of Life」の略で、
すなわち、「生活の質」「人生の満足度」などに訳す事が可能な概念です。
本書では冒頭でソクラテスが言ったとされる
「大切なのは、ただ生きることではなく、よく生きることである。」
が引かれていて、「QOL」はまさに「よく生きること」、
わくわくしたり幸せだなと思ったりなど、そのような時間を過ごしているときではないか、
と解説されています。
ふだん、健康に過ごしている人にとっては、
QOLを特別に意識することは少ないのではないでしょうか。
たとえば、一日のあいだの短いひとこまに、
「よく生きている」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者は倫理学者(哲学者)。
7つの場面を例に、「どこからいのちで、どこまでがいのちなのか」「いのちは誰が決めるのか」を問う本。
尊厳死、QOL、こどもの決定権、判断能力(コンピテンス評価)、デザイナーベイビー、精子バンク、結合双生児、正当防衛、種差別、中絶、人権の始まり…等々、キーワードを記録しておく。
時々「ブラックジャック」や「GTO」などの漫画タイトルが出て来たりするので、ちょっと気が楽になる。
もちろん実際の例も取り上げられながら、必ず章の終わりに問いかけで終わる。
1つの意見や思想に執着していないので、どんな意見にも平等な印象。答えを出させることが目的なのではなく、考えさせること -
Posted by ブクログ
バイオエシックスの問題は難しい。医学部でほとんど習わないのだから、科学者にリテラシーを求めるのは結構大変なことだと思う。ジェンダーや性同一性障害の問題、代理母の問題、生まれて来る子の知る権利など、日本ではまだそれほどオープンに議論されているとはとても思えない。セックスアンドザシティーやジーンワルツなどの物語のエピソードを取ってきて、一般の人にとっかかりやすいようにしているのは良いが、引用が長過ぎて、もう少し倫理の専門的な議論まで踏み込んで欲しい気がした。
この本を要約すると、筆者があとがきで述べていることに尽きるのではないか。すなわち、倫理学的には「人間の自由の限界は、「他者危害」を与えな