【感想・ネタバレ】はじめて学ぶ生命倫理 ──「いのち」は誰が決めるのかのレビュー

あらすじ

医療が高度に発達した現在、自分の生命の決定権を持つのは、自分自身? 医療者? 家族? それとも法律? 生命倫理学が積み重ねてきた、いのちの判断をめぐる「対話」に、あなたも参加してみませんか。

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Posted by ブクログ

〈いのち〉に対して過度なまでに干渉できるようになってしまった現代だからこそ、その〈いのち〉についてじっくりと考えることが必要だと思った。
生命倫理の問題は、誰しもが直面するものだ。
自分はどんな選択をするのだろう。

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2024年02月27日

Posted by ブクログ

医学生が生命倫理を学ぶって当たり前だが、意外と一般人は知らないんじゃないかと思う。私も法学や心理学などは学ぶだろうなと思っていたが、「生命倫理学」という学問があることも知らなかったくらいだ。
そして、この本を読むと、医師は患者とその家族の命や生き方に(時にはかなり深く)関わるのだから、医師になる前にこれを学ぶのは絶対に必要だということがわかる。そして私たちは本書を読むことで、「いのち」という概念がいかにあやふやなものであるかを知る。
人間はいつから人間なのか?という問に、受精の瞬間と考える人もいれば、着床した時(受精しても着床するのは20%というのは初めて知った。)と考える人もいる。胎内で人の形になったら人だという人もいれば、胎児には「潜在的人格」はあるが、「現実の人格」とは言えないと考える人もいる。胎児は母親の一部だと考えれば、妊娠中絶は許される(プロ・チョイス)。しかし人と考えるなら中絶は殺人である(プロ・ライフ)。これはどちらが正しいとは言えない問題である。
妊娠中絶は女性の権利である、と聞くとその通りだな、昔、生みたくなくても(レイプでできた子どもでも、自分の命が危うくなっても、避妊方法がなく既に子沢山で貧しくても)産まなくてはいけなかった時代のことを考えると、それが進歩だ、と考えていた。しかし、出産を楽しみにしていた妊娠中の女性が交通事故にあって胎児が死んだら、胎児に対して「致死罪」を認められないということに納得はできないだろう。しかし、これは両立できないのである。
そこまで考えたことがなかった。
結合双生児のケースもそうだ。
分離手術をしなければ二人とも死ぬ、すれば一人が死ぬという場合、どちらが正しいのがで、大きな議論となった。(両親がカトリックで、神から授かったいのちに、人間が手を加えるべきでないと考えていたため、さらに議論を呼んだ。)
同じ結合双生児でもインドのラクシュミと呼ばれた少女は、結合している片方には頭がなかったため、分離手術に反対するような議論は起こらなかった。
しかし、頭がなければ殺しても良いのなら、脳が全く機能していない(恐怖も痛みも感じない)人にも同じことができるのか。
この議論に「正解」はなく、家族、医療者、法学者、ありとあらゆる人々が話し合い、着地点をケースごとに見つけるものだ。そのために必要なのが「生命倫理学」であるということがよくわかった。
これまでアメリカなどの妊娠中絶反対運動が報道されてもどこか他人事だったが、これは胎児の問題にとどまるものではなく、「いのち」という途方もなく大切なもののどこに線を引くかということなのだから、大きな運動になるのは当然だと思うようになった。
新しい視点を得られる本は素晴らしい。

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2023年07月17日

Posted by ブクログ

命の価値を考えるヒントとなった。ブラックジャックなどの例もあり、読みやすい。生活の質のQOLや、判断能力のコンピテンスという考えも理解しやすかった。

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2022年03月20日

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この本を読んで、いのちのあり方はそれぞれの価値観によって大きく変わり、いのちの所有権などの「権利」が深く関わっていると感じた。

どちらのいのちが優先か?などのテーマが面白かった。双子の分離手術の話も読んでいて自分だったらどうするだろう、と自分に置き換えて読むことが出来、今まで考えてこなかった生命倫理について考えるきっかけをくれた。

いのちの質、という話も興味深くその質は誰から見た質なのか?その質が劣っていたら価値のない人なのか?など倫理的な問題も知ることができ勉強になった。

こういった問題を考えるのはとても難しいし、答えをひとつに決めるのはもっと難しい。しかし知っておくことで固定観念に流されず自分の価値観で自分のいのちを判断する事ができるならと感じた。

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2023年07月13日

Posted by ブクログ

なかなか考えさせる話題で、読みやすくてスラスラ読めた。
結局生命とは誰がどうやって決めるんだろうね。本書では問題提起に対して最後は読者に問いかける感じで終わってるけど、実際自分にこの問題が起こっあらなあなあにする訳には行かない。
その時に備えて自分なりに考えておかないとね

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2023年02月18日

Posted by ブクログ

読みながら色んなことを考えた。
自分が、家族が苦しみから解放されたいと願うときに、自分がで下せるのか?とか…。
昔見た「ミリオンダラーベイビー」の場面が思い浮かんだ。

死について、誕生について、また医療を受けること、動物や結合双生児など、さまざまな議論を紹介する。
国によっても考え方や法律が違う。
また、宗教によっても意見が分かれる。
考えても考えても、正解がないことだと思う。

生命倫理について、枠組みから考えるってことや、これまで考えたことがあまりなかったことについても考えられた。
これまでは私自身、中絶は認められるし、安楽死も賛成、動物は好きだけど命の優先順位や人間と同じに扱うのはどうかな…っていう考えだった。
そんな自分の考えを揺るがされるような問いかけがたくさんあり、たくさんのことを考えられた。

ブラックジャックは倫理観も養えるすごい作品なんだな…。

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2023年01月04日

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正解のない、いのちに対する難しい問いを事例で考える

自分の判断能力がなくなったとき、自分はどうしたいか?

子ども、親の代わりに判断をする場合、最善の利益を考え行動できるか?

直面したときに悩むと思うけれど、真剣に考えていきたい。

祖母はボケたら死にたいと言っていたけど、胃ろうで生かされている。私たちのエゴのために生かされているのではないか?最善の利益になっているか、

子どもはある意味親のエゴで生まれてきた。子どもが生まれてきてよかったと思ってもらえるよう、育てていきたい。

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2022年10月28日

Posted by ブクログ

生命倫理に興味はあるけど難しそうだと感じて手が出せずにいたが、わかりやすい例を多用して問題提起してくれているので読みやすかった。

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2022年01月14日

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相模原の介護施設の事件から、生命倫理って分野に興味をもち手始めの一冊。医療が高度に発達すると、様々ないのちを、誰がどうするかって考えさせられる場面が現れてしまうんだなあ。複雑。

自分の命の終わらせ方は自分で決められる?とか人の命が動物よりも大事かとか、精子バンクで優秀な子どもを産むとか。物理的には可能だけども、倫理的には問題がある場面では1人1人の考えが問われることに。いのちを見つめ直すいいきっかけになりました。

余談としては、GTOとブラック・ジャックが読みたくなりました

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2021年09月09日

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生命倫理に関心があったり、実際にジレンマを感じていたりする人が、最初に手にする本として、とても良いのではないかと思いました。
医療原則については言及していますが、その原則の歴史や、他の規範倫理(義務論とか功利主義とか)の説明は出てきません。倫理を履修したことはないけれど、死ぬ権利や延命治療、意思決定、中絶などに関心がある人に向けて書かれているように思います。
数ある「入門」倫理書に比べて、かなり噛み砕いて、分かりやすく表現しているので、実際にジレンマを言語化するときのヒントにもなりそうです。
また、ブラック・ジャックを読みたくなります。
ボリュームは物足りないので、参考文献やその他の本と合わせて読むことをおすすめします。

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2021年04月19日

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ちくまプリマ新書の想定される読者層は、本来主に中高生なのだろうけど、大人でも十分読み応えある本が多いと思う。本書もまさにその1冊。
生命倫理学は、学生の頃(当時は「生命倫理学」としてジャンルがきちんと確立していなかったかもしれないけど)講義を受けたことはあるが、社会人になり忙しさにかまけて、ニュースなど実際のケースの報道に接しても、正直そこまで深くは考えていなかった。なので本書で改めて、深く考えるきっかけを与えてもらったし、数十年前に比べると、学説や裁判例などもかなり蓄積されていて、論点もかなり整理されてきているのだなあという感想を持った。さらに当時では考えられなかった新しい論点も出てきているし、今後も紹介されている参考文献に当たっていきたいと思う。

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2021年02月15日

Posted by ブクログ

入門書としてとてもよく出来ていて、中学生でも読めるだろう。
入門書ではあるが、正しい回答のないモラルジレンマがたくさん提案される。
それが倫理学というもので回答のない学問ですね。
倫理的な話に対して、変に回答なんか出されたら反発を覚えることが多いので、安易に回答を出さずに読者に考えさせる本書はとても読後感がよい。
入門書なのでこれでいいのだけど、個人的にはもう少し歯ごたえがあってもよかったかな。

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2014年04月29日

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普通のちくま新書はよく読むけど、ちくまプリマー新書を読んだのはこれがはじめてです。ちくま新書が少々専門性が高いのに対して、ちくまプリマー新書は小学校高学年ぐらいの児童から大人まで、誰でも読める敷居の低さがある気がします。

ただ、「敷居低い=内容が簡単」というわけでは決してありません。特に、本書『はじめて学ぶ生命倫理』の場合は。

いのちの終わりの決定権、いのちのはじまりの判断、いのちの質(QOL)の考え方、いずれも生命倫理上の難問ばかりが本書では取り扱われています。近年の海外での判例などが取り扱われているので、こういう問題に通じた人が読んでも、意外な発見があるかもしれません。

中学、高校で「いのちの授業」を考えている先生には、そのまま教材化できそうなものばかりが載っている本書をおすすめします。ブラック・ジャックや、GTOを引き合いにだして説明するところもあるので、授業の導入にもってこいです。読むのに時間がかかったとしても、2~3時間ぐらいで読めるので、書店で見かけたら、一度手にとってみると良いでしょう。

私個人は、結合双生児の分離手術をめぐる倫理的な問題がとても考えさせられました。

次はこの本で紹介されていた参考文献を読み進めます。

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2014年01月27日

Posted by ブクログ

学級文庫としておいときたい本。あるいは、生物関係の学科を推薦等の方法で受験する受験生がとりあえず、一番初めによんどいたらいいかな、っていう本。(面接対策的な意味で)ブラックジャックとかGTOとか、子供をふくめた、みんながよく知っている話題もまじえつつ、生命倫理とは何か、ということを『考える』手がかりになる本。得られる情報量はあまり多くはないが、議論のトリガーとしてはとてもいいんじゃないかと思う。中学生ぐらいの生物の読書感想文としてもいいかも。

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2012年07月29日

Posted by ブクログ

生命倫理って解決策のない底なし沼のようだ。著者は生命倫理は「対話」として展開されてきた学問だという。教師として分かりやすく問題提起し理性的に読者を対話の場に引き込もうとする。教育・研修等でこのような本を教材に討論したら大いに勉強になるだろう。しかし生命倫理って意見を集約し議論をまとめて正解を出していくという学問というよりも、理屈はそうだけど実際貴方はどうするのどう考えるのという一人ひとりの内面に還元され自己決定にゆだねられるような学問のように思う。一人ひとりの人間性、生き方を根こそぎ問われる学問のようだ。結局はどのような選択も概ね尊重され社会的事情の審査を受けて承認されるべきと思うが、他の生命への想像力、共感力、社会的包摂の精神は個人も社会も見失ってはならない。

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2012年04月20日

Posted by ブクログ

達者なものだ。いつのまにか非常に優秀なライターに成長してたのね。業界ではトップクラスじゃないかなあ。こういうのもとから向いてたのかもしれない。

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2021年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者は倫理学者(哲学者)。
7つの場面を例に、「どこからいのちで、どこまでがいのちなのか」「いのちは誰が決めるのか」を問う本。

尊厳死、QOL、こどもの決定権、判断能力(コンピテンス評価)、デザイナーベイビー、精子バンク、結合双生児、正当防衛、種差別、中絶、人権の始まり…等々、キーワードを記録しておく。

時々「ブラックジャック」や「GTO」などの漫画タイトルが出て来たりするので、ちょっと気が楽になる。
もちろん実際の例も取り上げられながら、必ず章の終わりに問いかけで終わる。
1つの意見や思想に執着していないので、どんな意見にも平等な印象。答えを出させることが目的なのではなく、考えさせることが目的なんだろう。

「あなたが裁判官だったら、どういった判決をくだしますか?」

私は自分の身体の中に、子どもを身ごもったことがないので未知数なのだけど。
中絶には2つの視点が常にあるのだなと思った。

また子どもだから(年齢が若いから)といった理由で、自分の人生を選べないのもなんだか不公平な気がした。(治療の方針について)
自己決定ができない人(子ども)は人間なのだろうか?守られるだけの存在なんだろうか?

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2018年11月25日

Posted by ブクログ

昔けっこう頑張って生命倫理(学)、臨床倫理について学んだが入門書としておもしろい。ただこの分野はいつも具体例(臨床)とぴったりくっついた思考なので、入門書の必要性はどうなのだろうか。

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2013年09月25日

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