菊村到のレビュー一覧
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「硫黄島」
戦争の大義を固く信じていたのに、彼は負け戦を生き延びてしまった
そのことに耐えられなかった
戦地での体験はそれほど強烈なフラッシュバックとして甦るのだろうか
…といったアプレゲールものである
虚言を強引にセンチメンタリズムへ落とし込んだ印象も強いのだが
昭和32年の芥川賞を受賞している
「しかばね衛兵」
戦友なんて言ってみても結局
誰だって一番かわいいのは我が身に決まっている
それを思いつつ戦友の死体を前にしたとき、心が傷つく兵たちの話
「奴隷たち」
戦争が終わって、ソ連の捕虜になった日本兵たちの話
その連帯意識は、鉄壁の収容体制が仕掛ける罠に打ち砕かれ
やがて真っ赤に塗り替え -
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ネタバレ推理小説のなかでも「読者への挑戦」に特化した犯人当てアンソロジー。今後シリーズ化されるようなので楽しみが増えた。
【◯看破 △引き分け ×お手上げ】
×高木彬光「妖婦の宿」
名作とは聞いていたが自分にはピンとこなかった
気づかない伏線があったのかな
〇坂口安吾「投手(ピッチャー)殺人事件」
イージー
△土屋隆夫「民主主義殺人事件」
冒頭の横読みは気づいたが犯人を間違えた
×江戸川乱歩「文学クイズ「探偵小説」」
穴埋め問題。昔に流行ったらしいが目新しさがあった
〇飛鳥高「車中の人」
イージー
×佐野洋「土曜日に死んだ女」
部屋に、足が引っかかるほどのガス管が?
×菊村到「追悼パー -
Posted by ブクログ
解説で三好徹さん(読売新聞社での後輩)がディスってる、「生きるか死ぬともつかぬ海戦にでたこともない某作家は、海軍を讃美する文章を書きつらねる」センセイって誰? 文中引き合いに出している個人的に知遇を得ていた大岡昇平、古山高麗雄、城山三郎は除外。まさか、佐和子さんの父君じゃないだろうな…と思ってウィキを見たら違うっぽくて安心した。(断言は出来ないが、海軍に在籍して従軍経験はあるが阿川弘之さんの故郷広島市は原爆を落とされているので海軍讃美はせんだろう)。
菊村到さんというと二時間ドラマ向けな色っぽいサスペンスの印象が強かったのだが、最初期には戦争体験を扱った重い作品が多いのですね。この文庫は芥川 -
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37回(1957年上半期)芥川賞受賞作。この時点では、すでに第2次世界大戦の終了後12年を経ているのだが、未だに戦争の後遺症が色濃く残っていたことにまず驚く。戦争を清算してしまうことができない人たちがいたのだ。本編の主人公、片桐はそうした1人で、今で言えば典型的なPTSDを抱えた人物だ。彼の一生は、戦争、なかんずく硫黄島での強烈な体験によって決せられてしまったのだから。一方、小説の作法は、新聞記者として物書きとしてのキャリアをスタートさせた菊村らしく、取材記を語るスタイル。それがかえって斬新さとなった。
なお、解説によれば、1998年時点での「文芸春秋」のアンケートでは、過去60数年間の芥川