古市憲寿のレビュー一覧
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自分が社会的弱者だと認めるのは、決して弱さではない
「それどころか、自分に助けを求める権利があるという強さなのよ。その強さが、男にはない」と上野千鶴子先生は言います。本書では20代の社会学者、古市憲寿が両親に死なれるのが怖いと身も蓋もなく吐露していますが、実際、団塊ジュニアは女性化、あるいは老人化している?しかし親を介護する自分を想像できない、さらに当事者意識はゼロ、ゆえに孤立を恐れて群れはするが、連帯するというところまでいかない。上野先生の世代には運動癖があって、やたらとつるみ団結し政治的な声を上げていた。男女雇用機会均等法、介護保険の成立、被災者生活再建支援法等々、エゴイズムやルサンチマンがきっかけかもしれないが、それだけでは運動は成就しないし、昨今のネットを介した島宇宙の散在は、運動以前の承認の共同体として自己目的化し、その根をとだえさせている。多くの若者がまったりとあきらめつつ、いやしを求めて社会から遊離しがちとなり、「じゃあ、50代や60代になって、高齢の親に死なれてから、愕然とハードランディングをして当事者になるわけね。そう、大人になるのが50代なのか」と上野先生が言うような事態を招来しかねないのだ。
少子化と超高齢化社会における気分は皆若者現象の蔓延。ゆっくりと衰退していく日本。これをある種の成熟社会の姿と見てもいいのか。それは既得権益にどっぷりつかっている人たちと、それには縁のない人たちとに分かれる階層社会なんだろうけど、後者の下流、あるいは周辺の人たちが緩やかに社会関係資本を形成していければ、別段経済大国でなくとも幸福な日本になるのでは。そのためにはもちろん、古市クンの言うようにウザいとかキモいとかムカつくっていう気持ちから始めて、当事者性を見失わずにその輪を広げていくことが大事。結局、「幸せっていうのは、自分一人では成立しえなくて、少なくとも自分の周りにいる人間が幸せであることが、自分の幸せに関わってくる」のだから。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世代論が書かれていると読んでみたが,どちらかといえばマーケティングよりの話.さらに,雑誌「マート」と「リー」について絶賛しているあたりがマーケティング領域の事実解釈なのかなと思った.
世代意識については,「ギラギラ」と「きらきら」で対比させて紹介.
海外旅行型消費と遠足型消費で対比させて紹介していた.
遠足型消費:ささやかだけど,楽しく生きていくのに十分な幸せをもたらしてくれる.ちょこ楽しい生活.
日常の中でちょっとした幸せを見つけ,それなりに「きらきら」したショップが軒を連ねるショッピングモールやアウトレットやスーパー温泉で家族と過ごし,たまに六本木に出かける生活.
遠足型消費は「今日のように明日も生きるための知恵」と言ってもいい.ただ繰り返していくだけの毎日には耐えられない.いっそ何もかもを投げ出したくなる時もある.だけど,仕事がある.家族がいる.子供がいる.すべての日常を捨て去って,一人旅に出るなんてことは,なかなか出来ません.そんな時に出番となるのが遠足型消費.
キーワードとしては『非日常感』これは納得.
読み物としては読みやすくおもしろかった.
消費社会論が言うように,人が絶え間なく「差異」を求めてモノを買い求めるとするならば,「どこにでもあるもの」「あたらしくないもの」に価値はない.時間的に「ここにしかない」(新しい),空間的に「ここにしかない」(珍しい)時に,モノは輝く(きらきら)
第一章のまとめ
・生活必需品ではないし,安くもないものが売れている
・19世紀の百貨店と同じくらい21世紀初頭のコストコは輝いている
・お父さんも駒沢ママもコストコが大好き
・日常と地続きの「日帰り遠足」のような消費が人気
・「小さな非日常の種」を探して,モノを売れ
第二章のまとめ
・日常の延長として消費やレジャーを楽しむ「遠足型消費」の時代
・自動車が十分すぎるほど普及した「豊かな」日本社会
・装飾用のマスキングテープがまさかのバカ売れ
・綿密かつスピーディーな仕掛けで売れた「ルクエ」
・日常を楽しくしてくれるモノにヒットの芽がある
・東京ミッドタウンとイオンモール川口キャラは同じ
第三章のまとめ
・「格差社会」や「マス崩壊」というのはモノが売れない言い訳
・「格差社会」や「マス崩壊」は宣伝されるほど進行していない
・いつの時代も「モノが売れない」と言われてきた
・現代でも,質実剛健な実用品だけが売れている訳ではない
第四章のまとめ
・女性誌「リー」が選ぶモノには間違いがない,とみんなが信じている
・ヒット商品の裏に女性誌「マート」あり
・伊勢丹新宿店は「食まわり」もファッショナブル
・「雑貨」という一言では言い表せない多様な世界がある
第五章のまとめ
・「共感マーケティング」を制する企業が市場も制する
・重要なのは,いかに「感度が良い人」を囲い込めるか
・消費者は想像以上に移ろいやすくて気まぐれ
・アメリカでは「死のショッピングモール」が問題になっている
・絶対的貧困の暮らしをする人の数は減っている
第六章のまとめ
・「キラキラ・チャリティ」がすべての人を巻き込む新たなトレンドに
・北米を支える強烈な同胞意識は,日本が一朝一夕で真似できるものじゃない
・マーケティング担当者は埼玉県に行け!
・男性中心の官僚主義の限界が様々な局面で露呈している
・日本社会は徐々に「女こども」化しつつある -
Posted by ブクログ
ネタバレ「不況でモノが売れない」、「若者の〜離れでモノが売れない」、世間のお父さんたちがつい口走ってしまうこの言葉。しかし、この言葉は本当に社会の本質を捉えているのだろうか。世間をぼやくお父さんたちに「今どきの消費」を説く社会学的マーケティング本。
消費行動が必要性と密接な関係にあった高度経済成長期は、今のように記号的付加価値=キラキラ感をつけなくてもモノは売れた。車・冷蔵庫・洗濯機etc、生活を便利に、豊かにするために機能性を重視してモノを選んでいた時代だ。しかし、やがてそうした生活必需品が飽和状態になると、次に消費者は「キラキラ感」を求めるようになる。
「デフレ」や「経済格差」や「マス崩壊」と言った、モノが売れない言い訳に対する批判も社会学的見地からなされている。どの時代でもモノが売れない理由というのは常に発見されて続けているのだ。また、「若者の〜離れ」に対しては「飽和状態だから売れなくて当然」とバッサリ。常にやり玉にあげられる若者の一人としては大変心強い。
記号的消費など、消費社会学の中では語り尽くされてきた内容が多いが、口上にて「これはお父さんのためのレクチャー本」と前置きしているからこれで良いのだと思う。語り口が軽快で分かりやすく、普段こうした本になじみのない人でもすっきりと読めるだろう。
余談だが、古市さんの語り口、章まとめ書き方などは明らかに『反社会学講座』を彷彿とさせる。同い年で、同じ社会学の道を通ったものとして、その本の影響があるのかどうか、どこかの機会に聞いてみたい。(どこで?) -
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ネタバレ<内容>
生活に必要なものは一通り揃い、モノが売れない「嫌消費時代」とも言われる現在において、なお売れているものにはどのような共通点があるのか。女性や子ども(若者)を中心にヒットした商品を分析し、近年の消費の在り方を紹介した一冊。
<感想>
「不況でモノが売れない」というのは、いい加減聞き飽きたフレーズである。若者の車離れで車が売れない、最近の若者は遊びを知らない、だからますます景気が悪くなる。そういう言説を聞くと辟易するのは自分が若者だからかもしれないが、安易にそういう言葉を口走りがちな「お父さん」たちに向けて(ちょっと挑発的に)「今どきの消費」についてレクチャーしてくれるのが本書である。
「キラキラ」が必要性と密接に関係していた時代には、車・洗濯機・冷蔵庫などがバンバン売れた。さらにその後、消費がアイコンとなった時代には「キラキラ」はステイタスと結びつき、ヴィトンなどのブランドや海外旅行などが消費の中心となった。このように、モノを消費するにあたって「キラキラ」したものが必要だというのは昔も今も変わらないのではないかと思う。では現代の女こどもはその「キラキラ」を何に求めているのか。
ハワイで豪遊したり、ヴィトンのバッグを揃えたりするようなバブル期の浮ついた消費を「海外旅行型消費」と呼ぶとすれば、ちょっとした非日常感を味わえる程度の現代の消費志向は「遠足型消費」と名付けられる。日常の延長にちょっとワクワクを見出す消費のあり方について、その最たる例としてコストコやIKEA、さらには郊外型の大型ショッピングモールにときめく主婦たちの姿が示される。
また、第3章では「デフレ」「経済格差」「マス崩壊」など、モノが売れない言い訳にされがちな言説に対する批判がなされる。全体を通してかなり好みが分かれる文章(なんだこのふざけた文章は、と怒る人もいるかも)ではあるが、個人的にはなかなか小気味良いものだった。
高度経済成長の時代をとうに終え、「成熟」のステージに立っている日本において、こういう遠足型消費はますます浸透していくのではないか。非常に興味のある話が網羅されていて、個人的にはかなり参考になる一冊だったように思う。