★・・・・・・だったら君は、誰なんだ?(p.272)
■五つのメモ
・「ハイ」「イイエ」「ワカラナイ」「関係ナイ」「答エラレナイ」「推理ガ固マッタ」という返事しかできない、他の人の目には見えない探偵。
・安楽椅子探偵の一種でしょう。
・設定、雰囲気ともによいです。珍しい手順の謎解きですがその手順ゆえにけっこう納得できる感じです。
・キャラクタも、特に刑事二人が楽しいです。
・あまり欠点のないミステリだと思います。続編はありそうだから出れば読んでみようと思っています。
■てきとーなメモ
【一行目】空を漂う巨大クラゲを見たことがあるだろうか?
【不実在探偵と死体の花】密室のように見える部屋でトリカブトからアコニチンを精製して服毒自殺したように見える花屋店員はダイイングメッセージに見える花びらを持っていた。
【不実在探偵の存在証明】初めて不実在探偵が現れたときのこと。彼女が何者なのかなんのために現れたのかウツツは突き止める必要があると思っている。そのためには自分が彼女の存在の見当をつけなければならない。
【不実在探偵と殺神事件】新興宗教の施設で血が流れており、なんでも神と言える「解き明かす者/アンサラー」が死んだそうだ。不実在探偵と近いコンセプトのようだが。僕だったらまず「アンサラー」は実在していたか? と聞くかな。
【不実在探偵と埋められた罪】五年前の殺人事件の犯人とされた少年は留置所で自殺、その父は真相を探り(自分が)真犯人だと考えた男を復讐のため殺した。僕ならまず、安楽椅子探偵は推理をミスったかと聞くかな。
【アリス】不実在探偵に呼び方がないと不便なので烏丸がアリスと名づけ、不実在探偵もそれでいいと答えた。フルネーム? は「アリス・シュレーディンガー」箱の中にいるかいないか開けてみないとわからない。
【アンサラー/解き明かす者】不実在探偵と近いコンセプトの神さま。烏丸がネットによってつながっている全世界の者からふさわしい答えを得るという発想をしたが、ハズレではあったがこれはこれなりにおもしろいシステムかも。探偵でも、犯罪者でもどちらにでもなれる。
【安楽椅子探偵】《現場へと調査に行かないホームズなんて、幻想におぼれたコカイン中毒者にすぎないよ》p.234。《人の話はあてにならないんだ》p.236。僕もそう思ってはいます。安楽椅子探偵ものは好きではあるのですが、それでも。もっとも、小説の世界では安楽椅子探偵は欠けた情報、間違った情報があること自体にも気づけるのですが。
【ウツツ】→菊理現(くくり・うつつ)
【大神理世/おおがみ・りせ】宗教団体の教祖の孫。他者の心が読める(のかもしれない)。
【烏丸可南子/からすま・かなこ】刑事。百鬼(なきり)の相棒。小柄な美人。彼女と一緒にいると百鬼も通報されにくい。ミステリ好き。思考が表情に出やすく刑事向きとは言い難いが、事情聴取能力が高い。
【巨大クラゲ】ああ、見たことがありますね。
【菊理現/くくり・うつつ】某国立大学の学生。百鬼(なきり)の甥。母は小説家の優芽、父は脳科学者の実。
【菊理実/くくり・みのる】脳科学者。シラヤマ脳科学研究所の教授。《計算が予知を可能にする》p.229
【菊理優芽/くくり・ゆめ】ウツツの母。小説家。百鬼(なきり)の妹。三栖鳥の元の人格。
【シラヤマ脳科学研究所】ウツツの父、実が勤めていた。大神理世をはじめ「小さな名探偵」と呼ばれる子どもたちが何人かいたらしい。
【水平思考】不実在探偵が水平思考で謎を解くというのではなく、不実在探偵に対して水平思考的発想により質問を作り真相にたどり着くということのようだ。なんとなくイメージしている水平思考と違うような気もしていますが、まあ、おもしろいからいいか。
【ダイス】不実在探偵が意思表示に使う青色で透明で角が丸くなっているダイス。プレシジョンダイスという、カジノでも使われる高級ダイスらしい。よく知らなかったけどいつの間にか集まってた僕のダイスコレクションにもひとつあるようです。ここでは1の目がでたら「ハイ」、2なら「イイエ」、3なら「ワカラナイ」、4なら「さっきの目と同じ」、6なら「推理が固まった」ということらしいので5が「関係ナイ」ということかな? ダイスの目が変わらないときは「答エラレナイ」ということらしい。また、ダイスの目が変わるのは誰も見ていないときのみ。
【百鬼広海/なきり・ひろみ】刑事。通称「オニさん」。おそろしく怖い顔、喜怒哀楽のすべてを「眉間に眉を寄せる」で表現する。ミステリ嫌い。《シンプルに考えようぜ、シンプルに》p.16
【不実在探偵】《自分が推理することなく周囲に推理させ、真相を明らかにするんだ》p.75。
【三栖鳥/みすどり】病室にいる女性。四十歳くらいだがもっと若く見える。菊理優芽(くくり・ゆめ)の別人格。不実在探偵の本体である可能性もあるかも?
【名探偵】ウツツくんの持つ黒い箱、ないしは黒い箱の中にいる他者の目に見えない存在が名探偵らしい。中には青いダイスか入っており、謎は解くが質問に対してその出目によって「ハイ」「イイエ」「ワカラナイ」「関係ナイ」としか答えてくれず、真相は百鬼たちが推理する必要がある。信用できる参加者は多いほど真相が明らかにできるのだそうだ。