竹村公太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本は米国でのシェールガス・オイル革命が明らかになる以前の2008.9に出版された本なので、その点は少し考慮すべき点があると思いますが、第一章で述べられている、「人類史はエネルギー争奪史である」という解説は戦争の歴史を見るに当たって興味ある見方でした。
この本は「バカの壁」で有名な養老氏と、最近(2014.2)になって彼の著作の面白さにとり付かれるようになりました、竹村氏との共著です。
特に、日本の農業について、何が問題なのか、選挙の洗礼を受けなければならない政治家では絶対に言うことのできない内容を解説してくれている点が良かったです。
都市化により有料な農地から高く売れることから失われていることや、日本の地籍が確定している(自分の土地が台帳と合っているか)割合が、全国でまちまちで、特に歴史のある西日本当たりでは、かなり低い(10%程度)というのは驚きでした。これが農業問題を改善させることのできない元凶なのですね。
更に、今では緑に囲まれていると思っている日本ですが、つい最近(明治のころ)までは禿山だったという写真付きの説明は納得感がありました。それを養老氏の専門の一部である「昆虫」が、例えば、六甲山脈や富士山付近の樹海で、あまりいないことから説明できるというのも興味ある考え方でした。
以下は気になったポイントです。
・油田の産出量のピークは、発見から50年ほどずれる、油田発見のグラフの重心が1960年なので、2010年が産出量のピークにあたるという計算になる(p13)
・第二次世界大戦前夜の石油産出分布は、アメリカが圧倒的、2位以下の国の合計よりも多い。日本は、400万KLの需要に対して、産出量は30万KL、7%程度は賄っていた(p19)
・ヒトラーが、バルバロッサ大作戦で旧ソ連に入ったのは、石油が原因だろう、最終的にはコーカサス油田が欲しかったと思われる(p21)
・中国で大慶油田が見つからなかったら戦争をせずにすんだという話があるが、当時の軍人は戦争で成功すれば爵位がもらえるので油田発見には無意識になる(p22)
・中国の肺がん発生率は地方によってバラバラ、たばこが原因ではなく大気汚染である、その元凶は石油業界とクルマである(p24)
・アメリカが農業用にくみ上げているのは、化石地下水といって二度と回復しないもの(p28)
・アメリカがいまのようにガソリンの大量消費を前提にしたシステムになったのは、都市間・都市内の大量輸送システムが生まれなかったから(p29)
・百年前は丸裸だった山肌が粘り強い植林活動のおかげで、いまは木が回復している、しかし虫はいない。生態系は百年では回復しない(p32)
・ペリーの黒船との邂逅は、日本文明にとって蒸気機関と化石エネルギーであった。森林が崩壊寸前の江戸文明にとっては黒船来航は救いであった(p37)
・世界の川が泥だらけなのは、人間が上流の木を伐ったから、黄河の上流の木が伐られたのは、万里の長城が元凶であった可能性がある。薪が必要になったので(p39)
・奈良盆地では、二百年の間に、飛鳥・藤原・平城京と何度も造り、奈良の人口10万人に大して年間200万本必要である。これにより奈良盆地の周辺の森林が崩壊した(p41)
・寒冷化が進むと海面が下がり、河口近くに干潟が現われてくる、そこに土砂が流れ込み堆積して沖積平野が誕生していった(p53)
・水の中に住むサルが人間になった仮説について、地上で直立歩行に移行するわけがない、水の中なら自然に建てる(p55)
・日本の女性は子供を生まなくなったのは、女性たちに「いま結婚して子供を作るのは危ない」という直感があるのではないか(p77)
・参勤交代も三代目くらいからは、単身赴任している地方から江戸に里帰りするという感覚(p80)
・ペリーは、水をよこせと言ったのみ、日本は、何もないけれど、大地震・水害・疫病だけはひっきりなしに起こるとんでもない国だった(p86)
・日本は大政奉還によって国民国家になったが、大政奉還の式典に通訳が入ったという話はない、日本人の情報共有力はすごかった(p88)
・日本人が馬車を作らなかった理由は、去勢の技術がなかったから(p104)
・イスラエルがゴラン高原を手離さないのは、そこがヨルダン川の水源になっているから(p120)
・虎ノ門のダムは明治後半まで残っていたが、いつのまにか埋め立てられた。いまは溜池という地名のみ残っている(p124)
・日本は地質時代のある時期にはバラバラの島であった、東北・関東・中部・近畿・中国といういのは、実は島の区分である、5つの島がくっついて本州ができた、糸魚川静岡構造線がその名残、琵琶湖は中部と近畿と中国の海峡(p129)
・1987年までは農水省は自給率は生産額ベースで80%、今はカロリーベースが40%、生産額は70%(p141)
・アフリカの貧しい国のカロリーベースの自給率は100%(p142)
・農業所得の過半が農業、65歳未満、農業従事60日以上の者がいる農家は42万戸、全体では285万戸(p161)
・自分の土地が台帳と合っているかどうかが確定しているのは、大阪では1%もない(p164)
・まじめに農業をやっている人が周辺の農地を買ったり借りたりして規模を拡大しようとすると、農村集落の和を乱すとしてJAや、片手間農家から邪魔される(p177)
・人口が3000万人から1.2億人まで増えたしわ寄せは、土地が被った。(p178)
・日本農業は、諸外国の農産物流入で崩壊するのではない、片手間農家などの地権者のわがままと、それを容認する行政・研究者の無責任のせいで、自壊に向かっている(p184)
・60年代の公民権運動で批判され、法的にも無効であるとされたが、そこで住人たちが編み出したのが、土地利用計画であった(p199)
・日本よりアメリカの砂糖のほうが甘い、それには水が絡んでいるのだろう、砂糖分子に水がどのように結合するかで甘さが変わってくる(p220)
2014年2月23日作成 -
Posted by ブクログ
環境、食料、エネルギーの諸問題の本質から考えてみる本です。
人類の歴史はエネルギー争奪史…。
そういうような視点から語られる、環境・食料・エネルギーについて
お二方と第六章ではもう一人神門善久さんという方をまじえて対談、
そして鼎談を繰り広げています。
なかなか気のつかない、問題の根っこの部分をこの人たちはよく
見据えているなぁという印象。教養が深いです。
現在の、先進国として確立されたかのように見える日本の行政の
穴が見えてきます。穴だらけです。そうなのか、まだまだ完成されきっていない
のだな、この国は、そして世界は、ということが見えてくるし、
アメリカでも今後を見据えていない感じも見えてくる。
これから給付される、国民一人当たり1万2,000円の援助金についても、
この本がでたときにはそんな案がありませんでしたが、
偶然にも似たような発想がでてきていて、
そのお金の使い方によって、排ガスなどを撒き散らすことになって、
環境に悪影響だという論調も見られます。
こういう本こそ、新聞ばかりみていたのではわからない知識を得るのに
もってこいのもの、そして、頭を鍛えられたり、ぐっと帯を締めなおす気分に
させてもらえるものです。
といっても、記憶力悪いから、すぐ内容を忘れちゃうんだろうなぁ。
車のディーラーでこの本を読んでいて、「渡良瀬」という土地についての
くだりがあったのですが、店内で丁度、松浦亜弥の「渡良瀬橋」が流れました。
う~ん、シンクロニシティ。