川本三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
兄は、職業上のモラルが重要なことはわかるが、今度の事件の場合、その政治グループは、君がジャーナリストのモラルを持ち出してでも守らなければならないことをしているのか、自分にはただの殺人事件にしか見えないが、といった。
それから兄は、私の顔を見てゆっくりといった。「だって君、人がひとり死んでいるんだよ。何の罪もない人間が殺されたんだよ」
(略)兄は最後に「あの事件はなんだかとてもいやな事件だ。信条の違いはあっても、安田講堂事件やベトナム反戦運動、三里塚の農民たちの空港建設反対は、いやな感じはしない。しかしあの事件はなんだかいやな気分がする」といった。(p178-p179)
この兄の言葉は、映 -
Posted by ブクログ
ノンフィクションの読み物としては興味深かったが、引き込まれるような文章力は感じなかった。自分は団塊の世代の子供世代だが、60年代のことは「団塊の世代が語らない青春時代」として、直接関係者や肉親などから聞くことがないので、各事件が繋がらない年表にはなっても、包括的なイメージは持てなかった。
その「語らない理由」、「命を懸けた青春」、「無言で働く父親たち」をなんとなく理解できた気がした。
いい時代なんかじゃなかった。死があり無数の敗北があった。だが、かけがえのない“われらの時代”だった。だれもが他者のことを考えようとした。ベトナム反戦は真剣だったが、平和で安全な地域にいることの後ろめたさが拭え -
Posted by ブクログ
実は「マイ・バック・ページ」は妻夫木聡&松山ケンイチ出演でちょうど映画化されている。
映画も先日観てみたのだが、この原作本の幾つかの章をエピソードとして散りばめながらストーリーを展開。
そして映画の幹となるのは、「逮捕まで」という章になっている。
全体を通しての「どんより感」・・・これは60年代には仕方の無いことか。
川本三郎氏は「週刊朝日」の記者であるが、映画では「週刊東都」という設定になっている。
この時代のジャーナリストというのは、ホントに命かけて果敢に取り組んでいたのだろうな・・。
原作本自体は、ドラマティックという感じでなく、川本氏の全くの回想録。
そして回想録だからこそ、話せる本