岩田正美のレビュー一覧
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副題にあるとおり、戦後日本の社会において貧困の「かたち」はどう変わったのかを綿密な実証分析とともにたどる好著。
著者は1947年生まれでまさに戦後日本とともに生きてきた学者ならではの視点が充溢している。これは決して本書が著者の主観に左右されているということではない。叙述は客観的かつ冷静で要所が押さえられていると感じたが、そのバックグラウンドには「実感」が感じられるということである。
レビューの分類では社会史に入れておいたのだが、もちろん、貧困の問題は経済史の問題でもあり、著者も最後に述べるように核心は、政治の問題である。
「自立」支援という貧困対策は、貧困の原因を個人の怠惰に帰する古典的 -
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岩田正美の本は面白い。著者によっては、同じ内容の繰り返しになってしまっていることが多いがこの人の本は何かしら新しい着眼点がある。
この本では、戦後日本の貧困の「かたち」を素描している。「かたち」というこのふんわりとした語彙は厳密に意味を定めることができないかもしれない。しかし、著者の多年に渡る研究から豊富な資料をもとに、統計だけでは捉えられない、具体的な貧困のかたちが立ち上がってくる。
その結論として貧困対策への著者の立場を結論として引用する。「『自立』支援という政策目標は、個人の怠惰が貧困を生むという、きわめて古典的な理解に基づいている。だが問題は、怠惰ではないのだ。貧困を個人が引き受けるこ -
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[ 内容 ]
ホームレスやワーキングプア、ネットカフェ難民、日雇い派遣、孤独死や自殺など、福祉国家の制度からこぼれ落ち、呻吟する人々。
彼らはなぜ、どのようにその拠り所を失ったのか。
グローバリゼーションとポスト工業社会において、深まるばかりの社会分裂を、どのように分析するか。
曖昧に使われてきた「社会的排除」概念を、社会参加と帰属に焦点を当てて、理論的にクリアに示し、データとフィールドワークを駆使して、日本の今のリアリティに迫る。
[ 目次 ]
序章 社会に参加するということ
第1章 「社会的排除」とは何か
第2章 社会的排除vs.貧困
第3章 社会からの「引きはがし」と「中途半端な接合」 -
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社会学的な貧困研究のコンパクトな入門書になっていると思う。『希望格差社会』以降の格差問題がブームになって、ネオコン的経済動向が「新しく」貧困を作り出しているように捕らえがちだが、それがある種虚構であることを鋭く突いている。貧困はバブル期にだってあったのだ。逆にそういう時期「もう貧困はない」ということで社会統計的にも学術的にも空白になり、世間でも貧困問題を不可視にしていたことがよくわかる。いわゆる絶対的貧困は、こんなことありえないし許せない、というラインを「社会が」決めて対策を講じるときに必要な概念だが、そういうものを、格差という「常にあるもの」に置き換えることで、仕方ないことにしてしまわないよ
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戦後日本の「貧困」の変遷をそれぞれの時代に沿って具体的な事実を通して(できるだけ当事者性を重視して)まとめている。貧困者の生活・家計の実情が具体的にわかる同時代史料を多く引用しており、数字の羅列ではない「生きた」戦後生活史・都市社会史として情報量が非常に多い。他方、本書では直接の批判は抑えているが、一貫して貧困を生み、貧者を食い物にする市場・企業の飽くなき欲望や、開発主義と治安主義のもとで貧困者を排除するばかりの政治、貧困者への攻撃・バッシングに加担する多数派大衆の存在が通奏低音のように響く。著者は最後に貧困の責任を個人に引き受けさせる日本社会を変えるにはどうすればよいか自問しているが、それ
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日本女子大学現代女性キャリア研究所が2011.11に実施した、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県に在住の25歳から49歳までの、短大、高等専門学校卒以上の女性5155人のアンケート調査「女性とキャリアに関する調査」をもとに、キャリア形成や就業意識について分析したもの。キャリア形成に大学がどう支援できるかがテーマ。また就職氷河期1993-2005に就職した女性の調査が多くないこともこの調査を実施した理由。生年で言うと1962年から1986年生まれの人の調査。
日本では国際的に見て高学歴女性の労働参加率が低く、就業率ではM字型を描くが、欧米諸国ではこのような傾向は見られない。この部分にメスを入れた -
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【読書】著者は、生活保護やホームレス問題に詳しい日本女子大学教授の岩田正美氏。貧困問題は、生活保護のケースワーカーの経験を通じ、興味をもっているテーマ。著者が描く、社会からの「引きはがし」と「中途半端な接合」とは、自分が生活保護の現場でみた現実世界。
社会からの「引きはがし」とは、これまで、失業や倒産、また、倒産と同時に生じた離婚や借金など様々な理由により、一般企業などに勤めているなど、社会のメインストリームにしっかり組み込まれていたのが、一気に転落するケース。本書で言う、ホームレスに至る3つの類型のうち、㈰転落型、㈪労働住宅型。㈪の労働住宅型については、リーマンショック後の派遣切り等で住居を