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2019年4月30日、「平成」の三十年間が終わりを告げる。「私たちは今どんな時代に生きていて、これからどんな時代を生き抜こうとしているのか」。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の教授四人が、「宗教と社会」をキーワードに、激動の平成時代を総括する。
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Posted by ブクログ
【問いかけて30年】「怒涛の時代」とも称される平成の世を、「生きづらさ」をテーマとして、主に宗教面から読み取ることを試みた作品です。著者は、東京工業大学でリベラル・アーツを教える上田紀行ら4名。 「そんなこともあったなぁ」と読み進めるうちに、平成の一側面をわかりやすく解説してくれる一冊でした。難解...続きを読むなところはまったくなく、コンパクトでありながら同一テーマに関する複数名の指摘を合わせて読み進められるため、頭の中で比較をしながら考えることができる点も高評価です。 〜私たちを取り巻く社会はさまざまな問題を抱えています。それらの問題の根底には,日本でも世界でも,若者を中心にして広がる「生きづらい」という感覚が大きく関係しているのは見過ごせない事実でしょう。〜 やっぱり1995年は分水嶺の年だと再実感☆5つ
「平成」という時代を、「宗教」という視点から分析した本です。社会の変化とそれをうけた宗教界の変遷が、相互に影響しあって平成の「空気」を作り上げた様子がわかりやすくまとめられています。 「激動の昭和」につづく平成の30年は、「失われた20年」などともいわれるように、閉塞感のある時代だったような印象が...続きを読むあります。 もっとも、平成生まれの私にとってはこれが「フツウ」でしたから、そこまでネガティブなイメージではないのですが…。 ただ、阪神淡路大震災やオウム真理教のサリン事件、9.11同時多発テロや3.11東日本大震災など、多くの「事件」が印象に残っている時代ではあると思います。 それぞれの事件によって、社会全体が「暗く」なったり、その流れを変えたり(特に昨今ではポピュリズムやナショナリズムがその勢いを増していると思います)したことも、平成の時代の特徴なのかもしれません。 なかでも本書では「生きづらさ」という言葉がキーワードとして取り上げられていました。昭和のように地縁血縁が薄くなり、コミュニティが弱体化する中で、個人個人が「生きている」という実感を持ちにくくなったり、「生きている」ことの目的を見出せなくなったりしている。そのことが「生きづらさ」の原因になるし、またそれまでの宗教観のままでは様々な人々の「つらさ」を救うことができない。 これらの分析は説得力がありましたし、平成という時代の「核心」をついているように感じます。 宗教学についてや宗教論についての記述の部分では少し読みにくい部分もあるかもしれませんが、全体としては中学・高校生にとっても読みやすい本だと思います。 平成の時代を振り返る際に、とてもいい本だと感じます。
「平成の社会と宗教」というテーマで4人の論者がそれぞれの立場から平成の30年を振り返り語った本。 平成の30年間は、ぼく自身が生まれてから今までの期間とほぼ一致したので、この30年間の振り返りはすごく身近に感じた 今まで宗教について、深く考えたことがなく、なぜ人は宗教にはまるのか?について考えさせ...続きを読むられたり、仏教やキリスト教など2000年以上もの変わらず続いている宗教を学ぶ意義があるのかを考えるきっかけになった。 WHOによる健康の定義も1998年にスピリチュアルという言葉が加わるほど宗教は密接に関わっている。 こと日本では宗教に対する嫌悪感は多少あるようだが、これはおそらく1995年の地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の影響が大きい。 しかし、実際は宗教団体に対する信仰は低下しているものの、パワースポットやオーラなどのスピリチュアル(宗教性)に関しては、存在意義が強くなってきている。 これは、ひとえに現在の人たちの「生きづらさ」を反映している。 昭和時代の敗戦から豊かな日本を取り戻そうと一丸となってひたむきに頑張っている時代には感じることのなかった「なぜ生きているんだろう」という悩みが、バブル崩壊後の平成に一気に溢れてきた。 ものは溢れて豊かなのに、なぜか生きている実感がない。そういう人にとって、拠り所にできるもの、それが宗教なのだろう。 個が強くなってきている昨今、教団としての宗教は弱くなっているかもしれないが、教団とは関係ない個人に対する宗教性は強い。 人が何を拠り所にして生きていくのか?最近は高齢者の在宅医療に関わっているので、いろいろ考えるきっかけになった。
池上氏をはじめとした東工大の教授たちの 平成論と宗教論。 とても読みやすく面白く読めました。 こういう視点でまとめると、平成というのは 確かに宗教的というか、精神世界というか、 そういうものについては、分岐点的なところで あったような気がします。
「崩御」? 天皇が亡くなるとそう言うんだ、へえ~、というくらいで、とくに厳かな気持ちにもならず自分にとっての平成は幕を開けた。 「下血」という文字が新聞報道にも頻繁に載り、いよいよ容体が危ないとなると、学校も自粛ムードで、文化祭が取りやめになった。別に中止でもいいけど、天皇の具合が悪いのと、文...続きを読む化祭がなんの関係があるんじゃ?とブツクサ。 不謹慎、不遜、なんて畏れ多い態度、と今なら思うが、馬鹿な10代男子の頭の中なんてそんなもの。 平成の幕開けはバブルの余韻にまだまだどっぷり浸かったまま、何事もなく過ぎたが、異変は海外からやってきた。なんとソ連がなくなった!冷戦で二分されていた世界が、アメリカ一人勝ちの世界になっちゃった(かのようにみえた)しかしソ連という突っ返棒がなくなった途端に、世界では至るところで民族紛争が勃発。アメリカも石油利権のためにイラクを爆撃。戦争をおっぱじめる。 日本ではバブルは弾ける。突如として就職戦線が南国リゾートから南極ブリザードになる。フリーターや派遣社員が増えた。しかし、それはそれで儲かる人から儲ければいいんじゃない?的なアメリカ模倣の新自由主義政策をとった政権運営のもとで貧富の格差は広がり、もう大変。平成はどんどん暗い時代に突入。阪神淡路大震災やオウムの無差別テロという未曾有の天災人災で人心の荒廃が進んだ。そしてこれらの災害をはるかに凌ぐ3.11の大津波と原発事故の悲劇。昭和が戦争と高度成長の時代なら、平成は災害の時代だ。 平和に成るとの願い空しく、平成は実に生きづらい時代になってしまった。 そんな生きづらい世の中で若者たちが、自己をどう捉え、何に自己を委ねようとしているのか。 宗教(宗教的なものを含む)との関わりから読み解こうとした本。 なぜエリートがオウムに走ったのか。イスラム教になんの興味もない日本の若者が、なぜイスラム国へ入ろうとしたのか。その根底には、先進国中でも断トツに低い自己肯定感がある。本当の自分はこんな姿じゃないはずだ。どこかに、本当の自分がいる。というなんかふわふわした自己投影像を持っている。 そして確かな羅針盤を持たないまま、彼らはここじゃないどこかへ行ってしまうのだ。 生きづらい=生き甲斐がない、という意味。病気や貧困などの問題を抱えてなくても、人間関係がうまくいかないと、自分なんかいてもいなくても同じと感じてしまう。 だから自分が必要とされ、自分が輝ける場所を探す。それが平成を生きた若者たちの特徴。それが、カルト宗教だったり、スピリチュアルなパワースポット巡りだったり、ボランティア活動だったり、と向かう先は様々。ただ今いる場所を否定的に捉えているところは同じ。 ぶっちゃけ昔からこういうタイプの人は一定数いたと思う。青い鳥症候群って言われていた。でもこのタイプが増えているなら、生きづらい場所が相対的に増えているのか、義務教育のプログラムがそういう方向に誘導し易いかたちに変化したのかだと思う。 この本の中で既存の宗教団体や僧侶の個人的な活動の広がりを、好意的に書いてる章があるのだが、正直言ってあまり可能性は感じなかった。宗教=祈り、というか、癒しの効用をアピールしてるだけのようで、セラピスト的な役割に限定している。 宗教のダイナミズムを捉えてないという気がして残念。 納得する点もあれば、しない点もあるので、引き続き議論を重ねて欲しいと思う。
思ってたのと違ったけどまあまあ 平成論というタイトルに惹かれて読んだけれど,中身は平成における宗教論.池上さんのわかりやすい総論のあとに各著者がそれぞれ1章ずつ考えを書いている. ざっくりまとめると,バブル崩壊からの心の拠り所として宗教は力を持ったが,オウムの事件で敬遠.ただスピリチュアリティはパワ...続きを読むースポット巡りの流行だったり災害を機に改めて重要視されてきている,といったかんじ. 日本での仏教が衰退しているのは僧たちが広める努力をしてこなかったからだ,という記述にはなるほどなと思った.日常で仏教にかかわる場面がないなかで葬式のときだけ高い金を要求されるのだからよいイメージはもてない. 宗教観の希薄な日本で心の拠り所を確保するには,各個人のリベラルアーツ(自由にする技)にかかってしまっている.
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平成論 「生きづらさ」の30年を考える
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池上彰
上田紀行
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