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Posted by ブクログ
〈筆者K〉は戯曲『エピタフ東京』の執筆に行き詰まりながらも、失われつつある東京の魅力への探求を続けていた。
ある日、自分を吸血鬼と名乗る吉屋という男に出会うが―。
〈筆者K〉が執筆に悩みながら東京の日常を過ごすエッセイ風の章、吸血鬼を自称する男の視点の章、そして戯曲『エピタフ東京』の脚本部分と、3つのパートで構成されています。
一応フィクションの体裁を取っていますが、エッセイのような、ドキュメンタリーのような。
ストーリーの起承転結は期待してはいけません。
だんだん〈筆者K〉が恩田陸自身に思えてきて、恩田さんの日々の雑感や小説になる前のアイディアの断片を読んでいる気になります。
それはそれで小説家の頭の中を覗いている感じで楽しいのですが、人によっては読むのが辛いかもしれない…。
時系列もばらばらで、断片的な思考をかき集めたとりとめの無い感じ、この混沌さ・酩酊感がまさに「東京」という都市そのもので、自分にはしっくりきました。
人や物事がバラバラな方向で散らばっているかと思えば意外なところで繋がっていたり。
無機質なようでいて、意外に懐が深かったり。
現実と虚構が違和感なく両立してたり。
なんか東京って改めて考えると不思議ですよねー。
他人のフィルターから「東京」を可視化したら、まったく違った絵が浮かび上がってきそうです。
わたしも何十年も住んでるけど、全容が全くつかめません。
印象に残ったエピソード(というか、断片的思考)をいくつか。
・友人B子と将門塚を訪れたら、こけしの首を捻ったときのキュッという音が聞こえた気がした。
・松本サリン事件が解決する前に、「松本サリンはオウムのしわざ」とガードレールに狂ったように沢山書いてあった。
・記憶の中の安部公房回想録の表紙カバーは、現実では存在しないモノだった。(←こういうの、よくある!と思いました。私だけ?)
・東京のバーで聞こえてきた周囲の会話から、海外ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」を引き合いに出しながら都市と女性の関係(東京と女子)について考察する。
どのエピソードも少し不思議な話や的を得た考察が多く、心に残りました。
個人的な話になりますが、読んでる途中で不思議なことがありました。
安部公房の小説「燃えつきた地図」について、追う者と追われる者の反転を吸血鬼の吉屋が考察する章があるのですが、このエピソードを読む直前、都内の小説好きが集まるバーで、私は隣に座った初対面の人と「燃えつきた地図」の話をしたんですよ!!
しかも自分から振ったわけではなく、話の流れで相手の方がこの話をしてくれたんですよ。
安部公房を今時読んでいる人も珍しいし、しかもピンポイントで「燃えつきた地図」の話をするなんて!
偶然だなーと思うか、よくあることだよねと思うかはあなた次第です 笑。
まあ、東京だしね。よくある話かもね。
Posted by ブクログ
東京を舞台にした戯曲<エピタフ東京>を書きあぐねている筆者は、吸血鬼だとなのる男と出会う。
東京のあちこちを舞台に、というか題材にしているのだけど、どうも田舎者にはぴんとこない。
多分、空気感がわからないからなんだろう。
例えば、熱帯を舞台に、ってなれば、あのむっとするような暑い空気をいやでも感じる。が、東京にそういう特徴があるかといえば、ない。それをあえて文章化しようとしているのだけど…。
東京の当たり前が、当たり前すぎて、それが当たり前じゃないのにはわからない。
まぁ、わからないなってところが伝わってくるのは、文章力の確かさなんだろう。
東京に限らず、世界中どこだって過去の死者の上に街はある。
ただ、それに寄り添っているか押さえつけているかで、東京は後者のように感じだ。
そのエネルギーが歪みを生んでいるような。
だから、吸血鬼がいる。
と、まるで恩田陸の目くらましをくらった気分なのだ。
中の戯曲もそんな感じだったし、だまし絵の階段みたいな小説だった。
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