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Posted by ブクログ
未知の天体が地球に直撃(正確には甚大な影響を及ぼすまでに接近)することがわかり、もしそのまま放置したら24年後の大接近で地球は確実に滅んでしまう。それに対して人類が行う策が地球を移動するという壮大なプロジェクトである。
何故その天体の直撃を他の方法、例えばアルマゲドン風に、で回避することが出来ないのかといった設定から、地球を移動するのに伴う弊害、そもそもそれ以前に計画を実行する前に存在する様々な障害などが巧みに描かれている。
そして、忘れてはならないのが山本弘得意のいつものAI(作中ではACOMと呼ばれる)と人間の関係性。何冊読んでも改めて心を動かされる。毎度のことながら人物・感情の描写がとても素晴らしい。
ネタバレになるので詳細は省きますが、山本弘の作品にはあまりない珍しい要素があって驚きました。
これ以上ネタバレせずに上手くは書けませんw
Posted by ブクログ
山本弘の小説で鼻白むのは人物造形。何だかアニメみたいで、読んでいる方が気恥ずかしくなってしまう。と思いながら、「アニメみたい」ということの内実をきちんと論ずるのが難しいことに気づく。なぜアニメみたいと思うのかうまく言語化できないのだ。登場人物たちの会話がアニメに出てきそうな感じだからというのもあるだろうが、人物造形そのものにアニメ臭さがあるようにも思う。だからといって人物に葛藤がない、というわけでもない。だが、何だか人物が複雑じゃない。
そこまで考えて、こんなことを思いついた。アニメの登場人物はまずは絵として演出されたものが作られ、その後に、声優が声で演ずる。アフレコである。極言すれば作画監督と声優とが表現を持ち寄って1つの演技を作り上げるのである。まさに絵と声とが複雑に葛藤する状況。のはずだが、その葛藤が露呈してはいけないのだ。作画監督は声優が演じやすいように絵を描き、声優はその絵と葛藤を生じないように演ずる。2つのものを組み合わせるがために、アニメの質が上がれば上がるほど、必要以上に統一的な表現、もっといえば平板な表現が生まれるという状況があるのではないだろうか。例えば、名優は言語的な表出と非言語的な表出を微妙にずらしながら演技するといった複雑なことをしているはずである。アニメでもそれは原理的には可能だろうが、表情の声との分業体制によって、言語と非言語の不一致ならば、にこやかな表情で脅迫するといった紋切り型の表現に陥ってしまうのではないか。
山本弘は論理的であることに美徳を見出している作家である。そして『地球移動作戦』は、負の側面が強調されてすっかりダサくなってしまった「科学」の力と、人間の意志の力で未曾有の天災に立ち向かう物語である。いくつかの科学的フィクションを導入した上で、それ以外については科学的に考証してストーリーを組み立てており、その点では大した力業だと思う。もちろん情感に訴えるエピソードにも事欠かない。『日本沈没』に比肩してもいいだろう。
しかしながら、もはやわれわれは広島後、3.11後を生きているのだとは言わずも、善人と悪人しか出てこない物語が厚みを欠くように、科学と非科学しか出てこない物語には謎めいた空虚がないのだ。人間というものは謎めいた空虚を持った存在で、論理的にでもなく、非論理的にでもなく、無論理的に思考し行動する瞬間があるのだ。その無論理に人間的な何かが宿り、謎めいた空虚が物語に魔術的な駆動を与えるはずなのに。
Posted by ブクログ
天体衝突を避けるために知恵を絞る大仕掛けなSF
遊星のニアミスによる大災害を必死で避けて、最後に残るのが地震と津波なので、この時期に出したのは英断かもしれない。
文庫版の後書きは震災に言及があった。私は、被害者に配慮して話題そのものも避けるという意見にはあまり賛同しない。災害に立ち向かう力強い物語は、読む人を元気づけることもあると思う。
SF的なガジェットの大きなものは、おおよそ3点。
夢のタキオン駆動装置、ミラー物質で構成される、見えないけど重力のある遊星。仮想現実に住む人工知能。
見えない遊星が危機を作り、現代科学ではとても不可能な対策に、タキオン駆動装置を使うことでぎりぎりの答えを導く。人工知能は添え物のようではあるが、山本弘SFではある意味主題だ。ここではAIは多くが肉体を持たないが、人との関わりはアシモフ以来のパートナーとして重みを増し、共に歩む隣人として、大きな存在になっている。
ミラー物質天体や、タキオン機関を使った大仕掛は、そのようなものがあったとした世界での、知恵パズルが淀みなく展開されて、面白かった。こういうお話で、決定的な敗北はまず有り得ないにしろ、人間の及ぶ限界のプロジェクトという感触は良く描けていてのでないかと思う。
そして、半分ぐらい使って描かれる、神と人とAIの関わり。
この世界のAIは、無理に近い努力を諦める言い訳に使われかけて、人類を守るためにさらに衝撃的な事件を起こす。多くの人に友として認められたAIの人とはまた違う機微が面白い。こういうのだと、友人にも良いよなあ、と思う。
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