Posted by ブクログ
2020年01月08日
恩田さんの旅エッセイです。少し前に「EPITAPH東京」を読みましたが、あれはこの本の東京版だったんだと思いました。読み味もほぼ同じ。一方この本の舞台は日本各地、そして世界。面白いと思ったのは「EPI東京」と同じ視点が登場したことです。『日本の街や道路は…人が歩くこと自体全く想定していない』という指...続きを読む摘です。点から点への車での移動前提で考えられているからという視点。確かにこんなにスリムな人っているのかなと思うくらいの細い歩道の線引きがあちこちにあるように思います。つまり実際には車道にはみ出さずには誰も歩けない。そういえば観光地でも途中の道を歩く人が少ない気がします。数を巡る事を優先する観光の仕方が主流だからかもしれませんね。
国内、国外色々な旅の記載がありますが世界旅ではチェコが気に入りました。私も行ったことがありますが、見る視点がこうも違うのかと驚きました。恩田さんの視点で一緒に旅をすると色々な発見ができそうです。また、これを読んでプラハでビールを飲み損ねたことをとても後悔しています。恩田さん食レポというか呑レポもとても上手いです。あと、「祝祭と予感」の〈鈴蘭と階段〉のチェコフィルはここ繋がりでしょうか。
また、読み物として一番面白かったのは九州の旅。リアルなグダグダの旅の風景が小説のグダグダな旅のシーンと区別がつかなくなるこの違和感のなさ。恩田さんの小説のリアルさは巣のまま書かれている部分が混じっているからなのかもしれません。
楽しく気軽に読め、また、恩田さんの気持ちの浮き沈みまでリアルに感じられて、ちょっと自分も旅をしたくなる、そんな作品でした。