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【ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞作】「リスクを冒して攻める。その方がいい人生だと思いませんか?」「君たちはプロだ。休むのは引退してからで十分だ」サッカー界のみならず、日本全土に影響を及ぼした言葉の数々。弱小チームを再生し、日本代表を率いた名将が、秀抜な語録と激動の半生から日本人に伝えるメッセージ。(解説/岡崎満義)
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Posted by ブクログ
サッカー素人ではあるが、当時のジェフの試合はとても魅力的だったし、オシムのインタビューに惹かれていたのを思い出す。その背景にこのような祖国の厳しい歴史に巻き込まれていたことに驚かされた。
ずっと読みたいと思っていた本。オシムの言葉は魅力的で、重みがあって、ユーモアセンスにあふれていた。歴史的背景、その悲痛さも含めて、全部受け止めながら生きてきた彼の人生に、尊敬の念を抱かざるを得ない。
オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える 著:木村 元彦 集英社文庫 き 10 3 イビツァ・オシム Ivica Osim 旧ユーゴスラビア 現ボスニア・ヘルツェコビナ サラエボ生まれ (1941.05.06 - 2022.05.21) 偉大なる指導者の言葉は残念ながら、今は遺言となってし...続きを読むまった 今さらながらに、このストイックな親日家にこういいたい。 「ありがとうオシム。日本に来てくれて、本当にありがとう」 気になったこと、オシムの遺した言葉は以下です。 「君たちはプロだ。休むのは引退してからで十分だ」 「今日、唯一良かったのは、全員が最悪のプレーをしたという点だ」 「本当に強いチームというのは、夢を見るのではなく、できることをやるものだ」 「ライオンに追われたウサギが逃げ出す時に、肉離れをしますか?」 「アイデアのない人間もサッカーはできるが、サッカー選手にはなれない」 「いい林檎が生る年もあれば、不作の年もある」 「一般的には、個人プレーが強い人間を人々は好む。しかし、私は、ひとつのチームをつくることをまず考えて、その上で機能する選手を選ぶ」 「そんなものに耐えられないならば、代表監督になどにならぬほうがいい」 「こんなエゴイスティックなプレーをする男はチームに必要ない。チームにはもっと献身する男こそ必要だ」 「満員のスタジアムでいつも通りのプレーをさせただけだ」 「相手に対して、最大の努力を払え」 「重要なのは、ミスをして叱っても、使い続けるということだ」 「今でもそうだと思うが、無名でもモラルの高い選手を選んだ」 「作り出すことは難しい でも、作り上げることのほうがいい人生だと思いませんか」 「もっと上を見ていいんだぞ」 「年俸の差にかかわらず、選手は全員おなじ選手なのだから、皆、対等に平等に接するのが普通だろう」 「恐れとは、自分の責任感に対して持つものです」 「もっと走れ、もっと速く」 ISBN:9784087463019 出版社:集英社 判型:文庫 ページ数:328ページ 定価:680円(本体) 発売日:2008年05月25日第1刷
【所感】 読みやすく、オシムの哲学に触れる一冊。サッカー監督の枠を超えた哲学には脱帽 【覚えておきたいポイント】 ミスした選手を試合で使わなくなったら、その選手はミスを恐れてリスクを冒さなくなる。懲罰を与えるのではなく、考えさせる 批判に耐えられないのならば、代表監督になどならない方がいい
オシムの言葉は、時に意味深長で、時にウイットに富み、またある時、鋭利な刃物となり、またある時、人の心を強く束縛するほどの力を持つ。このような人物がどのようなバックボーンを持ち、どのようにサッカーと絡み合ってきたか、どのようにチームをマネージメントするのかというようなことを通して、彼の人生哲学とはどの...続きを読むよなものかを浮き彫りにするのが本書である。 オシムのような人物の人生哲学を説明することは非常に難しい。そのため、著者は彼の発言を中心にしたエピソードを解説することで、その代用をする。これによるとオシムの指導者としての特徴は、プロセスを重んじることである。「できる準備を完全にした。それで勝てるかどうかは相手チームに聞いてみよう」との発言はまさにそのことを物語ると思う。 平凡なマネージャーは、結果を重視しすぎるあまり、部下のプロセスを規定する。これは一時しのぎにはよいが、指示待ち人間を大量生産する。しかし彼は、プロセスを重視するからこそ、プロセスを決めるメタ・プロセスを規定するのである。結果ではなく意図。それに加え創意、献身、努力。つまりプロセスを作り上げることができる個を作り上げること、それによる軋轢をものともしない人格の持ち主を作ること。これがオシムのスタイルである。マネージャー、コーチ、リーダーの理想像がここにある。指導者諸氏よ、心して読まれるがよい。 このような人物が一時的にでも日本サッカーのよき導き手となった幸運を感謝する。
オシム監督すごい…私はサッカーの試合も見たことが無く、サッカー選手もベッカムくらいしか知らない。なのに、この本を読むとサッカー楽しそう!こんな監督とサッカーしたいなぁとか思ってしまう。 選手一人一人をしっかり見てる、失敗しても下げない、周りの野次は気にしない、仕事で後輩の面倒を見る時にも活きる知恵多...続きを読むし。 この本を書いた木村さんもまたすごい。こんな信念のあるジャーナリストが増えますように。
読みたかった内容。なぜオシムさんはあんなに安定感があってぶれないのか。それは過ごしてきた過程によるものがやはり影響されているんだと思う。自分にもあの強さが欲しいと思った時やはりリスクを冒してそういった環境に身を置くことも1つの手なのだと思った。
『オシムの言葉』木村元彦(集英社文庫) 私がオシムを知ったのは、ジェフ市原の監督をしていた頃からだろうか、でも本当に記憶にあるのは、テレビによく出始めた日本代表監督になってからだ。サッカーに関しては、それ程熱狂的なファンではなく、ワールドカップがあれば急に「日本頑張れ!」と応援するにわかファンの部類...続きを読むに入ると思う。だから、メディアの露出度が高い選手や、監督には必然的に興味をそそられてきた。しかし、オシムへの興味は違っていた。インタビューで放たれる深い言葉を聴き、彼の表情と視線を目にした時の彼への興味をひとことで言うと、『こういっ人物はどうやって作られるのだろうか?』というものだった。私が大抵人に興味を持つときは、ここから入る。そしてそれが、予め抱いていた想像と異なっている時に、その興味は倍加される。開成高校→東大法学部→財務省主計局局長なんてのは、何の興味も起きない。如何わしい'宗教の教祖'→専業農家の主婦→ガザの生まれ なんて人生の経歴があったら何はともあれ、その宗教に入信してみたくなる。(ここまで、あり得なければ誰でも興味は持つな)まさしく、オシムはそんな私の興味の対象で長い間いた。にもかかわらず、オシムに関す情報は意外と私を遠ざけていた。 やっとその興味を具体的に味わうことのできるチャンが訪れた。それがこの本『オシムの言葉』になる。 私がこの本で知ったオシムの魅力を4つの観点から伝えていきたい。①祖国ユーゴスラヴィアで育まれたオシムという人物、②オシムの求めたサッカー、③日本に与えたオシムの影響、④”憧れのオシム”という4つの枠を敢えて設定して語っていきます。 ①ユーゴスラヴィアは「5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字」を内包するモザイク国家、そのその中のボスニア・ヘルツィゴビナの首都サラエボで生まれたオシムは、日本で生まれ育った私が想像すらできない、複雑な社会環境のなかで、生きる術を身につけてきた。実際に勃発した内戦のさなかで、異なった民族の選手たちを抱えてユーゴスラヴィアの代表監督を勤めていた。そんな艱難辛苦の時代にオシムが語った言葉「歴史的にあの地域の人間はアイデアを持ち合わせていないと生きていけない。目の前の困難とどう対処するのか、どう強大な敵のウラをかくか、それが民衆の命題だ。…今日は生きた。でも明日になれば何が起こるか分からない。そんな場所では、人々は問題解決のアイデアを持たなければならなくなるのも当然だ」これが彼のサッカーに向かう基本スタンスだ。余談だか、この本を読む前日に偶然にもアンジェリーナ・ジョリー監督の『最愛の大地』というユーゴスラヴィアの内紛を扱った映画を観ていて、内紛が勃発する前には、仲の良かった同胞が対立してゆく姿を見た、内紛の恐ろしさ、醜さを映像で見せられていただけに、このオシムの置かれた境遇が彼を創り上げた基礎になっていることを確信するに至った。 ②私はサッカーの監督としてのオシムの評価をできる程、サッカーに対しての知識をもたない。だから、彼のサッカーに対する想いを中心に、彼にとってのサッカーをこの本の言葉を抜粋して伝えたい。「私の人生そのものがリスクを冒すスタイルだった…。この先、サッカー選手としてやっていけるかどうかわからな状態でも、私はリスクを背負ってサッカーの世界へ飛び込んだ。だから最初から、私はサッカー人としてリスクを背負っている」実はオシム、大学では数学の天才で教授への道が用意されていたにもかかわらず、サッカーへの道を選んでいた。この時、既に彼はサッカーで人生を歩む決意をしていたのである。そして彼のサッカー観を表す言葉「やはりサッカーというもいうのは、すごく美しいスポーツだと思っている。美しいサッカーをするチームがあるのなら、そこは美しいサッカーをするための練習をしているのでしょう。だが、ウチはまだ闘っている状態で、美しさからはかけ離れている。客観的にみたら、ここでは無理でしょうね。だが、それにどこまで近づけるかが大事でしょうね」試合に勝つために闘うが、勝つことだけにこだわらずその過程と先に意義を求める。まさに、オシムの人生そのものだ。 ③日本に与えたオシムの影響 Jリーグの中でも運営資金の一番少ないジェフ市原の監督を引き受けたのもオシムらしい。名だたるビッグの倶楽部チームからの招聘にもかかわらず、自分のスタイルのチームを作り上げることができる環境と日本という国が好きということで、決意した就任だった。そしてその実績はスグに現れた。彼のチーム作りのモットーは「(一般的には個人プレーが強い人間を人々は好むが)、私はひとつのチームを作ることをまず考えて、その上で機能する選手を選ぶ。」この考えで、ジェフから日本代表に選ばれた選手も多く生み出している。彼が日本代表の監督をした時の選手たちはオシムの考えていることを忖度しながら、ゲームをしていたといったコメントを残している。それはオシムが日頃の練習のなかで「モチベーションを上げるのに大事だと思っているのは、選手が自分たちで物事を考えるのを助けてやることだ。自分たちが何をやるか、どう戦うのかを考えやすくしてやる。まずは自分たちのために自分たちのやれることをやり切るということを大事だという話しをする」言葉にあらわれている。④私にとってオシムは、直接接することが出来ない、憧れのメンターとしての存在。彼のサッカーの監督としての姿だけでなく、彼の苦悩の人生が彼を創り上げたという私の仮説は、その通りだと思うのだが、逆に同じ経験をすれば、同じ様な深みのある洞察ができる人間ができるというものではない。自らの経験を見つめる自分の目と心を通して真剣に人生に向きあっての結果であることも理解できる。私がオシムに憧れるように、自分の後輩たちにそんな目で見つめられわたらなんて光栄なことだろうと想像してしまう。最後にこの本の『オシムの言葉』というタイトルからこの本をもう一度振り返っておこうと思う、言葉がカジュアルになったこのSNSの普及した社会(実はそれより以前からだが)では、言葉の量に含まれる意味、意義の割合がかなり低下してきているようだ。それ故、本を読んでいても少し古い本やしっかり論を尽くして書かれた本は、難解で読み辛さを感じる位に、その相対的な言葉に含まれる意味、意義のおもさを感じることがある。オシムの言葉もしかり、ぎっしりと彼のメッセージが詰まっている。文章ではなく、会話として放たれる彼の言葉は相対的に更にその重さを感じる。「オシムの言葉」を通して彼を紐解くという発想は絶妙なものがある。 2014.07.25
鉄人と賢者を掛け合せたような世界的名監督のオシム氏の通訳を務めた人物が書いた著者。民族問題を抱えた代表チームを率いたときや突然の紛争で家族と離れて暮らすことになったときでもクラブ監督としても驚異的な成績を残した同氏。来日してジェフの監督を受けることになったいきさつやその指導方法を超えた人材育成などに...続きを読むついても触れた国内サッカー本として最高の一冊。
[一言に、人生が宿る]ユーゴスラビアと日本という2つの国のサッカー代表監督を務め、それぞれにおいて数字だけでは表すことのできない多大な足跡を残したイビツァ・オシム。「オシム語録」として注目を集めた彼の言葉の裏には、祖国の興亡や家族の離散という悲劇の渦に呑まれながらも、サッカーに人生を捧げ、前を向き続...続きを読むけた男の歩みが投影されていた......。ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞作です。著者は、ユーゴスラビアのサッカーならこの人の右に出る日本人なしとも言える木村元彦。 生まれながらにしての指導者とでも評せば良いのでしょうか、とにかくその視野の広さと洞察力の鋭さ、そして人間に対する敏感すぎるほど鋭敏な感覚にしびれるばかりです。ピッチ上では見ることのできない、聞くことのできないオシム氏の興味深い側面は、知れば知るほど惹き付けられます。会ったことないですが、きっと変な磁力みたいなものを側にいれば感じてしまうのではないでしょうか。 オシム氏が若き日にたどった、激動という言葉が生温いくらいの人生にはもはや言葉を失うばかりです。そして、そんな中でもチームを鼓舞し、選手を平等に扱い、そして守り抜いた姿勢には衝撃すら覚えました。サッカーを知らない人にも、というより知らない人にこそぜひ本書を入口にしていただき、野球もそうだけどサッカーもまた人生であることを感じていただきたいです。 〜サッカーと人生がこれほどまでに折り重なった監督はいない。〜 木村氏の取材力にも頭が下がります☆5つ
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