Posted by ブクログ
2014年09月21日
この「「蒼天航路」と吉川英治版「三国志」、
さらに宮城谷昌三版「三国志」を
併読する「とことん三国志」のチャレンジの始まり。
歴史的順序では宮城谷版が曹騰の時代から始まるために先行し、ここで曹操の少年期を描いた「蒼天航路」が併読の流れに加わる。
三国演義では、敵役として曹操が描かれるために割愛さ...続きを読むれる部分だ。
曹操に関する少年期と北部熨のエピソードは、吉川版にも宮城谷版にも簡単に記載されているが、ここまでの詳細はない。
もちろん水晶を巡る張譲との因縁は「蒼天航路」の創作と思われる。
その代わりに吉川版には劉備の親孝行の話が、宮城谷版では宦官と外戚が繰り返す大義の革命の歴史が詳細に語られるのが各々の特徴になる。
蒼天航路は水晶に始まり、水晶に終わる。
この意味は、曹操という希代の傑物を中華、漢帝国の枠に収めないという意図であろう。三国を突き抜けて、遠くインドやヨーロッパを見ていた男としての人生を追い続けたということになる。
「乱世の奸雄」と呼ばれる、英雄の物語の始まりである。
「蒼天航路」は既読時のレビューをmixiレビューに載せていたので、この機会に改めてこちらに移動する。
蒼天航路 (1) 過去レビュー
自分の人生の季節とこの作品が呼応したときに
全巻挑戦しようと決意して、
今年がそのときと思い、大人買いしました。
レビューでは、その巻の気に入ったシーンをまとめていきます。
「原作 李学仁」がクレジットされているのは、
この巻から3巻まで。その後は、原案になります。
つまり少年期から董卓時代までと、
それ以後の時期で、
蒼天航路に李学仁が与えていたものがなんだったか、
その内容の判別によって評価の分かれるところです。
そしてそれがこの作品の色合いをどう変えたか。
印象でいえば、王欣太が、作品世界の大きさにビビることなく、
画才をあますことなく発揮していたのが前期の特徴だと思います。
そして、李学仁は、その豊富な知識で
従来の三国志物語からはみ出すべく曹操を描いた。
その相乗効果で、この作品を破格の作品にしたと思います。
そう、初期の特徴こそ「破格の人」を破格に扱ったということです。
その象徴が「水晶」。
蒼天航路の登場人物の中でももっとも印象に強い女性。
漢朝にあって、漢を見ず、
三国時代にあって中原だけを見なかった曹操。
その国際的な視野の広さを
水晶という女性に象徴させているのは見事。
中華の偉人が「アモーレ」と恋人と呼ぶとき、
この作品は、ふつうの三国志を逸脱した。
まさに「破格」の作品になったのです。