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定番からおすすめまで!いま読みたい三国志漫画9選

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※2020/12/3に『パリピ孔明』『終末のワルキューレ異聞 呂布奉先飛将伝』の2作品を追加しました。

今から約1800年前の中国・中原を、英雄たちが駆けめぐる物語「三国志」。スケールの大きさは言うまでもなく、史実ベースならではのリアリティと登場人物の多彩さは、ファンを魅了してやむことがありません。そんな三国志の漫画といえば横山光輝先生の『三国志』が有名ですが、他にもおすすめはたくさんあります!

今回は長編から4コマ漫画まで、いま読んでほしい三国志漫画を9作品ご紹介します。三国志作品を初めて読む人も、筋金入りの三国志ファンも、それぞれが好みの作品を選べるように、初心者向け、上級者向け表示をつけているので、作品を選ぶ時の参考にしてくださいね。

『パリピ孔明』

パリピ孔明 1巻

『パリピ孔明』 1~3巻 四葉夕卜・小川亮 / 講談社

【初心者~上級者向け】

あの諸葛亮孔明がバイブスぶち上げ↑のパリピに!?

蜀の天才軍師・諸葛亮(孔明)が現代に転生! 渋谷のクラブ↑で出会った売れないアマチュアシンガー・英子に「三顧の礼」ならぬ「三度の感動」を感じた孔明は、彼女の軍師(マネージャー)となることを決意。「世界最大のフェスに参加する」という英子の夢を叶えるため、呉の武将・陸遜に追われる劉備を救った「石兵平八陣」、兵法三十六計、観相学などを駆使して、知略だらけのパーリィタイム☆を展開します。

ペットボトルを「セミの抜け殻」、EDMを「笛」と呼んでおののいていた孔明は、あっという間に現代の知識をつかみ、ラップバトルまでぶち上げ↑るほどに。三国志オタのクラブオーナーにも「こいつチョー孔明じゃん」と気に入られ、フロアスタッフとして採用されます。スマホを使いこなし、サイリウムを振る天才軍師の姿はあまりにも斬新!!! チャラサングラスをかけてチャラ語をしゃべっていても、隠しきれない上品さと知性はさすが孔明です。フリースタイルラップバトルに漢詩盛り込むなんてアリ?

一見イロモノに思えますが、三国志愛が非常に深く、三国志ファンにも、三国志初心者にも自信を持っておすすめできる良作です。三国時代の悔いから語られる、今を大切にしようとする孔明のセリフには胸を打たれます。三国時代の策略を現代でどう生かすのか? 英子は目標を達成するのか? 本家『三国志』にも通じるワクワク感にやみつきになるはずです。

『パリピ孔明』を試し読みする

『終末のワルキューレ異聞 呂布奉先飛将伝』

終末のワルキューレ異聞 呂布奉先飛将伝 1巻

『終末のワルキューレ異聞 呂布奉先飛将伝』 1~2巻 ©アジチカ・梅村真也・フクイタクミ/コアミックス、 ©オノタケオ

【初心者~上級者向け】

初のスピンオフ、主役は我らが呂布奉先!

現在連載中の『終末のワルキューレ』初の公式スピンオフ。神vs人間のラグナロク(ガチンコタイマンバトル)のうち、先鋒として雷神トールと対決した中華最強・最凶・最狂の「人類代表」呂布奉先が主人公です。

一騎当千の強者がこれでもかと登場する三国志にあって、純粋な「武」では並ぶ者無しと評される呂布奉先。3万の軍を怯ませる、10万の軍に一騎打ちを挑むなど、“飛将”“暴れ龍”呂布が三国時代に達成した“7つの伝説”が描かれます。あらゆる不可能を可能にし、「天上天下我以外須(すべか)らく弱者なり」と言い放つ豪胆さはさすが! 本編同様、陳宮の呂布へのただ漏れの敬意も健在です。
三国志といえば劉備、関羽など知られたメンツが主役を張りがち。呂布といえば裏切り、親殺しを繰り返した不義の人物とされており、英雄としての評価は今ひとつなだけに、呂布メインの物語というだけでも見る価値あり!? 並み居る猛者を表情一つ動かさず倒しまくる、“武神”そのものの姿に惚れ惚れするはずです。

『終末のワルキューレ』本編はがっつりファンタジーですが、今作はきちんとした三国志漫画。本編の勢いのあるノリや大迫力の構図はそのままに、呂布をはじめ劉備、張飛、董卓といった知名度の高い人物、“江東の猛虎”孫堅、“黒槍無双”方悦といった魅力的なサブキャラなどが登場し、群雄割拠の三国時代を彩ります。呂布以外が主人公のストーリーも見たくなる、スピンオフの枠を超えた魅力的な作品です。

『終末のワルキューレ異聞 呂布奉先飛将伝』を試し読みする

『蒼天航路』

蒼天航路 1巻

完結『蒼天航路』 全36巻 王欣太・李學仁 / 講談社

【初心者~上級者向け】

三国志漫画の大定番!「姦雄」曹操を革命的に新解釈『蒼天航路』

横山先生の『三国志』と共に、三国志漫画の双璧と言える作品です。横山三国志が歴史小説『三国志演義』をベースにしているのに対し、本作は史実に沿ってストーリーを展開しつつも、キャラやエピソードに大胆なアレンジを施しているのが特徴です。

一番の注目ポイントは、主役を曹操にしているところ。『演義』をはじめ、読み本や演劇などで1800年間、延々と悪役扱いされてきた曹操について、史実・資料をもとに考察し、彼の魅力と真価を明らかにしています。曹操の発想があまりに革新的で周囲がついていけなかったり、伝統的な儒教との板ばさみになった家臣が病んでしまったりするあたりは、「これに近い場面が本当にあったのでは」と思わされます。本作は曹操の死をもって完結しており、名実共に巨人であった曹操の一代記となっています。

他の登場人物も、それぞれの個性が活かされて魅力的に描かれており、「三国志は初めて」という方でも人間味あふれるドラマを楽しめます。中級者なら、そのキャラの一般的なイメージとのギャップが面白く、通ならその新解釈が何を根拠としているのかを想像できてニヤリとすることでしょう。

骨太でリアルな作風と、仙術などのオカルト性、キャラのドレッドヘアといったケレン味が絶妙にブレンドされています。生々しい殺戮・戦闘シーンもあり、硬派な戦記ものを好む方にもおすすめ。美女キャラや妖人(!?)孔明などの妖艶な場面も、のめりこんでしまうポイントです。

テレビアニメ化もされた本作は、原作が李學仁先生、作画が王欣太先生というコンビで連載がスタートしました。王先生は現在、『漫画アクション』にて春秋戦国時代を舞台にした『達人伝~9万里を風に乗り~』を連載中なので、本作にハマった人にはそちらもおすすめです。

『蒼天航路』を試し読みする

『三国志』

三国志 1

完結『三国志』 全14巻 李志清・寺島優 / KADOKAWA / メディアファクトリー

【初心者向け】

「演義」を分かりやすく硬派に漫画化『三国志』

『三国志演義』の漫画版といえば横山三国志が有名ですが、何しろ60巻もある大作。もうちょっとコンパクトなものを読みたいという方に推奨したいのが本作です。寺島優先生の原作を、外務省主催の第1回国際漫画賞で最優秀賞を受賞した香港の漫画家・李志清先生が作画しており、日本の漫画カルチャーと中国の絵のテイストを、いいとこ取りした作品となっています。

本作の特徴は中国の古典文学である『演義』を、丁寧に漫画化している点です。善良な劉備が強い絆で結ばれた関羽や張飛と共に戦い、やがて天才軍師・孔明とめぐり会う――という、『演義』のストーリーが好きな方には文句なくおすすめ。シンプルな勧善懲悪ものが好きという方、歴史小説や中国王朝モノが読みたい方にも良いでしょう。

三国志を読むには、時代背景や用語の知識がある程度必要ですが、本作は作中での細やかな解説が多く、予備知識がない方や初めての方でも大丈夫! キャラクターデザインも分かりやすく特徴づけられているので、多すぎる登場人物を覚えるのが苦手……という方にも向いています。

本作の作者コンビ・李志清先生と寺島優先生は、この作品の後日談に当たる『三国志 完結編』でもタッグを組んでいます。三国志漫画では省略されることも多い、孔明死後の話を読みたい方はそちらをどうぞ!

『三国志』を試し読みする

『孔明のヨメ。』

孔明のヨメ。 1巻

『孔明のヨメ。』 1~11巻 杜康潤 / 芳文社

【ネタ的には上級者向け(ただしラブコメとしては誰でもOK!)】

ほのぼのラブコメながら時代考証がすごい!『孔明のヨメ。』

孔明の妻・黄月英をヒロインにした珍しい4コマ漫画です。2人の一風変わった出会いから結婚、新婚生活と、日々の生活をほんわかと描いています。月英が防衛装置を作りまくるなどのギャグは一見ネタっぽいですが、元となっている伝説や作品を知っている人は思わずクスッとなるはず。三国志の時代の風俗をはじめ、史実やキャラの相関関係などに対する、杜康潤先生の深い知識が反映されています。三国志ファンが満足できるクオリティで、2人の背景を知りたい方にもおすすめです。

日常系の漫画で、キャラ同士の温かなやりとりがメインなのも、三国志漫画には珍しいポイント。後に一国の重臣となる孔明の、まだ青二才だった時代が描かれているのもユニークです。夫婦をはじめ、各キャラがそれぞれ好人物なので、ほんわかラブコメが好きな方なら、三国志のファンレベルを問わずおすすめできます。

作者の杜康潤先生は、中国留学歴もある筋金入りの三国志好き。『鋼の錬金術師』『銀の匙 Silver Spoon』で知られる荒川弘先生とも親しく、共著で『三国志魂』も出しているので、そちらもぜひチェックを!

『孔明のヨメ。』を試し読みする

『白井版三国志遊戯 STOP劉備くん!』

白井版三国志遊戯 STOP劉備くん!

完結『白井版三国志遊戯 STOP劉備くん!』 全1巻 白井恵理子 / KADOKAWA / メディアファクトリー

【初心者向け】

三国志ギャグの超定番!『白井版三国志遊戯 STOP劉備くん!』

劉備は読売ジャイアンツファン!? 曹操はマイホームパパ!?

三国志のキャラたちがかわいい3頭身にデフォルメされ、ほのぼのギャグを飛ばす4コマ漫画です。時事ネタも多く、三国志のファンでなくとも楽しめる敷居の低い作品。キャラづけが上手く、初心者でもすぐに登場人物が覚えられます。

本作のすごいところは、おちゃらけているだけではなく、三国志のストーリーをしっかり踏まえている点です。例えば、劉備の取り柄が草履作りだったり、張飛の酒ぐせが悪かったりするのは、一般的なイメージやエピソードをもとにしています。曹操が妻に逃げられたというネタは、丁夫人の逸話を知る読者は「ああ、あれね!」となるでしょう。

初心者はもちろん、通はより深く楽しめ、三国志がさらに好きになる本作。作者の白井恵理子先生は、『白井式プチ三国志 GOGO玄徳くん!!』や、『劉備くん! 阿斗のまつり』など、「STOP劉備くん!シリーズ」を多数描いています。

『白井版三国志遊戯 STOP劉備くん!』を試し読みする

『漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん』

漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん 1巻

完結『漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん』 全5巻 末弘 / 講談社

【中級者~上級者向け】

やる気ない司馬懿は恐妻家!?三国志後期がメインのギャグ漫画『漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん』

『三国志演義』の後半で、孔明のライバルとして描かれる司馬懿仲達。司馬家が後に主君を追い落とす形で帝位についたせいか、司馬懿にも策士でずるいというイメージがあります。が、ギャグ漫画である本作の司馬懿は、無気力で気弱な一役人! 妻の尻に敷かれまくってますが、それでも妻が好き、というちょっぴり情けない感じです。他の登場人物も破天荒で面白く、曹操が低身長をごまかすために長い「シークレットハット」をかぶっていたり、曹植が「ハロー♥」と登場したりと、もうハチャメチャです。

しかし、そのネタがまるっきり荒唐無稽なネタという訳ではなく、根拠があるのがすごいところ。ネタ元を欄外に注釈として書いてくれているので、三国志の小ネタを知りたい人にもおすすめ。取りあげられることがあまり多くない三国後期~晋建国が描かれているのも珍しく、司馬懿が上司や同僚に振り回されている姿も新鮮。作者・末弘先生のノリにハマってしまった方には、『アレ国志』もおすすめですよ。

『漢晋春秋司馬仲達伝三国志 しばちゅうさん』を試し読みする

『異郷の草 三国志連作集』

異郷の草 三国志連作集

完結『異郷の草 三国志連作集』 全1巻 志水アキ / KADOKAWA / メディアファクトリー

【上級者向け】

マイナーキャラに焦点を当てた、叙情豊かな短編集『異郷の草 三国志連作集』

作者の志水アキ先生は、京極夏彦先生の『姑獲鳥の夏』などのコミカライズでも知られる漫画家です。本作では黄忠・鍾会・甘寧・孟獲・簡雍の5人を主人公に、5作の短編を描いています。

本作の魅力は、三国志のマイナーな人物に焦点を当てている点。三国志に詳しい方なら、それぞれのキャラについて固定のイメージがあると思いますが、本作での描かれ方と比べてみたり、納得したりして楽しめるでしょう。脇役にフォーカスして「○○伝」と著す手法は、史記以来の中国文学の伝統ですが、そんな◯◯伝ものが好きな方なら、漫画版の列伝として読めそうです。

5人のキャラそれぞれが、一途に、あるいは愚かに、または無様に生きて死ぬさまは、人間ドラマとしても秀逸。淡々としたストーリーテリングに、列伝らしい味と無常感があります。南蛮王・孟獲と祝融の話は、短いながらも感動的なロマンスで、孔明の南征からこのような話を紡ぐことができるのかと、志水先生の知識とイマジネーションに驚かされます。

『異郷の草 三国志連作集』を試し読みする

『三国志ジョーカー』

三国志ジョーカー 1

完結『三国志ジョーカー』 全5巻 青木朋 / 秋田書店

【初心者~中級者向け】

スーツ姿の司馬懿と未来人の諸葛亮という異色作!『三国志ジョーカー』

表紙に描かれた可愛い黒スーツ少年は、なんと司馬懿! そう書くと、現代パロディかと思われるでしょうが、舞台はれっきとした三国時代。司馬懿は主君である曹丕に「敵の首謀者、諸葛亮を捕らえろとお命じください」と頼みます。どうやら、司馬懿のスーツの理由も、諸葛亮にある様子……。

一見すると破天荒な作品に思えますが、実は緻密な時代考証と三国志愛に溢れています。諸葛亮(実は未来人)がウイルスを蔓延させるために熱気球を利用するのですが、それもただのトンデモ設定ではなく、ちゃんと伝承を基にして描かれていたりと、三国志ファンならニヤリとする小ネタがたくさん!

主役の二人はもちろん、劉備や周瑜など、脇キャラも魅力的。なかでも、冷酷そうに見えて、実は繊細な曹丕と、病に倒れた曹沖とが長年の遺恨を晴らすシーンは感動もの。

司馬懿少年のかわいさにキュンとするもよし、散りばめられた史実ネタをじっくり味わうもよし。初心者から三国志マニアまで、さまざまな楽しみ方が出来る作品です。

『三国志ジョーカー』を試し読みする

最後に

映画化、ドラマ化はもちろん、アニメやゲームの世界でも人気の三国志。漫画も『演義』版だけで複数あり、翻案モノ、ギャグ、ファンタジーなど幅広い作品が生み出され続けています。読めば読むほど、もっと深く知りたくなる……そんな三国志漫画の深く広い魅力に、あなたもハマってみませんか?

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