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聖書は決して夢物語ではない。私たちと何ら変わりのない血の通った生身の人間がそこにはいる。聖母マリア、長血を患う女、売春婦、マグダラのマリア……。みな病に苦しみ、他人を妬み、弱さゆえに誰かを裏切る。彼女たちの苦しみは、あなたの苦しみ。だから辛いときには聖書を開いてみて。惨めなのはあなただけではないし、決して独りではないと気づけるから。傷んだ心を優しく包む名エッセイ。(解説・宮澤エマ)
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Posted by ブクログ
遠藤氏はカトリック信者であるので、
聖母マリアの母性的な愛をイエスキリストにも
見出し、その視点で描かれている作品が多いと思う。
キリストと関わった女性は、
母マリア、7つの悪霊に取り憑かれたマグダラのマリヤ長血を患う女や娼婦を生業としている女達等など。
皆、人として弱くまた社会から排除された人々である。
キリストはそのような女性達に寄り添い、その哀しみを受け止める、決して裁くためではなく
救うために。
実は東野圭吾の「手紙」を読んだばかりである。
兄が犯罪を犯し、その為に弟が社会から差別され
排除される話である。
東野作品のあとに遠藤氏の作品を読んだ時、
社会から排除されねばならない差別に苦しむ弟に
キリストならきっと、寄り添い共に歩みその哀しみと重荷を受け止めてくれただろうと思う。
遠藤氏は言う、人間は弱いものだと。
その弱さを知らずに自分だけは正しいと裁いてしまう。
しかしキリストは彼を求める人の指先からでさえもその孤独を感じ取りあなたの重荷を背負うと。
そこに救いがある。
しかし、60年代の作品であるので、イブとマリアの二元的捉え方は
やや現代では無理があるとも思った。
あとがきを宮澤エマさんが書いているが、その文章も卓越していて読み応えがあった。
遠藤氏のキリストと女性達の関係への想いは、弱いものとしての私をも救ってくれる優しいものだった。
Posted by ブクログ
没後30周年の遠藤周作のこの作品と目が合った。
遠藤周作といえば、遥か昔に「海と毒薬」を読んだ(?)ぐらいだった。
私は生まれてこのかた聖書というものを読んだことがないが、他の国の本や映画に触れる時、必ず宗教感が出てくる。
全く知らないよりは、少しでもかじっておいたほうが良いだろうと思い、購入した。
聖書の中に出てくる女性たちのことを、キリストを通して独自の価値観で、紹介しているため、キリスト教の根幹みたいなものが理解できた気がする。
信じる力は、人間を強くさせる。
この力の強さを理解したうえで、宗教感に近づかなければならないことがわかった気がする。
Posted by ブクログ
カトリックの幼稚園に行っていたこともあって、キリスト教には小さな頃から興味があった。
そして『海と毒薬』を書いた遠藤先生が、聖書に登場する女性たちのことをどう描くのか。
それが気になって手に取ってみた。
遠藤先生の文章はするする入ってくる読みやすい文章なので、今回のエッセイもとても親しみが持てた。
聖書の文章は堅苦しいので、ここまで噛み砕いてくれると分かりやすい。
そして、キリストが満たされた女性ではなく、病気の人や娼婦など、苦しみをよく知る人たちにこそ寄り添っていたことに今更ながら驚かされた。
確かに、金持ちや成功者は出てこない。
本当に今更ながらの指摘だったのに目から鱗だった。
あの聖母マリアでさえ、先生の解釈にかかれば「満たされた女性」にはならないのだから。
終盤は聖書に限らず、先生の日記風なエッセイに。
でもそこにも宗教が息づいていたのを感じた。
孤独を感じた時、聖書ではなく、この本を開きたくなる、そんな一冊だった。
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