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人はなぜ大きな事件に魅了されてしまうのか。
噂は、軽薄な娯楽だ。
25年前、平穏だったはずの地方都市は、百貨店受付嬢誘拐殺人事件の発生、その報道により揺り動かされ、「噂」という大量の炎が、加害者のみならず被害者にも降り注ぎ、燃えさかった。ようやく静けさを取り戻したかに見える町に燻り続ける因縁が、いま新たな事件を呼び起こす――。
「もう言われてるよ! どうせ、親が殺したんだろうって!」――本文より
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Posted by ブクログ
「悪気はなかった」
それって、とても悪意のある免罪符だと思う。
自分がしてしまった取り返しのつかない行動を、
あとから正当化するための。
『ファイア・ドーム(上)』辻村深月
たったひとつの、何気ない選択。
普段なら何の問題にもならないような選択。
それが、何かが起こってしまった途端、
ここぞとばかりに叩かれる。
あぁ、ほんとにね。
わかるのだ。わかりすぎるのだ。
みんな、悪気はないのかもしれない。
でも、その言葉や態度は当事者にとって
ナイフのように刺さる。
そして、さざなみのように広がる噂は、
どこから流れ出たのかもわからない。
怒りのやり場がわからないと、
最後には自分自身を責めてしまう。
あの時こうしていればよかった、というのは
所詮たらればでしかない。
みんなそれはわかっているはずなのに、
人はあまりにも簡単に加害者になってしまう。
✧
本書では、小学生の失踪事件と、
25年前に起こったデパート受付嬢誘拐殺人事件が
複雑に絡み合っていく。
殺人事件。誘拐事件。
人は非日常を求めているのだと思う。
顔の見えない、匿名性に守られた安全圏から糾弾する。
相手の人格を叩き壊すような酷い言葉を、
ときに嬉々として投げつける。
心配している顔をしながら、
その裏ではエンターテインメントとして消費してしまう。
時代が変わっても、
人間の本質は何も変わらない。
噂やデマなのか、SNSなのか。
その手段が変わっただけなのだ。
とんでもなく無責任で、無邪気な悪意。
自分はそうなっていないだろうかと、ぞっとした。
✧
小さな火の粉は、あっという間に燃え広がる。
それは、瞬く間に拡散されてしまう
根も葉もない噂にもよく似ている。
『ファイア・ドーム』。
これは辻村さんの渾身の物語だと感じる。
そして、ここで上巻が終わるのか……!
もう続きが気になって仕方がないところで終わってしまった。
Posted by ブクログ
これだけの長編にして、中だるみなど一切なく読ませる筆力がすごい。
私はいわゆる文学的表現が得意ではない。大抵の小説で頻出する情景描写なんかも、正直ほとんど斜めに読んでしまう。その瞬間に集中が途切れたというのが分かってしまって、もう一度入り込もうと頑張っている時間が悲しい。
こちらのファイアドームはというと、
小難しい言い回しや表現が頻出せず、素人目にも分かるテクニックのようなものは一見目立たない。のに、なのに、なぜこんなにも胸をえぐられるの???辻村先生どんな魔法を使ったの???
読書を中断した理由が、「外で涙ぐんでしまったから」は初めてだよ!!!
どの章もちゃんと「誰かの話」になっている。
私の話だ!とかこの手のエピを持っている訳では無いんだけど、嗚咽レベルで胸を締めつけられた。
ファイアドームが初めての辻村作品なんだけど、なんかこの先生只者じゃない…?よね…?やっぱ複数のヒット打ってる人はプロ中のプロなのか…
その道の上位1%層の怖さも同時に感じました。ありがとうございます。
かがみの孤城、傲慢と善良、絶対読みます。
普段本を読まない人にも自信を持ってオススメできる作品だと思った。
分厚い上下巻、もちろん視覚での圧はあるが騙されたと思って一度挑戦してほしい。
色んな意味でやはり2026年を代表する作品なんだと感じた。
Posted by ブクログ
かなり面白かった。ミステリーだからか、いい意味で辻村深月ぽさが薄い気もして、作者の影がちらつかずに物語に没頭した。そしてすさまじい読みやすさ。イッキ読み。
誘拐&ゴシップもの。北陸のある県で20年以上前にデパートの受付嬢が誘拐され殺された事件があった。未解決だ。その土地の小学校にいま、東京出身の若い新任女性教師が赴任した。過去の事件は知らない。ところが、クラスの生徒に、当時の被害者遺族の息子がいた。
地域の人はその息子を遠巻きにしている。事件当時、被害者の女性や家族について、無責任な噂が流れ、それを信じてる人たちが多かったためだ。無責任な噂で炎上するのは現代のSNSさながら。なるほど、昔から、地方の閉鎖的社会では現代のSNSの闇と似たようなことが起こっていたか…
と思うのも束の間、なんとその遺族の小学生の息子が、誘拐されてしまう。しかも、彼を最後に見かけたのは主人公の新人女性教師。なぜ夕刻の時間にふらついている子供を最後まで面倒を見なかったのか!おまえはそのとき、何をしていたのか!という世間の批判から始まるアンコントローラブルなSNSバッシング。
なるほど、過去の事件でのあらぬ噂話の被害にあった家族と、時を超えて現代社会でもおきるバッシングをオーバーラップして扱い、人間の心理の浅ましさや愚かさを描いていくのか…?
…何ていう予想はすぐに裏切られる。二転三転する事件と謎。重層的でとても面白い!本当に夢中になって読んでしまった。
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