Posted by ブクログ
2009年12月28日
有栖川有栖読んでいて推理ものが読みたくなって手にとってみた清張。
上下巻なのでボリュームたっぷり。
撲殺された銀行員の妻の弟で若手画家の山辺修二が
兄の死の理由の真実を究明しようと奔走し、
地方銀行や宗教団体などのスキャンダルに迫っていくというもの。
きちんと取材と資料勉強して丁寧に作られているので...続きを読む、
まるで実際に起こっている事件のように現実に迫ってきて面白いし、
最後の着地もしっかりしつつ意外性もばっちりあってさすがの一言。
あとはタイトルセンス。
ずっとタイトルとの関係をいまいち測りかねていたのですが解説を読んで納得。
内容に直接関係ないので抜粋しちゃいますね。
『清張作品においては、組織やシステムは重要な舞台ではあるが、あくまでも人間が主人公である。人間が組織やものの奴隷になることはない。僕や奴隷になりかけても、それに必死で反抗する人間が描かれる。社会の隠花植物として陽の光りを浴びることもなく、平原の片隅に埋もれていく群像。清張自身、隠花植物としての生い立ちが低い視座から上も望むアングルに他の追随を許さぬ人間社会を結像させる。清張自身、隠花平原の中の隠花植物の一茎と悟ったとき、この作品は圧倒的な共感を持って読者の心に迫るであろう。』
この作品に限らず清張の作品には総じてこの解説が当てはまる気がします。