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【新しい「日本的経営」を創造する】
経営は日々、選択を迫られている。しかし、つい安易に妥協して選択しやすいほうを選んだり、それぞれの選択肢の意味するところを十分に吟味せずに思考停止したりしていないだろうか。経営活動において直面するさまざまな矛盾やジレンマを「あれかこれか」の二項対立で切り抜けるのではなく、苦しくても「あれもこれも」の二項動態を実践することこそが、過去の自己を超えていくただ一つの道なのだ。過去の成功体験に過剰適応することなく、現状にも安住しないことで自己変革につなげ、機動力を持って自己変革し続ける組織は、二項動態経営を行っているのである。本書は、バンダイナムコ、エーザイ、ユニ・チャームなどの事例にもとづいて二項動態経営のメカニズムを解明する、新しいコンセプトの経営哲学書。
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Posted by ブクログ
バンダイナムコでは、常日頃から、頻繁に組織改編を行っている。しかも業績のよい部署ほどその対象になるというから興味深い。組織を進化させるには、組織を絶えず不均衡にしておく必要がある。ゆらぎといってもよいだろう。そうしたゆらぎがあるからこそ、二項が動いて変容が生じ、新たな道が見つかる可能性が広がる。
しかも、バンダイナムコの組織変革は、グループ全体としての動的変革 (transformation) プロセスを通じて行われている。これは、二項動態経営そのものである。意図的に組織にゆらぎを起こすことにより、知的コンバットの場で異質が組み合わさって、無意識的な発想の飛躍を集合的に触発するのである。
二項動態の定義: 変革 (Transformation) の原理
本書の冒頭で、二項動態経営の本質が自己変革 (self-transformation) にあることを述べた。自己組織化(self-organization)とは、自ら創発的に秩序をつくり出す、あるいは構造を変えていくプロセスのことである。現状への安住や固定化の作用に抗って変革に向かうために、動く現実の流れのなかで、矛盾やジレンマがもたらす不安定さやカオスを内部に取り込み、新たな意味や価値へと能動的に変換させ、過去の自己を超越していくことが自己変革である。
以下、変革の原理としての二項動態について詳述していきたい。
・二項動態は、矛盾を超える
・二項動態は、異質性から創発する
・二項動態は、その都度の最善をめざす
・二項動態は、多項動態である
「戦略的ナルシシズムとは、自信過剰やあきらめから、文脈を無視し自分が望むように認識し、 希望的観測と自分勝手な解釈によって短期志向で政策や戦略を決めてしまうことを表している。 状況が要求している方向よりも、それらを取りまとめる担当者たちが選好する方向が優先されてしまう。これらの傾向は、『失敗の本質』で描写した日本軍の姿やベトナム戦争時の米国国防長官ロバート・マクナマラ、あるいは不祥事や不正を起こしてしまった企業の姿に重なる。他方、相手の立場を歴史、政治、社会、文化を含めて理解し、刻々と変わる文脈の本質的な意味を洞察できるのが「戦略的エンパシー」だ。
二項動態は、多項動態になりうる。二者択一や二項対立など二分法に対するアンチテーゼとして二項動態を示しているが、実際は三者間、あるいはそれ以上のものに生ずるジレンマに直面することはありうる。それは、複数の二項対立の複雑な組み合わせに対処することでもある。多様な世界が共存しているという世界観を持ち、二項対立に還元されない複雑性や多様性をありのままに受け止めていくことが、自分にとって未知のものや異質なものを排除しない態度につながっていく。
・二項動態は、動的変革プロセスである
二項動態経営とは
経営活動においても、日々、アナログとデジタル、アートとサイエンス、トップダウンとボトムアップ、個別と具体、安定と変化、適応と革新など、さまざまな対立項に直面する。しかし、 これらを二元論で分断するのはやめておこうではないか。これらに明確な境界線はなく、グラデーションでつながっている。だから、相互作用している対極をバランスさせ、その都度、新しい道をひねり出す。それは単なる足し算や予定調和ではないし、中間でも折衷でもない。偶発性や異質性を取り込み、新たな知を創造する、開かれた動的変革プロセスである。これを、個人レベルではなく集合的に行うのが「二項動態経営」だ。
われわれが提唱する二項動態とは、一見矛盾や相反する事柄を状況や目的に応じて、異質な両極端の特質を活かし、跳ぶ発想で新たな地平を見出すことを意味している。物事や問題を「あれかこれか」で捉える二項対立 (dichotomy)ではなく、「あれもこれも」の二項動態 (dynamic duality) 状況に応じて何をなすべきかを機動的に判断し、行動する「生き方」を指している。
それは、異質なものとの出合いから新たな意味や価値を生成するイノベーションプロセスそのものだ。二項動態経営では、観念論で相手を倒すのではなく、暗黙知を源泉とする新たな知の創造、イノベーションを起こすことをめざしている。動いていく現実の只中で、状況に応じ、互いのせめぎ合い、妥協なき葛藤から、「こうとしか言えない」という「その都度の最善(より善い)」 を無限に追求し、試行錯誤しながらともに前進していく創造原理としての生き方である。
現場・現実・現物にしっかりと立脚しながらも、遠くにめざす共通善からもフィードフォワードすることで、跳ぶ発想を生む可能性が大きくなる。過去の成功体験に過剰適応することなく、 現状にも安住しないことが組織の自己変革につながる。
ヒューマナイジング・ストラテジーとは
ここでわれわれは、ヒューマナイジング・ストラテジー(戦略の人間化、人間くさい戦略)を提示したい。ヒューマナイジング・ストラテジーは、「人間は、未来志向で意味を創造する主体である」 という人間観に支えられたものであり、動的プロセスを措定している。この点において、経済学をベースに静的な状況を仮定する論理分析型の戦略論とは異なる。
ヒューマナイジング・ストラテジーは、次の3つで特徴づけられる。
①戦略とは、「思い」を持つ人間一人ひとりの生き方 (a way of life)を、相互主観性を媒介にして組織の客観へと昇華させ、新しい現実を共創するために集合的に意味づけ・価値づけを行うことである
②戦略とは、主観的な「幅のある現在」の時間軸において、文脈に応じて「いま・ここ」の判断を行い、変化の只中でより「善い目的(真・善・美)」を追求し、実践するオープンエンドの価値創造プロセスである
③戦略とは、「共通善」を掲げてその実現を志向する人間の「生き方」であり、未来創造の物語り(ナラティブ)によって表現される
野中らは「野性の経営」(KADOKAWA)において、タイの組織的なソーシャルイノベーションの物語りから普遍的なスクリプトを読み取った。クリエイティブ・ルーティンとしての大きな特徴は、一見相反するような行動を偏ることなく、バランスをとりながら行っている、ということであった。実践知とは「あれかこれか (either/or)」の二項対立ではなく、「あれもこれも(both/and)」の「二項動態」的な思考や実践である。新たな価値を生む創造的な実践には、この二項動態が欠かせない。このクリエイティブ・ルーティンは、本書で取り上げた企業事例にも普遍的なものであり、再掲したい。
これらの二項動態を可能にするクリエイティブ・ルーティンを同時に追求することは、非常に労力も時間もかかる難しいものばかりである。しかし、自己変革を達成するためには実践が不可欠なものばかりである。
・「共通善を追い求める」 & 「「いま・ここ」を歩き、感じる」
・「人々を信じ、衆知を活かす」&「対話し、覚悟を問う」
・「言葉に魂を込める」&「ともに汗を流す」
・「壮大な物語りを描く」&「小さくても、すぐに成果を出す」
・「大胆に挑戦する」&「細部にこだわる」
・「誰(何)にでも共感する(二人称)」&「生きる意味を見出す(一人称)」&「人々を巻き込み、スクラムを組む(三人称)」
Posted by ブクログ
一言要約:「日本企業や日本人が本来持っていた“人間らしい力強さ”や“現場感”、そして“対立や矛盾を統合し新しい価値を生み出す二項動態”」、これは必殺技でも飛び道具でもなく、地道で泥臭い知的コンバットによって築き上げるものだ
序章
日本企業で働く我々は、JTCの三種の神器「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」の本質要素への回帰が必要である。終身雇用の原文「lifetime commitment」に納得。また、日本の強みはむしろ「つくる力」より「読む力」にあったと考える。VUCAな時代でも、市場変化に応じて最適化し投入する「読み」が日本のものづくりの本質的強さだった。二項動態は一発逆転の技ではなく、地道な合わせ技であり、外部ツールや横文字に頼り失敗した日本企業への警鐘でもある。
1章
経営と哲学の動態は暗黙知と形式知の動態であり、SECIモデルはイノベーション活動そのもの。起点が重要で、現場感が不可欠である。SECIモデルの起点となる「共感」はデジタル時代にこそ人が大切にすべき領域。二項動態は西洋哲学の二元論よりも東洋思想の陰陽的側面が強い。三現主義や現象学的な「いま・ここ」への注目、対立を否定せず解消へ向かう姿勢が重要であり、経営というより「生き方」としての態度が求められる。
2章
二項動態は対立を統合し新しい知を創造することであり、コンフォートゾーンを抜け、エコーチェンバーやフィルターバブルに気づく必要がある。競合との協働や対立の言語化、非言語的現場感覚と定量的数字の行き来、対話が鍵となる。属性やステレオタイプに頼らず、自らの価値を最大限に活かすことが重要。論理的な三段論法では新しい創造は生まれず、矛盾や相反を合一させる活動こそが二項動態である。
3章
人的資本経営では、測定可能なものに偏り「やり過ごし」が多い。ダイバーシティも数字化され、本質的な多様性が失われている。数字化や定量化は「心地悪さの排除」や「リスク低減」のためであり、これが行き過ぎると企業は活力を失う。測れないものに取り組まないことや、数字・管理重視から脱却し、真善美や信頼、価値創造の組織形成が人間本来の活動である。
終章
人間本来の力強さや生き残る力が行動の原動力となる。これを指針にし、行動を促し組織化し、制度化する順番が重要。制度先行では中身が伴わず意味がない。日本人や日本文化のアイデンティティに向き合うことが不可欠である。
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ビジネス・実用
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