【感想・ネタバレ】二項動態経営 共通善に向かう集合知創造のレビュー

あらすじ

【新しい「日本的経営」を創造する】
経営は日々、選択を迫られている。しかし、つい安易に妥協して選択しやすいほうを選んだり、それぞれの選択肢の意味するところを十分に吟味せずに思考停止したりしていないだろうか。経営活動において直面するさまざまな矛盾やジレンマを「あれかこれか」の二項対立で切り抜けるのではなく、苦しくても「あれもこれも」の二項動態を実践することこそが、過去の自己を超えていくただ一つの道なのだ。過去の成功体験に過剰適応することなく、現状にも安住しないことで自己変革につなげ、機動力を持って自己変革し続ける組織は、二項動態経営を行っているのである。本書は、バンダイナムコ、エーザイ、ユニ・チャームなどの事例にもとづいて二項動態経営のメカニズムを解明する、新しいコンセプトの経営哲学書。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

数々の名著を送り出して来た野中さんの作品を久しぶりに読んだ。どしっと降りてくるタイトルではあるが、中身は私のような力量の者でも比較的分かりやすく読み易くなっており、良い作品だったと思う。二項動態とはあれもこれもとのことで、電機で映画もゲームも音楽もというソニーのような、というようななるほど!な感じだったが、いっそ本作のタイトルをあれもこれも経営にすれば?と考えたが、さすがに野中さんの作品にそんなポップなタイトルは使わないよな….と思った読後だった。

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2025年05月23日

Posted by ブクログ

今年出会った中でのベスト書籍になるであろう一冊。
ANDの才能、脱構築、絶対矛盾的自己同一など、さまざまな形で提唱されてきた、一見矛盾しているものを両立せんとする姿勢を、本書では「二項動態」としている。
野中先生の痛快な金言の数々が共著の本書でも散りばめられていて、最多レベルのドッグイヤーをつけた一冊です。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

「失敗の本質」の著者である野中郁次郎さんが亡くなった。子供の頃に戦争を経験し、「笑いながら機銃掃射を行う米兵の姿を見て復讐を誓った」という壮絶な経験をし、亡くなる直前まで新たな経営を考え続けたという。その結実が本書なのかな、と思い、読んでみた。
本書はいわゆる経営学の本ではなく、経営「哲学」の本、と感じた。また、西洋で重視される「形式知」だけでなく、東洋で重視される「暗黙知」の存在と重要性を明らかにし、また西洋側で発明されたとされる経営理論も、実はそのルーツは東洋にある、と指摘していたが、ある意味でこれが「復讐」なのかな、と思った。

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2025年10月04日

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示唆に富む内容ではあるが、中庸(フロネシス)、止揚(アウフヘーベン)など野中郁次郎の著作に触れた読者にとっては聞き慣れた概念に繋がる解説がされていて、新しい発見はあまりない。終盤にある、現存するいくつかの企業の経営に言及している箇所は参考になった。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

野中郁次郎最後の著書。1935年生まれかー。すんごい。pivotの楠木さんの出てるので人柄もわかってそこから読むと、より一層、モチベートされるというか、確かに兎にも角にもポジティブで、アツい、元気をもらえるという感じ。
定量とか論理じゃなくてヒトトヒトトノ議論だろ、みたいな日本的クラフトマンシップが、やはり日本人の心に火をつけるんだろうか。
共著者のあとがきよろしく、自分も精進せねば。合掌。

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2025年05月06日

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ネタバレ

著者は野中郁次郎氏、野間幹晴氏、川田弓子氏。

感想。難しい。

備忘録。
・二項動態経営とは、「あれかこれか」の二項対立ではなく、「あれもこれも」を追求する二項動態的な取組を通じて、葛藤を超えて、より善いを目指し、新たな価値創造への道を他者と共に切り拓くこと。

・対立項のどちらかを切り捨てる取り組みからは、新たな意味や価値は生まれてこない。両極端で相反するように見える二項は、相互補完的であり、実は地続きで繋がっている。

・究極の善を目指すことは現実的には無理(アリストテレス)。その都度の最善=より善いを目指す。状況や文脈に応じて適切な行動をとる、それが「実践知」である(これもアリストテレス)。

・日立のLumadaも。創業110年超の歴史で蓄積されてきた「いいものを作れば売れる」という文化を自己超越し、モノとコト、アナログとデジタルなど、二項動態で、組織の壁を超えて新しいソリューションを創造するプラットフォーム。変わり続けることが日立の本質だと。

・ダイキンのFUSION経営=短期の収益力と中長期の成長性の両立を目指す。

・SECIモデル。共同化、表出化、連結が、内面化の大きなサイクルと、暗黙知が形式知に変わっていくサイクルで、組織的知識創造が進むこと。

・現場の豊かな暗黙知を形式知にして、形式知が意味することを議論して、新しい何かを仮説だて、すぐに仮説を実行する。

・そのためには、忖度や妥協の許されない知的格闘(コンバット)が重要。

・稼ぐこと、利益とキャッシュフローを創出することによってはじめて、自社が課題解決へ向けた次なる知識創造に取り組むことができる。利益とキャッシュフローを創出せずに、企業価値を毀損し続けていると、知識創造プロセスについて株主から承認が得られないからである。知識創造は、利益を産むことによってはじめて価値になる(利益だけを差さず、顧客や社員や地域や社会にとっての共通善のこと)。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

●2025年2月13日、Yahooフリマのクーポンあるので「集合知」で検索して出た本。

●2025年7月14日、東京大学・書籍部にあった。2回目のセッションで寄った日。

帯の「非通善に向かう 集合知創造」→集合知というワードがあったのでチェック。

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2025年07月14日

Posted by ブクログ

二項対立ではなく、二つを追求する。
どちらか、ではなく、どちらも。
両利きの経営の実践についてとく。

二項をたんに両立させるのではく、
高度に統合することが二項動態とする。

二項動態を目指すには、
顧客と対話することで自社の価値を再度見出す。
それを物語りとして整理する。
従業員との対話を繰り返し、多くの人が腹落ちしている状態を目指す。
これを知的コンバットと呼ぶ。

価値は変遷しており、これまで目的だったことが
変化する顧客ニーズを満たすための一つの手段に変わっていることに気がつくことが大事である。
例えばP126清水建設による、超建設
そのためには、顧客と過ごす時間を増やす。
例えばp73エーザイによる1%の時間を患者やその家族と過ごす時間にあてる

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2025年01月07日

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相矛盾するものであっても、二項対立(or)ではなく、二項動態(and)というコンセプトがすんなりと入ってくる。

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2025年10月16日

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ネタバレ

ものすごく新しいことが書いてあるわけではなく学びは少なかった印象だが、実例を交えながら二項動態経営なるものを説明している。具体な記載が多いので読み進めやすかった

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2025年07月15日

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野中さん関連の著書を読んできたが、過去の著書から新たな発見はないかな。SECIモデルのをしっかり理解していて、知的コンバットが出来れていれば結果、二項動態になってくると思う。トレードオフの事柄を両方解決するよな。

「イノベーションには散らかし屋と片付け屋で役割があり両者必要」といった表現はしっくりきた。

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2025年04月30日

Posted by ブクログ

 バンダイナムコでは、常日頃から、頻繁に組織改編を行っている。しかも業績のよい部署ほどその対象になるというから興味深い。組織を進化させるには、組織を絶えず不均衡にしておく必要がある。ゆらぎといってもよいだろう。そうしたゆらぎがあるからこそ、二項が動いて変容が生じ、新たな道が見つかる可能性が広がる。
 しかも、バンダイナムコの組織変革は、グループ全体としての動的変革 (transformation) プロセスを通じて行われている。これは、二項動態経営そのものである。意図的に組織にゆらぎを起こすことにより、知的コンバットの場で異質が組み合わさって、無意識的な発想の飛躍を集合的に触発するのである。


二項動態の定義: 変革 (Transformation) の原理
 本書の冒頭で、二項動態経営の本質が自己変革 (self-transformation) にあることを述べた。自己組織化(self-organization)とは、自ら創発的に秩序をつくり出す、あるいは構造を変えていくプロセスのことである。現状への安住や固定化の作用に抗って変革に向かうために、動く現実の流れのなかで、矛盾やジレンマがもたらす不安定さやカオスを内部に取り込み、新たな意味や価値へと能動的に変換させ、過去の自己を超越していくことが自己変革である。
 以下、変革の原理としての二項動態について詳述していきたい。
・二項動態は、矛盾を超える
・二項動態は、異質性から創発する
・二項動態は、その都度の最善をめざす
・二項動態は、多項動態である
 「戦略的ナルシシズムとは、自信過剰やあきらめから、文脈を無視し自分が望むように認識し、 希望的観測と自分勝手な解釈によって短期志向で政策や戦略を決めてしまうことを表している。 状況が要求している方向よりも、それらを取りまとめる担当者たちが選好する方向が優先されてしまう。これらの傾向は、『失敗の本質』で描写した日本軍の姿やベトナム戦争時の米国国防長官ロバート・マクナマラ、あるいは不祥事や不正を起こしてしまった企業の姿に重なる。他方、相手の立場を歴史、政治、社会、文化を含めて理解し、刻々と変わる文脈の本質的な意味を洞察できるのが「戦略的エンパシー」だ。
 二項動態は、多項動態になりうる。二者択一や二項対立など二分法に対するアンチテーゼとして二項動態を示しているが、実際は三者間、あるいはそれ以上のものに生ずるジレンマに直面することはありうる。それは、複数の二項対立の複雑な組み合わせに対処することでもある。多様な世界が共存しているという世界観を持ち、二項対立に還元されない複雑性や多様性をありのままに受け止めていくことが、自分にとって未知のものや異質なものを排除しない態度につながっていく。
・二項動態は、動的変革プロセスである

二項動態経営とは
 経営活動においても、日々、アナログとデジタル、アートとサイエンス、トップダウンとボトムアップ、個別と具体、安定と変化、適応と革新など、さまざまな対立項に直面する。しかし、 これらを二元論で分断するのはやめておこうではないか。これらに明確な境界線はなく、グラデーションでつながっている。だから、相互作用している対極をバランスさせ、その都度、新しい道をひねり出す。それは単なる足し算や予定調和ではないし、中間でも折衷でもない。偶発性や異質性を取り込み、新たな知を創造する、開かれた動的変革プロセスである。これを、個人レベルではなく集合的に行うのが「二項動態経営」だ。
 われわれが提唱する二項動態とは、一見矛盾や相反する事柄を状況や目的に応じて、異質な両極端の特質を活かし、跳ぶ発想で新たな地平を見出すことを意味している。物事や問題を「あれかこれか」で捉える二項対立 (dichotomy)ではなく、「あれもこれも」の二項動態 (dynamic duality) 状況に応じて何をなすべきかを機動的に判断し、行動する「生き方」を指している。
 それは、異質なものとの出合いから新たな意味や価値を生成するイノベーションプロセスそのものだ。二項動態経営では、観念論で相手を倒すのではなく、暗黙知を源泉とする新たな知の創造、イノベーションを起こすことをめざしている。動いていく現実の只中で、状況に応じ、互いのせめぎ合い、妥協なき葛藤から、「こうとしか言えない」という「その都度の最善(より善い)」 を無限に追求し、試行錯誤しながらともに前進していく創造原理としての生き方である。
 現場・現実・現物にしっかりと立脚しながらも、遠くにめざす共通善からもフィードフォワードすることで、跳ぶ発想を生む可能性が大きくなる。過去の成功体験に過剰適応することなく、 現状にも安住しないことが組織の自己変革につながる。


ヒューマナイジング・ストラテジーとは



ここでわれわれは、ヒューマナイジング・ストラテジー(戦略の人間化、人間くさい戦略)を提示したい。ヒューマナイジング・ストラテジーは、「人間は、未来志向で意味を創造する主体である」 という人間観に支えられたものであり、動的プロセスを措定している。この点において、経済学をベースに静的な状況を仮定する論理分析型の戦略論とは異なる。
 ヒューマナイジング・ストラテジーは、次の3つで特徴づけられる。
①戦略とは、「思い」を持つ人間一人ひとりの生き方 (a way of life)を、相互主観性を媒介にして組織の客観へと昇華させ、新しい現実を共創するために集合的に意味づけ・価値づけを行うことである
②戦略とは、主観的な「幅のある現在」の時間軸において、文脈に応じて「いま・ここ」の判断を行い、変化の只中でより「善い目的(真・善・美)」を追求し、実践するオープンエンドの価値創造プロセスである
③戦略とは、「共通善」を掲げてその実現を志向する人間の「生き方」であり、未来創造の物語り(ナラティブ)によって表現される


 野中らは「野性の経営」(KADOKAWA)において、タイの組織的なソーシャルイノベーションの物語りから普遍的なスクリプトを読み取った。クリエイティブ・ルーティンとしての大きな特徴は、一見相反するような行動を偏ることなく、バランスをとりながら行っている、ということであった。実践知とは「あれかこれか (either/or)」の二項対立ではなく、「あれもこれも(both/and)」の「二項動態」的な思考や実践である。新たな価値を生む創造的な実践には、この二項動態が欠かせない。このクリエイティブ・ルーティンは、本書で取り上げた企業事例にも普遍的なものであり、再掲したい。
 これらの二項動態を可能にするクリエイティブ・ルーティンを同時に追求することは、非常に労力も時間もかかる難しいものばかりである。しかし、自己変革を達成するためには実践が不可欠なものばかりである。
・「共通善を追い求める」 & 「「いま・ここ」を歩き、感じる」
・「人々を信じ、衆知を活かす」&「対話し、覚悟を問う」
・「言葉に魂を込める」&「ともに汗を流す」
・「壮大な物語りを描く」&「小さくても、すぐに成果を出す」
・「大胆に挑戦する」&「細部にこだわる」
・「誰(何)にでも共感する(二人称)」&「生きる意味を見出す(一人称)」&「人々を巻き込み、スクラムを組む(三人称)」

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2025年04月19日

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