あらすじ
【新しい「日本的経営」を創造する】
経営は日々、選択を迫られている。しかし、つい安易に妥協して選択しやすいほうを選んだり、それぞれの選択肢の意味するところを十分に吟味せずに思考停止したりしていないだろうか。経営活動において直面するさまざまな矛盾やジレンマを「あれかこれか」の二項対立で切り抜けるのではなく、苦しくても「あれもこれも」の二項動態を実践することこそが、過去の自己を超えていくただ一つの道なのだ。過去の成功体験に過剰適応することなく、現状にも安住しないことで自己変革につなげ、機動力を持って自己変革し続ける組織は、二項動態経営を行っているのである。本書は、バンダイナムコ、エーザイ、ユニ・チャームなどの事例にもとづいて二項動態経営のメカニズムを解明する、新しいコンセプトの経営哲学書。
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Posted by ブクログ
一言要約:「日本企業や日本人が本来持っていた“人間らしい力強さ”や“現場感”、そして“対立や矛盾を統合し新しい価値を生み出す二項動態”」、これは必殺技でも飛び道具でもなく、地道で泥臭い知的コンバットによって築き上げるものだ
序章
日本企業で働く我々は、JTCの三種の神器「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」の本質要素への回帰が必要である。終身雇用の原文「lifetime commitment」に納得。また、日本の強みはむしろ「つくる力」より「読む力」にあったと考える。VUCAな時代でも、市場変化に応じて最適化し投入する「読み」が日本のものづくりの本質的強さだった。二項動態は一発逆転の技ではなく、地道な合わせ技であり、外部ツールや横文字に頼り失敗した日本企業への警鐘でもある。
1章
経営と哲学の動態は暗黙知と形式知の動態であり、SECIモデルはイノベーション活動そのもの。起点が重要で、現場感が不可欠である。SECIモデルの起点となる「共感」はデジタル時代にこそ人が大切にすべき領域。二項動態は西洋哲学の二元論よりも東洋思想の陰陽的側面が強い。三現主義や現象学的な「いま・ここ」への注目、対立を否定せず解消へ向かう姿勢が重要であり、経営というより「生き方」としての態度が求められる。
2章
二項動態は対立を統合し新しい知を創造することであり、コンフォートゾーンを抜け、エコーチェンバーやフィルターバブルに気づく必要がある。競合との協働や対立の言語化、非言語的現場感覚と定量的数字の行き来、対話が鍵となる。属性やステレオタイプに頼らず、自らの価値を最大限に活かすことが重要。論理的な三段論法では新しい創造は生まれず、矛盾や相反を合一させる活動こそが二項動態である。
3章
人的資本経営では、測定可能なものに偏り「やり過ごし」が多い。ダイバーシティも数字化され、本質的な多様性が失われている。数字化や定量化は「心地悪さの排除」や「リスク低減」のためであり、これが行き過ぎると企業は活力を失う。測れないものに取り組まないことや、数字・管理重視から脱却し、真善美や信頼、価値創造の組織形成が人間本来の活動である。
終章
人間本来の力強さや生き残る力が行動の原動力となる。これを指針にし、行動を促し組織化し、制度化する順番が重要。制度先行では中身が伴わず意味がない。日本人や日本文化のアイデンティティに向き合うことが不可欠である。
Posted by ブクログ
著者は野中郁次郎氏、野間幹晴氏、川田弓子氏。
感想。難しい。
備忘録。
・二項動態経営とは、「あれかこれか」の二項対立ではなく、「あれもこれも」を追求する二項動態的な取組を通じて、葛藤を超えて、より善いを目指し、新たな価値創造への道を他者と共に切り拓くこと。
・対立項のどちらかを切り捨てる取り組みからは、新たな意味や価値は生まれてこない。両極端で相反するように見える二項は、相互補完的であり、実は地続きで繋がっている。
・究極の善を目指すことは現実的には無理(アリストテレス)。その都度の最善=より善いを目指す。状況や文脈に応じて適切な行動をとる、それが「実践知」である(これもアリストテレス)。
・日立のLumadaも。創業110年超の歴史で蓄積されてきた「いいものを作れば売れる」という文化を自己超越し、モノとコト、アナログとデジタルなど、二項動態で、組織の壁を超えて新しいソリューションを創造するプラットフォーム。変わり続けることが日立の本質だと。
・ダイキンのFUSION経営=短期の収益力と中長期の成長性の両立を目指す。
・SECIモデル。共同化、表出化、連結が、内面化の大きなサイクルと、暗黙知が形式知に変わっていくサイクルで、組織的知識創造が進むこと。
・現場の豊かな暗黙知を形式知にして、形式知が意味することを議論して、新しい何かを仮説だて、すぐに仮説を実行する。
・そのためには、忖度や妥協の許されない知的格闘(コンバット)が重要。
・稼ぐこと、利益とキャッシュフローを創出することによってはじめて、自社が課題解決へ向けた次なる知識創造に取り組むことができる。利益とキャッシュフローを創出せずに、企業価値を毀損し続けていると、知識創造プロセスについて株主から承認が得られないからである。知識創造は、利益を産むことによってはじめて価値になる(利益だけを差さず、顧客や社員や地域や社会にとっての共通善のこと)。