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「おやじ、死なないでくれ――、と私は念じた。彼のためではなく私のために。父親が死んだら、まちがいの集積であった私の過去がその色で決定してしまうような気がする」百歳を前にして老耄のはじまった元軍人の父親と、無頼の日々を過ごしてきた私との異様な親子関係を描いて、人生の凄味を感じさせる純文学遺作集。川端康成文学賞受賞の名作「百」ほかに三編を収録する。(解説・川村二郎)
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Posted by ブクログ
再読した『連笑』を含めて、自身の家族関係を扱った短編集。作品ごとにテーマは弟、自身の病等少しずつ変わるが、一番大きな背景は父親だろう。今なら「毒親」と呼ばれかねない際立った個性を持つ(しかも働かない)父親と、なぜか緊張しながらもこだわり続ける著者の不思議な親子の関係性が興味深い。特に老耄が極まり入退...続きを読む院に至った経緯が描かれる『永日』は感動的。
大好きな作家・色川武大の大好きな一冊。自身の卑屈な部分を非常に繊細で絶妙に表現している。同時に、とても純粋な人間性を持っていた方なんだというのも見てとれ、読後のくどさがない。親との確執、愛情、自己との葛藤、自嘲……。誰もが持つ泥臭さを、美しい文体で著した一冊。何度でも読み返したくなる。
退役軍人の父親との親子関係をつづった私小説短編集。 起きていることをあるがままに受け入れるということは 実は大変なこと。でも、この親も、この子(著者)も、それ が出来てしまう。出来てしまうと言うよりは、そうする ("身幅で生きる")ことしか知らないと言った方がいい の...続きを読むかもしれない。 逃げることなく、面と向かう。ただこれだけのことに凄み すら感じてしまう。 苦くてざらついた小説。読み応え十分。
私小説になるのだろう。 色川武大とその弟、母親、父親、その他親族との関わり合いや愛憎入り乱れた葛藤を描いている。 著者自身、ノーガードで自身のダメな部分や醜い部分を、あますところなく書いている。 自嘲気味、という訳ではなく、割とドライに、それでもあまり俯瞰しすぎずに、程よい距離感を保っ...続きを読むて書いている。 まさに色川武大その人そのものを読んでいる感覚に陥る。 読んでいる間はずっと、作者と共に喜び、悲しみ、途方に暮れ、自己を嫌悪する。 それにしても、なんて文章を書く人なのだろう。 決して独特な言い回しでも、強い個性がある訳でもないのに、一行一行が、単語の一つ一つがこれほどまでに心地よく流れ込んでくる作家も稀だ。 万人向けの作品ではないだろうし、もしかしたら排他的な印象を持つ人もいるかも知れない(思うに私小説って排他的な分野のように思える)。 その分、好きな人にとっては、つまり色川武大という作家に思い切り肩入れ出来る人にとっては、たまらない魅力を持った作品だと思う(決してエンターテインメント的な魅力とはいえないが)。 色川武大の人を見る目、人との付き合い方、人付き合いに対する彼なりの哲学、優しさとだらしなさ、自己に対する嫌悪と憐憫、それらすべてがとても愛おしく感じられる。 僕にとって本書はそんな作品だった。
色川氏の家族を綴った私小説。 弟との関係を描いた「連笑」、 幻視との奇妙な付き合いが恐ろしい「ぼくの猿 ぼくの猫」、 老耄の父親に振り回される家族を描いた「百」それに続く「永日」。 自分の家族と照らし合わせて読まずにはいられなかった。 どんなに逃げて離れたくても、ついてくる家族という因縁。 子供のこ...続きを読むろに抱いた劣等。 それでもなお、死なないでほしいという執着。 この世に生を受けた以上、逃れることのできない宿命が家族なのだと思い知らされた。 色川氏の底が知れない優しさに包まれて、絶望の色が薄まるようだ。 この作品に出会えて本当によかったと思う。
奇抜な起承転結でなく、淡々と綴られる生活の苦悩。 玉ねぎのように皮を剥いても芯のある人間のことは、何か欠けているものを探し続けているひとにしか理解できないのかもしれない。 執着と表現される人間関係を超えて、関わった人の人生に一貫して関わり合う死に物狂いの執念を感じる作品でした。
最後に収録されている『永日』という短編で語られる父親とその関わり、それを書くことで浮き上がってくる「私」、そこには全く同じでは無いけれど無視することは出来ないわたしの人生との共通点があった。感情移入というより、そこに投影し反射してくるわたしの今までの人生に居心地の悪さを感じた。自省...続きを読むもはじまった。少し狼狽えた。それでも読み進めずにはいられない素晴らしい文章に誘われて読み進めていけば、そこから繋がるようにわたしの人生にもあった「きわだった或る一日」とそこから伸び拡がってきた日々を思っていた。今も思っている。よく晴れていたあの「永い日が、どうにもこうにも、暮れてこない」。この短編小説も、未だ読み終われない。そんな気もしている。 『永日』の書き出し、そこにある文体とフローに心が踊った、ああ、好きだな、と思った。また別の大好きな小説が思い浮かんだ。読み進めていけば構造も近いものがある。ところどころでまたその小説を思い出すセンテンスにも出会った。読み終わってタイトルを改めてみると、なるほどそうか、と勝手な納得をしていた。『永日』と『長い一日』」。
主に退役軍人の父親との関係を描いた私小説4編。 父親との親子関係を契約ととらえた『永日』、父親とのズレた会話が印象的な『百』など、淡々としたなかにリアルかつ冷静冷淡な展開がなんともいえない。 本題とはズレるが、『連笑』の中の競輪に関する部分(32頁あたり)の解像度の高さはさすが。
色川武大 「 百 」 家族との関係を描いた私小説。 この本で描かれているのは *劣等意識を基礎とした 著者の人と違う生き方 *近すぎず遠すぎない家族関係、ただ在るだけの家族 *死を描いているようで 徹底した生を描いている 「小説は〜大きな道を歩いて造るもの〜お前は大きな道を歩いていない〜それじゃ...続きを読むピエロになるだけだ」 身の幅で生きる *身の内の自然に 出来るだけ沿いながら、得心し続ける *身の幅以外のものは 観念で、そういうものは信じない *内心を身の幅の中に入れて 自分の心にしている 自分の内心が あまりに個人的な尺度を持ちすぎて 他人に通じる言葉にできない 「僕の恐怖は 自分にこだわるわりには 自分を他人に主張する術がなくて 絶句して終わるしかないこと」 他人に管理されて生きる=一兵卒になる
―私は弟を貴重なものに思いだした。 軍人だった厳しい父親と影の薄い母親。 薄暗い家に弟が生まれ、少し大きくなると、 どこにでも付いてくるようになった。 充足というものの欠如。 父親の影響だけではないだろう、生まれながらに持ってきた屈託。 弟は著者のそういう部分を見てきた。 どうにもならない部分...続きを読むに対して、ふっと笑い合い言葉を交わす。 兄弟ってこういうものなのか。 そういう相手がいるということに、破天荒な生き方の著者に対して、全く関係のない自分の胸が、ほうっと温まる。 弟の結婚式で、もの思う著者の言葉が突き刺さる。 「おい、お前、こんな程度の晴れがましさを本気で受け入れちゃ駄目だそ。 烈しい喜びを得るつもりで生まれてきたことに変わりはないんだぞ。 式次第で生きるなよ。コースは一応もうできたんだから、あとはどうやってはみだしていくかだ。 とにかく、淋しく生きるなよ・・」
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