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Posted by ブクログ
私小説になるのだろう。
色川武大とその弟、母親、父親、その他親族との関わり合いや愛憎入り乱れた葛藤を描いている。
著者自身、ノーガードで自身のダメな部分や醜い部分を、あますところなく書いている。
自嘲気味、という訳ではなく、割とドライに、それでもあまり俯瞰しすぎずに、程よい距離感を保って書いている。
まさに色川武大その人そのものを読んでいる感覚に陥る。
読んでいる間はずっと、作者と共に喜び、悲しみ、途方に暮れ、自己を嫌悪する。
それにしても、なんて文章を書く人なのだろう。
決して独特な言い回しでも、強い個性がある訳でもないのに、一行一行が、単語の一つ一つがこれほどまでに心地よく流れ込んでくる作家も稀だ。
万人向けの作品ではないだろうし、もしかしたら排他的な印象を持つ人もいるかも知れない(思うに私小説って排他的な分野のように思える)。
その分、好きな人にとっては、つまり色川武大という作家に思い切り肩入れ出来る人にとっては、たまらない魅力を持った作品だと思う(決してエンターテインメント的な魅力とはいえないが)。
色川武大の人を見る目、人との付き合い方、人付き合いに対する彼なりの哲学、優しさとだらしなさ、自己に対する嫌悪と憐憫、それらすべてがとても愛おしく感じられる。
僕にとって本書はそんな作品だった。
Posted by ブクログ
色川氏の家族を綴った私小説。
弟との関係を描いた「連笑」、
幻視との奇妙な付き合いが恐ろしい「ぼくの猿 ぼくの猫」、
老耄の父親に振り回される家族を描いた「百」それに続く「永日」。
自分の家族と照らし合わせて読まずにはいられなかった。
どんなに逃げて離れたくても、ついてくる家族という因縁。
子供のころに抱いた劣等。
それでもなお、死なないでほしいという執着。
この世に生を受けた以上、逃れることのできない宿命が家族なのだと思い知らされた。
色川氏の底が知れない優しさに包まれて、絶望の色が薄まるようだ。
この作品に出会えて本当によかったと思う。
Posted by ブクログ
最後に収録されている『永日』という短編で語られる父親とその関わり、それを書くことで浮き上がってくる「私」、そこには全く同じでは無いけれど無視することは出来ないわたしの人生との共通点があった。感情移入というより、そこに投影し反射してくるわたしの今までの人生に居心地の悪さを感じた。自省もはじまった。少し狼狽えた。それでも読み進めずにはいられない素晴らしい文章に誘われて読み進めていけば、そこから繋がるようにわたしの人生にもあった「きわだった或る一日」とそこから伸び拡がってきた日々を思っていた。今も思っている。よく晴れていたあの「永い日が、どうにもこうにも、暮れてこない」。この短編小説も、未だ読み終われない。そんな気もしている。
『永日』の書き出し、そこにある文体とフローに心が踊った、ああ、好きだな、と思った。また別の大好きな小説が思い浮かんだ。読み進めていけば構造も近いものがある。ところどころでまたその小説を思い出すセンテンスにも出会った。読み終わってタイトルを改めてみると、なるほどそうか、と勝手な納得をしていた。『永日』と『長い一日』」。
Posted by ブクログ
色川武大 「 百 」 家族との関係を描いた私小説。
この本で描かれているのは
*劣等意識を基礎とした 著者の人と違う生き方
*近すぎず遠すぎない家族関係、ただ在るだけの家族
*死を描いているようで 徹底した生を描いている
「小説は〜大きな道を歩いて造るもの〜お前は大きな道を歩いていない〜それじゃピエロになるだけだ」
身の幅で生きる
*身の内の自然に 出来るだけ沿いながら、得心し続ける
*身の幅以外のものは 観念で、そういうものは信じない
*内心を身の幅の中に入れて 自分の心にしている
自分の内心が あまりに個人的な尺度を持ちすぎて 他人に通じる言葉にできない
「僕の恐怖は 自分にこだわるわりには 自分を他人に主張する術がなくて 絶句して終わるしかないこと」
他人に管理されて生きる=一兵卒になる
Posted by ブクログ
―私は弟を貴重なものに思いだした。
軍人だった厳しい父親と影の薄い母親。
薄暗い家に弟が生まれ、少し大きくなると、
どこにでも付いてくるようになった。
充足というものの欠如。
父親の影響だけではないだろう、生まれながらに持ってきた屈託。
弟は著者のそういう部分を見てきた。
どうにもならない部分に対して、ふっと笑い合い言葉を交わす。
兄弟ってこういうものなのか。
そういう相手がいるということに、破天荒な生き方の著者に対して、全く関係のない自分の胸が、ほうっと温まる。
弟の結婚式で、もの思う著者の言葉が突き刺さる。
「おい、お前、こんな程度の晴れがましさを本気で受け入れちゃ駄目だそ。
烈しい喜びを得るつもりで生まれてきたことに変わりはないんだぞ。
式次第で生きるなよ。コースは一応もうできたんだから、あとはどうやってはみだしていくかだ。
とにかく、淋しく生きるなよ・・」
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小説・文芸
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