村上和久の作品一覧
「村上和久」の「ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言」「太平洋の試練」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「村上和久」の「ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言」「太平洋の試練」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
イアン・トール著『太平洋の試練』は、太平洋戦争を主としてアメリカ側の視点から描いた大著である。三部作の第三部にあたる『レイテから終戦まで』は上下二分冊で、本書はその上巻。サイパン、グアムなどマリアナ諸島をアメリカに奪われ、日本の敗色が決定的となった時期から、終戦までの戦いを描いている。
上皇ご夫妻も慰霊の旅に訪れたパラオ・ペリリュー島での、日本軍による玉砕覚悟の激闘。日本本土攻撃への足がかりとして台湾攻略を目指すか、それともマッカーサーの悲願であるフィリピン奪還を優先するかをめぐる、アメリカ軍内部の激しい攻防。そして、日本の連合艦隊が最後に組織的な戦闘を行ったレイテ沖海戦と、神風特別攻撃隊による特攻作戦の始まり。
詳細な資料をもとに描かれるイアン・トールの戦場描写は圧巻である。
さらに本書の魅力は、人物描写の巧みさにもある。フランクリン・ルーズベルト大統領とマッカーサーの確執。アメリカ太平洋艦隊の指揮をめぐるスプルーアンスとハルゼーの激しいライバル関係。当時、同じ太平洋艦隊をスプルーアンスが率いると第五艦隊、ハルゼーが率いると第三艦隊と呼び分け、二人が交代で指揮を執る体制がとられていた。性格が正反対のこの二人の提督の対比が実に面白い。
そして、ハワイのオアフ島から全体を統括したアメリカ太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ。その冷静沈着な人間像も印象に残る。
特に興味深いのは、ルーズベルト大統領の「タヌキ親父」的なしたたかな政治的行動、マッカーサーの目立ちたがり屋な性格、そして従軍記者を巧みに利用してアメリカ国内での人気を高めようとする数々のスタンドプレーである。
一方、冷静沈着なスプルーアンス、面倒見がよく男気のある一方で、レイテでは大きな判断ミスを犯してしまうハルゼー。それぞれの人物が、イアン・トールの筆力によって実に生々しく描き出されている。
戦場で繰り広げられる激闘だけでなく、戦争を動かした人物たちの人間臭さまで楽しむことができ、長大な戦史でありながら、飽きることなく読み通すことのできる一冊である。
Posted by ブクログ
太平洋戦争をアメリカの視点から描く、大部の作品の二章目に当たるのが本作だ。上巻ではガダルカナル陥落までが描かれ、この下巻ではその後の太平洋の戦闘と、その最終的な帰結としてサイパン(グアム含む)での米軍勝利までが描かれる。
少なくともミッドウェーまでは天秤がどちらに傾くかがわからなかった太平洋戦争も、この下巻までくると最早アメリカの勝利は約束されたものとなった感覚を覚えるようになる。もちろん個々の戦闘では日本軍の奮闘もあり米軍の損害も大きなものになるが、全体としては国全体の生産能力が巨大となり兵站が安定した米軍は太平洋でははっきりと優位を示すようになる。
一方で日本軍は物資の補給、失った艦船や飛行機の補充、そして熟練した軍人といったあらゆるリソースが足りなくなってきており、戦いは悲惨なものになっていく。米軍の中でも陸軍と海軍の調整があったり、あるいは会議の中でも航空畑と艦隊畑の勢力があったりと事件はそれなりにあるのだが、戦いそのものは「思い通りにはいかなくても、期待以下ではない」といった状況で進んでいく。
この第2巻の終わりでは、サイパンが米軍の手に落ちたことで本土への空襲が近づいてくる。それは太平洋という戦場での戦いだけではなく、戦争中に新たにB-29という長距離爆撃機が開発されたように、国全体の争いの中で日本がはっきりと敗北しつつあることが明白になってくるということでもある。
また第二部上巻までは著者の筆も、日本とアメリカを等距離に描いていようと感じられるところもあったが、この下巻になると、日本の状況が理解を超えてきつつあるという雰囲気になってくる。それは未来からの視点だけではなく、たとえ当時の視点を採用したとしても、日本がはっきりと狂気へと落ち込んでいくのが見えるからだろう。
そして本書ではその責任の一端がどこにあったかも明確に記載されている。
Posted by ブクログ
太平洋戦争をアメリカの視点から描く、大部の作品の二章目いに当たるのが本作だ。第一章の最後でミッドウェー海戦により日本の劣勢は明確になった後、ガタルカナルからサイパンの陥落(日本側から見て)までが、この第二章で取り上げられる。
この上巻では、ガダルカナルの陥落直前までが描かれ、日本軍が南太平洋ではっきりと劣勢になるところで下巻へと繋がっていく。
すでに当時の出来事を歴史的な出来事として見ている自分のような人間からすると驚きだったのだが、この南太平洋の戦いというのも、決して当初はアメリカ軍にとって優勢ではなく、 彼らも様々な苦労をした結果として少しずつ少しずつと戦いを有利にしていったことがよくわかる。
また、陸軍と海軍の縄張り争いというのは日本側ではおなじみだったのだが、 アメリカ側でも似たような出来事が散々あったことも本書を読むとよくわかる。 まあ人間が作る組織なので、国が変わろうと揉めるところはあまり変わらないということだろう。
ただ、それでも少しずつ少しずつアメリカが優勢になっていくのは、 トップに近いところで思い切った人事があったり、あるいは生産力が圧倒的に違ったりということで、 そういったことをイアン・トールは重層的に描いていく。
そしてまた、この一巻では日本軍にとっては痛恨の出来事となった 山本勲の戦死も描かれている。無駄にヒロイックにしたかったわけではないだろうイアン・トールは、このところはさらりと書いているが、やはり総司令官が 死者中に戦死するというのはただ事ではない。
こういったことからも日本軍が劣勢にあることは明らかであり、 残りの3冊はよりアメリカ軍が優勢となって物事を進めつつも、 一方で裏側では色々な揉め事があったのだろうということを描いていくのだろうと思う。
Posted by ブクログ
アメリカ側の視点で見た太平洋戦争。 全6巻シリーズの5、6冊目の完結編。上巻はガダルカナル後からレイテ沖海戦まで、フィリピン戦も含む。 下巻はレイテ海戦後から沖縄戦、本土攻略、終戦までを描く。 上巻の前半はアメリカの政治的な話が多かったが、後半は日本の戦史本では読んだ事が無い様々なエピソードや出来事が詳細に考察されていて、大変面白かった。 日本側の戦史本では、米軍が物量と作戦で日本を圧倒したような記述が多いけれど、実は米軍も指揮官の判断ミスや失敗、予想外のことが起きていて、相当苦労しながら戦っていたらしい。 日本の陸海軍の仲が悪かったのと同様に、米軍も陸海軍の仲は良くなかった。 上級の指揮官のうち、誰が主導権を握るかで政治的な駆け引きがあったりして、日本軍と同じような状況だった。 レイテ海戦の栗田中将の謎の反転は有名な話だが、著者の考察には納得する部分が多かった。 つまり栗田中将のトラウマが原因であり、本当は特攻作戦だったが、現場は全く承知していなかったことなど。また日本の戦史本にはあまり出てこないフィリピン戦の状況も詳しく書かれている。下巻では台風でアメリカ艦隊に被害が出ていた話、台湾侵攻を中止した話、九州侵攻のオリンピック作戦や関東侵攻のコロネット作戦なども紹介されていた。 下巻のハイライトは、戦艦大和の沖縄特攻、沖縄戦と日本本土空襲、原爆までの話。政治的、大局的な話から沖縄戦、広島長崎の市民の声まで緻密に取材されていて、大変読み応えがあった。 日本と米国のそれぞれの視点で書かれた歴史を知ると、よりこの戦争が立体的に見えてくる。 戦争は、勝者敗者に分かれるのではなく、どちらも敗者になるのかもと思った。現在進行中のウクライナ戦争も勝者はいないだろう。
Posted by ブクログ
7月1日に白水社から発売された『米露諜報秘録1945-2020』を読んだ。
とにかく内容が濃い。
近現代史の知見が得られたのはもちろんのこと、民主主義にはらむ脆弱性についても気づかされた。
本書の主題は第二次大戦後の米ソ・米露関係である。
語り尽くされたテーマにも思えるが、諜報活動や外交についての膨大な量の機密解除文書にもとづいて書かれているため、歴史の舞台裏を垣間見ることができる。
前半は冷戦時代をあつかっている。
諜報の分野では帝政ロシア以来の歴史を持つソ連に対して、アメリカは素人だった。
アメリカは第二次大戦後にCIAを設立し、ソ連の政治戦に対抗していく。
コンゴ動乱やインドネシア9・30クーデター、ポーランドの民主化運動について、歴史の教科書で読んで知ってはいた。
しかし、諜報活動や外交の記録、関係者の証言を積み重ねることで、教科書からは伝わってこなかった立体的な構造が見えてくる。
後半は冷戦終結後についてである。
旧ソ連崩壊は民主主義の勝利だと思われたが、アメリカはそこで戦略を間違ってしまう。
それがロシアを刺激し、プーチンの反撃をまねくことになる。
クライマックスは2016年のアメリカ大統領選挙だ。
ロシアが大統領選にどのように介入したか、その影響力は本書を読むまで想像できないほどだった。
原著は2020年に発売されている。
アメリカ大統領選の結果が出る前であり、もちろんウクライナ戦争も起きてはいない。
しかしながら、本書を読むとトランプ前大統領による連邦議会議事堂の襲撃や、ウクライナ戦争は必然であると感じられる。
著者のティム・ワイナーは、国防総省とCIAの秘密予算にかんする調査報道でピュリッツァー賞を受賞したジャーナリストである。
日本でも『CIA秘録 その誕生から今日まで』などが出版されている。
膨大な機密解除文書から歴史を紐解いていく技量は素晴らしかったし、文章も巧みだった。
謝辞まで秀逸で、ここまで読ませる謝辞は初めて見た。
歴史や国際情勢に関心がある人だけでなく、民主主義や国家のあり方に興味がある人にもおすすめできる本である。