【感想・ネタバレ】米露諜報秘録 1945-2020:冷戦からプーチンの謀略までのレビュー

あらすじ

ウクライナ侵攻前史、米露75年間の覇権争い

諜報の分野では帝政時代以来の歴史を持つソ連・ロシアと、第二次大戦後にCIAを設立した諜報の素人の米国。ソ連は冷戦時代、東欧を支配し、その勢力を全世界に広げようとしていた。一方、米国はソ連を封じ込めるために、さまざまな諜報戦(政治戦)をくりひろげた。
冷戦に勝利した米国は、その後の戦略をあやまり、NATOをいたずらに拡大させたことで、ロシアは危機感を抱く。それをもっとも切実に感じていたのが、冷戦崩壊を現場で見ていたKGBのプーチンだった。彼は権力を握るや、ただちに反撃に出る。インターネットとソーシャルメディアを駆使した彼の政治戦は、前例のないものだった。米国はいつの間にか世論の分断で民主主義の危機にさらされ、民主主義のプロセスを無視するトランプに率いられることになった。しかも、トランプはロシアの影響下にあるという……。
ウクライナ戦争の前史、戦後75年間の諜報活動と外交の深層からサイバー攻撃の脅威まで、『CIA秘録』のピュリツァー賞受賞作家が機密解除文書を徹底検証! 国際情勢に関心がある読者のみならず、民主主義の未来を真剣に考える方々にもご一読いただきたい。

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Posted by ブクログ

7月1日に白水社から発売された『米露諜報秘録1945-2020』を読んだ。
とにかく内容が濃い。
近現代史の知見が得られたのはもちろんのこと、民主主義にはらむ脆弱性についても気づかされた。

本書の主題は第二次大戦後の米ソ・米露関係である。
語り尽くされたテーマにも思えるが、諜報活動や外交についての膨大な量の機密解除文書にもとづいて書かれているため、歴史の舞台裏を垣間見ることができる。

前半は冷戦時代をあつかっている。
諜報の分野では帝政ロシア以来の歴史を持つソ連に対して、アメリカは素人だった。
アメリカは第二次大戦後にCIAを設立し、ソ連の政治戦に対抗していく。
コンゴ動乱やインドネシア9・30クーデター、ポーランドの民主化運動について、歴史の教科書で読んで知ってはいた。
しかし、諜報活動や外交の記録、関係者の証言を積み重ねることで、教科書からは伝わってこなかった立体的な構造が見えてくる。

後半は冷戦終結後についてである。
旧ソ連崩壊は民主主義の勝利だと思われたが、アメリカはそこで戦略を間違ってしまう。
それがロシアを刺激し、プーチンの反撃をまねくことになる。
クライマックスは2016年のアメリカ大統領選挙だ。
ロシアが大統領選にどのように介入したか、その影響力は本書を読むまで想像できないほどだった。

原著は2020年に発売されている。
アメリカ大統領選の結果が出る前であり、もちろんウクライナ戦争も起きてはいない。
しかしながら、本書を読むとトランプ前大統領による連邦議会議事堂の襲撃や、ウクライナ戦争は必然であると感じられる。

著者のティム・ワイナーは、国防総省とCIAの秘密予算にかんする調査報道でピュリッツァー賞を受賞したジャーナリストである。
日本でも『CIA秘録 その誕生から今日まで』などが出版されている。
膨大な機密解除文書から歴史を紐解いていく技量は素晴らしかったし、文章も巧みだった。
謝辞まで秀逸で、ここまで読ませる謝辞は初めて見た。

歴史や国際情勢に関心がある人だけでなく、民主主義や国家のあり方に興味がある人にもおすすめできる本である。

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2022年08月03日

Posted by ブクログ

膨大な資料をもとに、第2次大戦後からロシアが米国を弱体化させターゲットの国を自陣営に取り込む為に行ったプロパガンダ、エスピオナージ、偽情報の流布等の政治戦(Political Warfare)の秘史が暴かれる。「現実とフィクションのあいだの境界線をぼやかし、メディア事業体と情報環境、政府、国民相互、そして民主主義への信頼をそこなう “blur the lines between reality and fiction, erode our trust in media entities and the information environment, in government, in each other, and in democracy itself.”」為に、徹底的なサイバー攻撃でターゲットのネット基盤を破壊し、フェイク情報の拡散で政治家、国民の真偽判断力を撹乱する。「政治戦は、国家目標を達成するための、戦争以外で国家が自由に使えるあらゆる手段の行使である」米国の元外交官で政治学者のケナン・ジョージの言葉を裏付けるように、チェキストのプーチンは手段を問わず権力維持の為に国内の敵は投獄、暗殺し、国外の敵を欺き、敵が彼等自身の利益に最大限反する行動に出るよう仕向け世界におけるその地位を弱体化させる。海外の内乱や政変の多くは、自由主義国家と社会主義国家の自国利益確保に利用されて来た。米国の大統領選でもまたプーチンは得意の政治戦により、トランプを復帰させNATOの弱体化、ウクライナへの支援中止を図るのだろうか。情報量に圧倒されながらも、政治戦の具体例に理解を助けられ、現代史を見直すことの出来る一冊でした。

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2024年06月02日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦終結から冷戦を経た現代に至るまでのアメリカのロシア政策あるいは無策を描く。確かにプーチンが大統領になってからのロシアは冷徹で戦略的な諜報活動によってその姿を保とうとして、それにある程度成功していたのかもしれない。特にトランプ当選に象徴されるSNSでの世論コントロールは改めて恐ろしいものだと思う。とはいえそこにはロシア独特の空虚な大義のなさが強く感じられる。確かにNATOの拡大は元々の話と違うものだ。しかしロシアはあまりにも都合の良い過去に自分自身が惑わされているように感じてならない。そもそも面積以外の面で本質的に大国であったことがないロシアが歴史のいたずらのようなナポレオンに対する勝利やヨーロッパの外縁だからこそ成功した革命、さらにヒトラーの狂気によって第二次世界大戦での戦勝国側に立った巡り合わせで冷戦の東側の名主になったことが亡霊のようにロシアにまとわりついているのではないか。そしてそれがロシアの人々の軛になってしまっているのではないか。その幻想を維持するマシーンの機能として政治戦(積極戦)やサイバー攻撃など手段だけが洗練されていくのが虚しい。先の見えないウクライナの情勢を見るにつけ、そう思ってしまう。

それにしてもこの本の翻訳は読みづらい。

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2022年12月14日

Posted by ブクログ

普段、自分が持っていない視点でまとめられていて、騒がれてるけど何が問題なのかピンときてなかったことが理解できた気がする。

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2023年04月27日

Posted by ブクログ

前半良かったんだけどな。
良かったと言うか、えげつない。
大国の、それも、一部の図が高い奴らの思惑でどれほどの人間が不幸になるのか。
米国もえげつないことをやっていたらしいのだが、露国に対すれば子供みたいなもんだなぁ。C国はどうなんだろう。
露国を刺激したことが今の情勢を招いているのは間違いないんだろうが、じゃあ、露国が安定する、つまり、露国の圧政が少なくとも、それをよしとしない一部の非圧政を認めることも許されるべきだったのか。

なんにせよ、世の中って絶望しかないのか。

後半。言いたいことはここかと思ったが、トランプがロシアの操りで、その思惑通り大統領になったと。
唾つけて読まないと無理だね。C国という要素が全く抜けているし、そもそもそう言うこと自体がプロパガンダの可能性も否定できない。
もう、何が何だかわかりませんな。hahaha。

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2022年12月14日

Posted by ブクログ

衝撃的な内容ばかり。CIAとアメリカの世界の軍隊という発想からの世界への過干渉。そしてプーチンのインテリジェンスのものすごさ。ただ作者のせいか、訳者のせいか読みにくい。覚悟して読みたい。

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2022年10月04日

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