村上和久のレビュー一覧

  • 太平洋の試練 レイテから終戦まで 上

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    イアン・トール著『太平洋の試練』は、太平洋戦争を主としてアメリカ側の視点から描いた大著である。三部作の第三部にあたる『レイテから終戦まで』は上下二分冊で、本書はその上巻。サイパン、グアムなどマリアナ諸島をアメリカに奪われ、日本の敗色が決定的となった時期から、終戦までの戦いを描いている。
    上皇ご夫妻も慰霊の旅に訪れたパラオ・ペリリュー島での、日本軍による玉砕覚悟の激闘。日本本土攻撃への足がかりとして台湾攻略を目指すか、それともマッカーサーの悲願であるフィリピン奪還を優先するかをめぐる、アメリカ軍内部の激しい攻防。そして、日本の連合艦隊が最後に組織的な戦闘を行ったレイテ沖海戦と、神風特別攻撃隊による特攻作戦の始まり。
    詳細な資料をもとに描かれるイアン・トールの戦場描写は圧巻である。
    さらに本書の魅力は、人物描写の巧みさにもある。フランクリン・ルーズベルト大統領とマッカーサーの確執。アメリカ太平洋艦隊の指揮をめぐるスプルーアンスとハルゼーの激しいライバル関係。当時、同じ太平洋艦隊をスプルーアンスが率いると第五艦隊、ハルゼーが率いると第三艦隊と呼び分け、二人が交代で指揮を執る体制がとられていた。性格が正反対のこの二人の提督の対比が実に面白い。
    そして、ハワイのオアフ島から全体を統括したアメリカ太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ。その冷静沈着な人間像も印象に残る。
    特に興味深いのは、ルーズベルト大統領の「タヌキ親父」的なしたたかな政治的行動、マッカーサーの目立ちたがり屋な性格、そして従軍記者を巧みに利用してアメリカ国内での人気を高めようとする数々のスタンドプレーである。
    一方、冷静沈着なスプルーアンス、面倒見がよく男気のある一方で、レイテでは大きな判断ミスを犯してしまうハルゼー。それぞれの人物が、イアン・トールの筆力によって実に生々しく描き出されている。
    戦場で繰り広げられる激闘だけでなく、戦争を動かした人物たちの人間臭さまで楽しむことができ、長大な戦史でありながら、飽きることなく読み通すことのできる一冊である。

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    2026年07月30日
  • 太平洋の試練 下 ガダルカナルからサイパン陥落まで

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    ネタバレ

    太平洋戦争をアメリカの視点から描く、大部の作品の二章目に当たるのが本作だ。上巻ではガダルカナル陥落までが描かれ、この下巻ではその後の太平洋の戦闘と、その最終的な帰結としてサイパン(グアム含む)での米軍勝利までが描かれる。

    少なくともミッドウェーまでは天秤がどちらに傾くかがわからなかった太平洋戦争も、この下巻までくると最早アメリカの勝利は約束されたものとなった感覚を覚えるようになる。もちろん個々の戦闘では日本軍の奮闘もあり米軍の損害も大きなものになるが、全体としては国全体の生産能力が巨大となり兵站が安定した米軍は太平洋でははっきりと優位を示すようになる。

    一方で日本軍は物資の補給、失った艦船や飛行機の補充、そして熟練した軍人といったあらゆるリソースが足りなくなってきており、戦いは悲惨なものになっていく。米軍の中でも陸軍と海軍の調整があったり、あるいは会議の中でも航空畑と艦隊畑の勢力があったりと事件はそれなりにあるのだが、戦いそのものは「思い通りにはいかなくても、期待以下ではない」といった状況で進んでいく。

    この第2巻の終わりでは、サイパンが米軍の手に落ちたことで本土への空襲が近づいてくる。それは太平洋という戦場での戦いだけではなく、戦争中に新たにB-29という長距離爆撃機が開発されたように、国全体の争いの中で日本がはっきりと敗北しつつあることが明白になってくるということでもある。

    また第二部上巻までは著者の筆も、日本とアメリカを等距離に描いていようと感じられるところもあったが、この下巻になると、日本の状況が理解を超えてきつつあるという雰囲気になってくる。それは未来からの視点だけではなく、たとえ当時の視点を採用したとしても、日本がはっきりと狂気へと落ち込んでいくのが見えるからだろう。
    そして本書ではその責任の一端がどこにあったかも明確に記載されている。

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    2026年01月12日
  • 太平洋の試練 上 ガダルカナルからサイパン陥落まで

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    太平洋戦争をアメリカの視点から描く、大部の作品の二章目いに当たるのが本作だ。第一章の最後でミッドウェー海戦により日本の劣勢は明確になった後、ガタルカナルからサイパンの陥落(日本側から見て)までが、この第二章で取り上げられる。

    この上巻では、ガダルカナルの陥落直前までが描かれ、日本軍が南太平洋ではっきりと劣勢になるところで下巻へと繋がっていく。
    すでに当時の出来事を歴史的な出来事として見ている自分のような人間からすると驚きだったのだが、この南太平洋の戦いというのも、決して当初はアメリカ軍にとって優勢ではなく、 彼らも様々な苦労をした結果として少しずつ少しずつと戦いを有利にしていったことがよくわかる。

    また、陸軍と海軍の縄張り争いというのは日本側ではおなじみだったのだが、 アメリカ側でも似たような出来事が散々あったことも本書を読むとよくわかる。 まあ人間が作る組織なので、国が変わろうと揉めるところはあまり変わらないということだろう。
    ただ、それでも少しずつ少しずつアメリカが優勢になっていくのは、 トップに近いところで思い切った人事があったり、あるいは生産力が圧倒的に違ったりということで、 そういったことをイアン・トールは重層的に描いていく。

    そしてまた、この一巻では日本軍にとっては痛恨の出来事となった 山本勲の戦死も描かれている。無駄にヒロイックにしたかったわけではないだろうイアン・トールは、このところはさらりと書いているが、やはり総司令官が 死者中に戦死するというのはただ事ではない。
    こういったことからも日本軍が劣勢にあることは明らかであり、 残りの3冊はよりアメリカ軍が優勢となって物事を進めつつも、 一方で裏側では色々な揉め事があったのだろうということを描いていくのだろうと思う。

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    2025年12月11日
  • 太平洋の試練 レイテから終戦まで 上

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    アメリカ側の視点で見た太平洋戦争。 全6巻シリーズの5、6冊目の完結編。上巻はガダルカナル後からレイテ沖海戦まで、フィリピン戦も含む。 下巻はレイテ海戦後から沖縄戦、本土攻略、終戦までを描く。 上巻の前半はアメリカの政治的な話が多かったが、後半は日本の戦史本では読んだ事が無い様々なエピソードや出来事が詳細に考察されていて、大変面白かった。 日本側の戦史本では、米軍が物量と作戦で日本を圧倒したような記述が多いけれど、実は米軍も指揮官の判断ミスや失敗、予想外のことが起きていて、相当苦労しながら戦っていたらしい。 日本の陸海軍の仲が悪かったのと同様に、米軍も陸海軍の仲は良くなかった。 上級の指揮官のうち、誰が主導権を握るかで政治的な駆け引きがあったりして、日本軍と同じような状況だった。 レイテ海戦の栗田中将の謎の反転は有名な話だが、著者の考察には納得する部分が多かった。 つまり栗田中将のトラウマが原因であり、本当は特攻作戦だったが、現場は全く承知していなかったことなど。また日本の戦史本にはあまり出てこないフィリピン戦の状況も詳しく書かれている。下巻では台風でアメリカ艦隊に被害が出ていた話、台湾侵攻を中止した話、九州侵攻のオリンピック作戦や関東侵攻のコロネット作戦なども紹介されていた。 下巻のハイライトは、戦艦大和の沖縄特攻、沖縄戦と日本本土空襲、原爆までの話。政治的、大局的な話から沖縄戦、広島長崎の市民の声まで緻密に取材されていて、大変読み応えがあった。 日本と米国のそれぞれの視点で書かれた歴史を知ると、よりこの戦争が立体的に見えてくる。 戦争は、勝者敗者に分かれるのではなく、どちらも敗者になるのかもと思った。現在進行中のウクライナ戦争も勝者はいないだろう。

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    2022年10月07日
  • 米露諜報秘録 1945-2020:冷戦からプーチンの謀略まで

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    7月1日に白水社から発売された『米露諜報秘録1945-2020』を読んだ。
    とにかく内容が濃い。
    近現代史の知見が得られたのはもちろんのこと、民主主義にはらむ脆弱性についても気づかされた。

    本書の主題は第二次大戦後の米ソ・米露関係である。
    語り尽くされたテーマにも思えるが、諜報活動や外交についての膨大な量の機密解除文書にもとづいて書かれているため、歴史の舞台裏を垣間見ることができる。

    前半は冷戦時代をあつかっている。
    諜報の分野では帝政ロシア以来の歴史を持つソ連に対して、アメリカは素人だった。
    アメリカは第二次大戦後にCIAを設立し、ソ連の政治戦に対抗していく。
    コンゴ動乱やインドネシア9・30クーデター、ポーランドの民主化運動について、歴史の教科書で読んで知ってはいた。
    しかし、諜報活動や外交の記録、関係者の証言を積み重ねることで、教科書からは伝わってこなかった立体的な構造が見えてくる。

    後半は冷戦終結後についてである。
    旧ソ連崩壊は民主主義の勝利だと思われたが、アメリカはそこで戦略を間違ってしまう。
    それがロシアを刺激し、プーチンの反撃をまねくことになる。
    クライマックスは2016年のアメリカ大統領選挙だ。
    ロシアが大統領選にどのように介入したか、その影響力は本書を読むまで想像できないほどだった。

    原著は2020年に発売されている。
    アメリカ大統領選の結果が出る前であり、もちろんウクライナ戦争も起きてはいない。
    しかしながら、本書を読むとトランプ前大統領による連邦議会議事堂の襲撃や、ウクライナ戦争は必然であると感じられる。

    著者のティム・ワイナーは、国防総省とCIAの秘密予算にかんする調査報道でピュリッツァー賞を受賞したジャーナリストである。
    日本でも『CIA秘録 その誕生から今日まで』などが出版されている。
    膨大な機密解除文書から歴史を紐解いていく技量は素晴らしかったし、文章も巧みだった。
    謝辞まで秀逸で、ここまで読ませる謝辞は初めて見た。

    歴史や国際情勢に関心がある人だけでなく、民主主義や国家のあり方に興味がある人にもおすすめできる本である。

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    2022年08月03日
  • 太平洋の試練 上 ガダルカナルからサイパン陥落まで

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    ガダルカナルと言えば日本軍が悲惨な敗北を喫したイメージしかなかったが、はじまった当初は米軍にとってもかなり際どい戦いであったと知った。日本側の戦力逐次投入が戦略ミスとして批判されたりするが、日本をそのように受け身の態勢に追い込んだ背後にも、現場の反対を押し切ってガダルカナル上陸のスケジュールを無理やり早めたキング提督の判断があったりするわけだ。上陸作戦は成功に終わるもののその後も空と海で一進一退の攻防が続き、一時は日本軍に島から追い出される心配までしていたとは意外なところ。また、日本軍の同島からの撤収は、完全に米軍を欺いた見事なものであったそうだ(撤収の実行以外はいいところがないのだが)。

    下巻にはいって中部太平洋の戦いでは、すでに勝負あったの感あり。それでもまったく攻勢の手を緩めないアメリカ。

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    2022年06月19日
  • 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上)

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    五十六のジレンマ、ニミッツの薫陶、チャーチルの決算、開戦直後のリーダー達、そしてこの苦難の時を過ごした市井の人々の姿がありありと描かれています。

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    2022年05月06日
  • 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(下)

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    ご存知の通り,太平洋戦争(日本人の立場からは大東亜戦争と言うべきかもしれませんが)初期の約半年間に限っては,日本は大きな勝利を重ねていました.前代未聞の「空母機動艦隊」というアイデアは,真珠湾の米国大戦艦群を火の海の叩き込み,栄光の大英帝国海軍を太平洋から駆逐.彼らはインド洋まで進出,敵国の根拠地を覆滅しながらの大航海をしました.しかしその機動艦隊の栄光も,ミッドウェイで深い深い海の底に葬り去られます…….本書はそんな「日本が勝っていた半年間,アメリカから見れば,「我々が負け犬だった」半年間の話です.

    日本海軍のミッドウェイにおける失敗,またそれを敷衍して,日本海軍の米海軍における根本的な戦略の失敗に関する,日本人の手による書は多く読みましたが,米国の立場から,個別の人物の日常にまで迫って書かれた書は初めて読みました.

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    2018年03月31日
  • 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(下)

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    こういう「戦争の展開」というのか、「指揮官の決断」というのか、正しく“戦い”に身を投じた人達の物語というのは、非常に重々しいのだが、色々と考えさせられることが多い…

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    2016年03月21日
  • 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上)

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    本作は所謂<太平洋戦争>、第二次大戦の日米両国海軍の戦いに光を当てた3部作の第1部である。米国のサンフランシスコ在住であるという史家による作品だ。

    本作では、日本側の“中心的人物”として山本提督を、米国側の中心的人物としてニミッツ提督を選んでいるが…主に米国側に関しては、他にニミッツの上役だったキング提督や、その他の人物に関する描写も厚い。そして、当時の米国指導者のルーズベルト大統領や、英国のチャーチル首相に関する挿話も多く取り上げている…

    本作は、公文書や先行研究、色々な人達の回顧録や証言、従軍記者が綴ったモノなど、相当に幅広い史料を意識しながら、「一連の流れ」として日米両海軍の戦いを雄弁に語る力作だ。「得るところ」が多い作品だ…

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    2016年03月21日
  • ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言(上)

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     当時、ウォーレン委員会の若手法律スタッフとして第一線で捜査資料を収集、検討していた人々も、50年という歳月を経て、自らの見聞や体験を冷静に振り返り、語れるようになったのがよくわかる。
     今日では FBI や CIA の捜査能力や情報収集が官僚主義的な自己保身と絡まりあって、かなり杜撰であったことが広く知られるようになっているので、この書にしばしば出てくる捜査資料の杜撰さに対するスタッフの憤懣にはさほど驚かないが、 FBI や CIA がまだ神話的な伝説に包まれていた時代に、その杜撰さに直面した当時の若手スタッフはさぞ驚いたであろうし、信じられない思いだっただろう。
     いろいろな陰謀を説くケネディ暗殺ものは多いが、つねにその批判の対象となったウォーレン委員会の調査の内幕を覗かせてくれた本書は、貴重な歴史の証言といえる。

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    2015年08月10日
  • 米露諜報秘録 1945-2020:冷戦からプーチンの謀略まで

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    著者は1988年、国防総省とCIAの秘密予算に関する調査報道でピュリツァー賞を受賞している。
    本書の「あとがき」は2020年3月の日付で終わっているが、その後トランプが2024年に再び権力の奪取に成功すると、民主主義の価値を貶め世界を分断と混乱に導いたのは周知の通り。スターリンが権力についてからのソ連・ロシアの国是とも言える「アメリカを転覆させ、その勢力を弱体化させて、その政治論議に悪影響をあたえる」を全力で取り組んでいるように思える。

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    2026年05月05日
  • 米露諜報秘録 1945-2020:冷戦からプーチンの謀略まで

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    膨大な資料をもとに、第2次大戦後からロシアが米国を弱体化させターゲットの国を自陣営に取り込む為に行ったプロパガンダ、エスピオナージ、偽情報の流布等の政治戦(Political Warfare)の秘史が暴かれる。「現実とフィクションのあいだの境界線をぼやかし、メディア事業体と情報環境、政府、国民相互、そして民主主義への信頼をそこなう “blur the lines between reality and fiction, erode our trust in media entities and the information environment, in government, in each other, and in democracy itself.”」為に、徹底的なサイバー攻撃でターゲットのネット基盤を破壊し、フェイク情報の拡散で政治家、国民の真偽判断力を撹乱する。「政治戦は、国家目標を達成するための、戦争以外で国家が自由に使えるあらゆる手段の行使である」米国の元外交官で政治学者のケナン・ジョージの言葉を裏付けるように、チェキストのプーチンは手段を問わず権力維持の為に国内の敵は投獄、暗殺し、国外の敵を欺き、敵が彼等自身の利益に最大限反する行動に出るよう仕向け世界におけるその地位を弱体化させる。海外の内乱や政変の多くは、自由主義国家と社会主義国家の自国利益確保に利用されて来た。米国の大統領選でもまたプーチンは得意の政治戦により、トランプを復帰させNATOの弱体化、ウクライナへの支援中止を図るのだろうか。情報量に圧倒されながらも、政治戦の具体例に理解を助けられ、現代史を見直すことの出来る一冊でした。

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    2024年06月02日
  • 米露諜報秘録 1945-2020:冷戦からプーチンの謀略まで

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    第二次世界大戦終結から冷戦を経た現代に至るまでのアメリカのロシア政策あるいは無策を描く。確かにプーチンが大統領になってからのロシアは冷徹で戦略的な諜報活動によってその姿を保とうとして、それにある程度成功していたのかもしれない。特にトランプ当選に象徴されるSNSでの世論コントロールは改めて恐ろしいものだと思う。とはいえそこにはロシア独特の空虚な大義のなさが強く感じられる。確かにNATOの拡大は元々の話と違うものだ。しかしロシアはあまりにも都合の良い過去に自分自身が惑わされているように感じてならない。そもそも面積以外の面で本質的に大国であったことがないロシアが歴史のいたずらのようなナポレオンに対する勝利やヨーロッパの外縁だからこそ成功した革命、さらにヒトラーの狂気によって第二次世界大戦での戦勝国側に立った巡り合わせで冷戦の東側の名主になったことが亡霊のようにロシアにまとわりついているのではないか。そしてそれがロシアの人々の軛になってしまっているのではないか。その幻想を維持するマシーンの機能として政治戦(積極戦)やサイバー攻撃など手段だけが洗練されていくのが虚しい。先の見えないウクライナの情勢を見るにつけ、そう思ってしまう。

    それにしてもこの本の翻訳は読みづらい。

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    2022年12月14日
  • 太平洋の試練 レイテから終戦まで 上

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    三部作の最後は硫黄島、沖縄戦と上陸作戦が描かれる。
    あらためてアメリカの物量と兵站能力に驚かされる。沖縄戦に参加した海軍の艦艇数は1500。そしてそれを支える燃料・弾薬と整備班。
    初めて知ったのは、沖縄戦では海兵よりも海軍の方が犠牲が大きかったってこと。それが特攻の結果だ。それと台風の被害も大きかったらしい。神風は吹いたわけだ。でも1500からすれば、てんでなんだけどね。
    日本軍の奮闘はアメリカにとっては、脅威だった。この結果から、本土上陸作戦前に原爆を使用することになる。軍の犠牲を考慮してだ。アメリカの合理性が怨めしい。

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    2022年06月01日
  • 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上)

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    メモ
    真珠湾攻撃時の各国体制

    日本
    東條英機首相
    山本五十六連合艦隊司令長官
    南雲中将 真珠湾攻撃指揮官

    アメリカ
    フランクリン・ローズヴェルト大統領
    フランク・ノックス海軍長官
    ハロルド・R・ベティ・スターク海軍大将
    ヘンリー・スティムソン陸軍長官
    コーデル・ハル国務長官
    ジョージ・C・マーシャル陸軍参謀総長

    ダグラス・マッカーサー極東軍司令官(フィリピン)
    リチャード・サザーランド参謀長

    キンメル太平洋艦隊司令長官(ハワイ)
    →真珠湾攻撃後解任。
    チェスター・ニミッツ提督着任

    アーネスト・J・キング大西洋艦隊司令長官(ニューポート)
    →真珠湾攻撃後、合衆国艦隊司令官
    →翌年3月スターク大将を追いやり海軍作戦部長兼務
    →アメリカ史上最大の権限を持つ提督へ

    イギリス
    ウィンストン・チャーチル首相
    サー・エドワード・グレイ外相

    トム・フィリップス提督
    →Z部隊:戦艦プリンスオブウェールズ、巡洋戦艦レパルス

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    2018年06月13日
  • ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言(下)

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    ケネディ大統領が暗殺されたダラスの悲劇。それは偶然の重なり
    が犯行を可能にした事件だったのか。

    上巻同様、下巻でもウォーレン委員会の若き調査員たちの奮闘
    が綿密に綴られている。

    FBIやCIA、シークレットサービス、ダラス警察から提出された資料を
    読み込み、実地検分をし、関係者の宣誓証言を取り、矛盾する点は
    ないか、見落としていることはないか。彼らは家族と共に過ごす時間
    を削ってまで委員会の為に働く。

    真相を見極めようをする彼ら調査員と対照的なのが委員たちである。
    委員長の最高裁首席判事ウォーレンはケネディ家を気遣うあまり、
    未亡人であるジャクリーンの宣誓証言を取る気はなかった。

    結局は自らジャクリーンの元に出向き、証言を取るのだが時間に
    してわずか9分の証言だ。

    上院議員であったフォードは委員会の為よりも、FBI長官であった
    フーヴァーが彼の組織に不利にならぬように働きかける。

    暗殺された大統領の弟であり、ケネディ政権の司法長官だった
    ロバート・ケネディは最後まで委員会の宣誓証言を拒み、兄の
    死に関することについては発言を控えている。

    誰もが疲れていた。そして、ウォーレンは早々に委員会を終わらせ
    たかった。そうしてまとめられた報告書は、最後の最後で委員たち
    の思惑を盛り込み、公開されると陰謀論者の格好の標的された。

    暗殺事件を調べ上げた若手法律家たちのバイタリティに感服する。
    小さなことにこだわり追跡をする法律家もいれば、委員たちの
    決定に不満を持つ法律家はウォーレンにさえ食って掛かる。

    本書は報告書が公開されたその後も追っている。CAIとFBIが
    委員会に隠していた事実が非常に興味深い。もしかすると
    容疑者とされたオズワルドは、犯行こそ単独であったものの
    裏には何かがあったのではないかと思わせる。

    ダラスの悲劇が起こる前にCIAとFBIがやるべきことをしていた
    のなら、ケネディ大統領の暗殺は防げたのかもしれない。そんな
    印象を持った。

    11月22日。あの悲劇から50年。そして、日本には遺児である
    キャロライン・ケネディ氏が駐日大使として着任した。

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    2017年08月19日
  • ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言(上)

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    1963年11月22日、アメリカ・テキサス州ダラス。第35代アメリカ
    大統領ジョン・フィッツジェラルド・ケネディがオープンカーでの
    パレードの最中に射殺された。

    現職大統領、しかもアメリカが大きな期待を寄せた新時代の
    大統領の暗殺はアメリカのみならず、世界に大きな衝撃を
    与えた。

    ケネディ亡きあと、副大統領から新大統領となったジョンソンに
    よって招集されたのがこの暗殺事件を検証する為のウォーレン
    委員会だ。

    連邦最高裁首席判事アール・ウォーレンを委員長に、後に大統領
    となるフォード、ピッグス湾事件で失脚した元CIA長官アレン・ダレス
    などの6人の委員によって構成された。

    実際に事件の調査にあたったのは当時の若き法律家たちだ。本書
    はその元調査員が著者へコンタクトしてきたことから、当時、委員会
    では何が行われていたかを綿密に追ったノンフィクションである。

    マフィアによる暗殺、外国勢力による暗殺、自国の情報機関による
    謀殺まで。ケネディ暗殺にまつわる陰謀論はさまざまある。

    そんな陰謀論がどうして生まれたのか。本書を読むと納得がいく。
    FBIは実行犯とされるオズワルドが要監視対象だったのに監視
    を怠ったことを隠ぺいする為に、早々にオズワルド単独犯説で
    報告書をまとめ事件を終わらせようとする。

    事件が発生した地元のダラス警察は、オズワルドの犯行の実地
    検分もせず、貴重な目撃者の証言も取っていない。

    そもそも、瀕死の大統領が運び込まれた病院で銃弾が飛び出した
    と思われる大統領の喉が気管切開されていたなんて。

    若き弁護士たちは犯罪学の専門家ではないけれど、ケネディ暗殺
    事件を調べるうちに徐々に解剖学や弾道学の専門知識を身に付け
    ていく。

    しかし、そのすべてが報われる訳ではない。様々な思惑が入り乱れ、
    思うような調査が出来ないことがまま起きる。

    さぁ、下巻も楽しみ~。

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    2017年08月19日
  • 太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで(上)

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    真珠湾攻撃前夜からミッドウェイ海戦までの「戦艦至上主義の思想背景」、「指導者層としての昭和天皇」、「血なまぐさい現場単位」など、日米両者の立場を偏りないバランスで、著述されている。

    1つの海戦だけ描く戦記物と異なり、強国アメリカを窮地に追い込んでいたというノンフィクションの本作は、新鮮で素晴らしい。

    欠点は、翻訳が非常に悪い。
    印象あるのは、戦闘機の事実上の名称ではなく、日本メーカー名+型式というのは、本当に分かりづらい。
    また、スラングのある会話も分かりづらい。理解不能であった。

    名著と断定できるのは、原書が素晴らしいため、アメリカの危機(対策)管理から、逆転に転じる史実を述べ、説得材料が豊富である。
    安っぽい「こうすれば日本は勝てた!」というエセシュミレーション小説への反論材料となろう。

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    2016年10月13日
  • ケネディ暗殺 ウォーレン委員会50年目の証言(下)

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    ケネディ暗殺の調査を行ったウォーレン委員会の内幕と調査員たちの行動を詳細に追いかけ、何が委員会に起きていたのか?を明らかにしている。
    特に当時のFBIとCIAの隠蔽策によって、それらの謎は永遠に解けなくなってしまった可能性が高いとしている。

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    2015年01月25日