あらすじ
実は米軍内も割れていた!
陸海軍と海兵隊の縄張り争い。ニミッツとマッカーサーの足の引っ張りあい。米国側から初めて描かれるミッドウェイ以降の日米戦。
【上巻目次】
序章 ソロモン諸島をとる
第一章 ガダルカナルへの反攻
第二章 第一次ソロモン海戦
第三章 三度の空母決戦
第四章 南太平洋で戦える米空母はホーネットのみ
第五章 六週間の膠着
第六章 新指揮官ハルゼーの巻き返しが始まった
第七章 山本五十六の死
第八章 ラバウルを迂回する
※この電子書籍は2016年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
太平洋戦争をアメリカの視点から描く、大部の作品の二章目いに当たるのが本作だ。第一章の最後でミッドウェー海戦により日本の劣勢は明確になった後、ガタルカナルからサイパンの陥落(日本側から見て)までが、この第二章で取り上げられる。
この上巻では、ガダルカナルの陥落直前までが描かれ、日本軍が南太平洋ではっきりと劣勢になるところで下巻へと繋がっていく。
すでに当時の出来事を歴史的な出来事として見ている自分のような人間からすると驚きだったのだが、この南太平洋の戦いというのも、決して当初はアメリカ軍にとって優勢ではなく、 彼らも様々な苦労をした結果として少しずつ少しずつと戦いを有利にしていったことがよくわかる。
また、陸軍と海軍の縄張り争いというのは日本側ではおなじみだったのだが、 アメリカ側でも似たような出来事が散々あったことも本書を読むとよくわかる。 まあ人間が作る組織なので、国が変わろうと揉めるところはあまり変わらないということだろう。
ただ、それでも少しずつ少しずつアメリカが優勢になっていくのは、 トップに近いところで思い切った人事があったり、あるいは生産力が圧倒的に違ったりということで、 そういったことをイアン・トールは重層的に描いていく。
そしてまた、この一巻では日本軍にとっては痛恨の出来事となった 山本勲の戦死も描かれている。無駄にヒロイックにしたかったわけではないだろうイアン・トールは、このところはさらりと書いているが、やはり総司令官が 死者中に戦死するというのはただ事ではない。
こういったことからも日本軍が劣勢にあることは明らかであり、 残りの3冊はよりアメリカ軍が優勢となって物事を進めつつも、 一方で裏側では色々な揉め事があったのだろうということを描いていくのだろうと思う。
Posted by ブクログ
ガダルカナルと言えば日本軍が悲惨な敗北を喫したイメージしかなかったが、はじまった当初は米軍にとってもかなり際どい戦いであったと知った。日本側の戦力逐次投入が戦略ミスとして批判されたりするが、日本をそのように受け身の態勢に追い込んだ背後にも、現場の反対を押し切ってガダルカナル上陸のスケジュールを無理やり早めたキング提督の判断があったりするわけだ。上陸作戦は成功に終わるもののその後も空と海で一進一退の攻防が続き、一時は日本軍に島から追い出される心配までしていたとは意外なところ。また、日本軍の同島からの撤収は、完全に米軍を欺いた見事なものであったそうだ(撤収の実行以外はいいところがないのだが)。
下巻にはいって中部太平洋の戦いでは、すでに勝負あったの感あり。それでもまったく攻勢の手を緩めないアメリカ。