昨今、「人と人のつながりが希薄になった」とよく言われる現代。
孤独死も特別な出来事として捉えていない人も多いだろうし、自分も社会問題化していることは知っていたのだが、実際に日本で年間3万人以上が孤独死している現実を知ると当然他人事ではない。
年齢、年代で区切ったデータなので統計では拾いきれない人たちの数も合わせるともっと数は膨大になるという。
元警官の人が死体を引き揚げる部分の描写はかなりリアルで、死を誰もが身近に捉えざるを得ない迫力がある。ノンフィクションで身を立てる作家の真剣味を感じた。
女性よりもコミュニティや友人を作るのが下手な人が多いのは男性なので、自分も気をつけないとつながり...続きを読む やコミュニティが薄くなってしまうんだろうと思う。外に関心を、つながりを新たに持ってそれを継続していくことも仕事と同じくらい立派な努力、活動なんだなとこの本を読んで思う。
孤独死している人は生前から、日常の中で部屋がゴミ屋敷化していたり食生活の乱れなどにより生活習慣病を患っていたり、様々な生活面でのハンデを抱えていることが多い。そのきっかけは、本書にも書かれているがほんの些細な出来事が引き金となっていることがある。または、職場での男女関係の問題で結婚を諦めないといけなくなったことでストレスにより暴飲暴食、過食による肥満…。エリートコースに乗っていて仕事もプライベートも順調だったが、部下のミスへの対処による小さなボタンの掛け違いから上司のパワハラが始まり、そこから退職を余儀なくされたことで人生が180度変わってしまった男性の話…など。
それは活字で追うだけでもかなり胸に迫るものがあり、同情せずにはいられないほどのそれぞれの計り知れない"個人的事情"がある。
感じたのは、不器用で生き方があまり上手くない、人から都合よく利用される、自分の意志がなくいわゆるいい人である、などが孤独死につながる人の特徴として共通する点があること。
あくまで主観だが、現代社会では各々余裕がなく殺伐としている様相もあるため、どうしても自分の身は自分で守っていく強さは身につけなければいけない。特に東京のような大都会、都心部で生きていく者はそういった強さを今まで以上に求められている気がするのである。自戒ではないが、行政や国にもすべて頼れるほどの安心感は今後も望めないと考えているので、本書を読んでどうすれば充実したミドルライフを送りながら、コミュニティや人間関係も切らさずに魅力的な人生を送っていけるのか(それは自分の中に答えがあるはず)、改めて考えさせられた。
著者からは、この孤独死増加問題をより関心が低い人へ、理解が足りない人へ向けて目を向けさせるきっかけにしたいのだという思いを強く感じた。
細かく取材を重ねる中で、日本社会に対する危機感を非常に感じていることがひしひしと伝わった。特殊清掃の現場で死者たちの"声なき声"に向き合ってきたのも大きいのだろう。
孤立社会へ進む日本を食い止めたい。AIが発達して特殊清掃の仕事ももしかしたら不要になる日がくるかもしれないが、それでも著者はこの現実をひとりでも多くの人に伝えることで日本の退化を食い止めたいのだと私は受け取った。
その思いだけは忘れないように心と頭に留めておきたいと強く思う。