鳥山まことの作品一覧
「鳥山まこと」の「時の家」「アウトライン」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「鳥山まこと」の「時の家」「アウトライン」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
最初はあまりの読みづらさに断念しかけたけれど、頑張って読んでいたら、ある瞬間から突然すんなりと心に入ってくるようになった。こんな読書体験は初めて!
一つの家にそれぞれの時代で住んだ三人と、壊される直前のその家をデッサンする青年を、俯瞰的に捉えて描いた作品。終始俯瞰的に書かれていて、主人公たちも突然入れ替わっていくので最初は読みにくかったけれど、その仕組みを理解してからは一気に読めるようになった。
家に刻まれたたくさんの思い出と時間が、刹那的で寂しく、なのに愛おしさも感じさせる文体で書かれている。
作者が建築家というのもあって、家というのは建てられて住んで壊されるまでに、どれほど多くの人の思いや時間が積み重なってできあがったものなのか。でも形あるものはいつか失われ、その儚さがひしひしと伝わってきた。
とても静かで、人間の視点から少し離れたところから見つめる作品に感じた。
人が去ったあとに残るものを丁寧に拾い上げていて、読み終わったあと、自分の周りの何気ない場所が少し違って見えてくる、そんな素敵な一冊でした。
わたしの大好きな映画『A Ghost Story』に近いものを感じた。
Posted by ブクログ
家がかつてそこで暮らしていた人たちの
想いや出来事を慈しむように回想し、
別れを告げていく
そんな物語だった
死に逝く人の頭によぎる自分の来し方
走馬灯のように蘇る記憶
それと同じように
その家にかつて住んでいた人たちの姿や想念が
浮かんでは消えていく
空き家になったその家で
一人の青年が絵を描く
ダイニングの真ん中に立つ丸柱
漆喰の壁
洗面台のタイル
部屋中の取っ手
それはその家とそこに息づいていた人たちを悼む
静かな儀式のように思えた
私が昔住んでた家
小さな建物の
シルエット
部屋の間取り
家具の配置
空気感
明るいところ
暗かったところ
父や母の声
そこにいた私
覚えてる
もうなくなってしまったものだけれど
記憶には鮮やかに残ってる
永遠に残るものなんてないから
私はそれで十分
Posted by ブクログ
誰も住まなくなって汚れ、荒れてしまった家の前に青年は立っている。
家に侵入し、リビングに座り、見えるものをスケッチブックに描く。
家は住んだ人の記憶を刻んでいる。その記憶を少しでも残すために、青年は描く。
自分が子どもの時、この家を建てた建築家の藪さんが住んでいた。ここで彼にスケッチを教えてもらった。
次に住んだのは緑と飼い犬のマルタ。彼女はこの家で塾を開いた。
その次は圭さんと脩さん。夫婦だったと思うのだが…。何やら隙間の空いたような関係性。
それに、藪さんが家を建てる時の記憶。左官屋さんや大工さんと一緒に作業をしている。
それぞれのタイミングにそれぞれの生き方がある。
同じ家を見ていても、そこで感じた気持ちなんかはみんな違う。
それらをみんな記憶してきた家、その家の記憶を読者はなぞることができる。
傷跡一つから立ち上がってくる住人たちの生活感がとてもリアル。
青年は、家を丸ごとスケッチしていく。
真っ白な漆喰の壁とか。収納庫の中まで。
住人たちの様子は淡々としているが、その時その時を誠実に生きているだけで、家の歴史の一部になっていくのが、何ともいえず感傷的な気分になる。
古いアルバムをざっと見た感じ。
なんか胸が詰まるような、満たされたような、この感じは何と言えばいいのか?
自分が歴史の一部として、次の人に何かを伝えるという想像はむずがゆいけど満たされるような。
歴史になったよ、と担保してくれるのが家なのかなと思う。
最後、家は解体される。
現実には子ども時代の思い出がある場所はなくなったけど、青年はスケッチをして、忘れないように留めておいた。
なんだか、亡くなった人を見送るかのようだった。