鳥山まことの作品一覧

「鳥山まこと」の「時の家」「駅と旅」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

配信予定・最新刊

作品一覧

  • 時の家

    時の家

    小説・文芸

    3.9
    1巻2,090円 (税込)
    第174回芥川賞&第47回野間文芸新人賞受賞作! ここで暮らしていた人々の存在の証を、ただ、描きとめておきたい。 三田文學新人賞でデビューした注目の小説家が、傑出した完成度で紡いだあたらしい建築文学。 ********************** いしいしんじ氏&松永K三蔵氏、推薦! 「大切に建てられた一軒の家に、ひとの気配がやどる。流れる時のすきまから、あまたの声がもれだしてくる。いつかまた、この本のなかに帰ってこようと思った。」 ――いしいしんじ 「紐解かれていく「時の家」の記憶は、語られなかった想いに繋がる。物質(モノ)がこれほど繊細に語り得る小説を私は知らない。」 ――松永K三蔵 ********************** 青年は描く。その家の床を、柱を、天井を、タイルを、壁を、そこに刻まれた記憶を。 目を凝らせば無数の細部が浮かび、手をかざせば塗り重ねられた厚みが胸を突く。 幾層にも重なる存在の名残りを愛おしむように編み上げた、新鋭による飛躍作。 【装幀】水戸部 功
  • 駅と旅

    駅と旅

    小説・文芸

    3.3
    1巻850円 (税込)
    日々のなかで当たり前のように行き来する駅という場所は、なんでもない日も旅立ちの日も、変わらずそこで私たちを迎えてくれます。旅の始まりと終わりをいつも見届けてくれて、行く場所であり帰る場所となる、駅とは不思議な存在です。浜松、西宮、札幌、唐津、明洞、ポルト──六つの都市へ向かう列車で、あるいは辿り着いた先で、どのような景色が待っているでしょうか。新しい物語への切符は今、あなたの手のなかにあります。六人の作家、六つの駅が旅の非日常へと誘う、文庫オリジナル・アンソロジー。/【目次】砂村かいり「きみは湖」/朝倉宏景「そこに、私はいなかった。」/君嶋彼方「雪花の下」/松崎有理「東京駅、残すべし」/額賀澪「明洞発3時20分、僕は君に撃たれる」/鳥山まこと「辿る街の青い模様」

ユーザーレビュー

  • 時の家

    Posted by ブクログ

    すごく良かった。
    ゆったりとして、静かで、文章のトーンがいい。
    私の考えや感覚そのものみたいだった。

    建築家の藪さんが建てた自宅の一軒家。
    その家に住んだ藪さんと、藪さんの死後に住んだ緑さん、その後に住んだ圭さん。そして子供の頃藪さんの家に来ていた青年。
    4人の記憶が入り混じった物語。

    .

    若い頃この小説のような絵ばかり描いていた。
    人が去った跡、流れた時間、記憶。
    そういうのが全ての絵のテーマだった。

    0
    2026年09月24日
  • 時の家

    Posted by ブクログ

    家がかつてそこで暮らしていた人たちの
    想いや出来事を慈しむように回想し、
    別れを告げていく
    そんな物語だった

    死に逝く人の頭によぎる自分の来し方
    走馬灯のように蘇る記憶
    それと同じように
    その家にかつて住んでいた人たちの姿や想念が
    浮かんでは消えていく

    空き家になったその家で
    一人の青年が絵を描く

    ダイニングの真ん中に立つ丸柱
    漆喰の壁
    洗面台のタイル
    部屋中の取っ手

    それはその家とそこに息づいていた人たちを悼む
    静かな儀式のように思えた

    私が昔住んでた家
    小さな建物の
    シルエット
    部屋の間取り
    家具の配置
    空気感
    明るいところ
    暗かったところ
    父や母の声
    そこにいた私

    覚えてる

    もうなくなってしまったものだけれど
    記憶には鮮やかに残ってる

    永遠に残るものなんてないから
    私はそれで十分

    0
    2026年09月20日
  • 時の家

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    誰も住まなくなって汚れ、荒れてしまった家の前に青年は立っている。
    家に侵入し、リビングに座り、見えるものをスケッチブックに描く。
    家は住んだ人の記憶を刻んでいる。その記憶を少しでも残すために、青年は描く。

    自分が子どもの時、この家を建てた建築家の藪さんが住んでいた。ここで彼にスケッチを教えてもらった。
    次に住んだのは緑と飼い犬のマルタ。彼女はこの家で塾を開いた。
    その次は圭さんと脩さん。夫婦だったと思うのだが…。何やら隙間の空いたような関係性。
    それに、藪さんが家を建てる時の記憶。左官屋さんや大工さんと一緒に作業をしている。

    それぞれのタイミングにそれぞれの生き方がある。
    同じ家を見ていても、そこで感じた気持ちなんかはみんな違う。
    それらをみんな記憶してきた家、その家の記憶を読者はなぞることができる。
    傷跡一つから立ち上がってくる住人たちの生活感がとてもリアル。
    青年は、家を丸ごとスケッチしていく。
    真っ白な漆喰の壁とか。収納庫の中まで。

    住人たちの様子は淡々としているが、その時その時を誠実に生きているだけで、家の歴史の一部になっていくのが、何ともいえず感傷的な気分になる。
    古いアルバムをざっと見た感じ。
    なんか胸が詰まるような、満たされたような、この感じは何と言えばいいのか?
    自分が歴史の一部として、次の人に何かを伝えるという想像はむずがゆいけど満たされるような。
    歴史になったよ、と担保してくれるのが家なのかなと思う。

    最後、家は解体される。
    現実には子ども時代の思い出がある場所はなくなったけど、青年はスケッチをして、忘れないように留めておいた。
    なんだか、亡くなった人を見送るかのようだった。

    0
    2026年08月28日
  • 時の家

    Posted by ブクログ

     生活の基盤には家がある。家という媒体を通して、そこで人の縁が紡がれていく。家は記憶としてそれを残していく。誰かの記憶は、その人にとってかけがえのないものでも、他の誰かにとってはそうでもない。ただ、家はそんな全てを見続ける。
     死んでしまったことと、長く会えないことの違いはいったいどこにあるのだろう。ぽっかりとそこには穴が空いている。

    0
    2026年08月21日
  • 時の家

    Posted by ブクログ

    衝撃的。
    最近いい小説にたくさん出会っているけど、この小説ほど心の琴線に触れたものはない。
    超おすすめ。
    特に生きる意味とか考えちゃう30代40代の方!

    物語としての起伏がほとんどないうえに、最初に詳しすぎるやろ!というレベルの家の細かい描写から始まるのでとっつきにくい感じがするけど、がんばって読み進めてほしい。

    家の物語。
    空き家となり取り壊される家に、かつて縁があった青年が忍び込みスケッチをする。
    スケッチするたびに四十年前、三十年前、二十年前に住んだ人の記憶がテクストに流れこむ。

    青年は家に住んだ人々のことを知らない。
    住んだ人々もお互いのことを知らない。
    だけど家の記憶を通して、そこで生きた人々の生の痕跡は確かに他者に伝わっていく。

    「浮かび上がる彼らの思考は、思い出すたびに揺れては変化し、膨らんだり見失ったり、そのせいでずれて、浮かぶたびに違う景色、一度も思い出さなかった時間や感情や言葉や表情が映る。」

    「彼らはここでただ暮らしていただけだった。時間の中で壁や柱や梁に触れていただけだった。染み付いた熱や湿気を追って、暮らしていた彼らの思い出すことを思い出していただけだった。ここにいた誰かの記憶をずっと思い出していた。」

    人は生きる。
    誰かと出会う。そして別れる。いつか必ず死んでしまう。それなら、
    生きる意味とはなんだろう?
    人生の価値とはなんだろう??

    この小説はその疑問に答えを与えてくれるものだと思う。
    たとえ二度と会えなくなっても、たとえ亡くなってしまっても、たとえ一度も会ったことがなくても、誰かの記憶の中で、人が生きたことは残っていく。

    生きることの美しさも悲しさも、全部この小説には詰まっていると、そう感じられる傑作だと思います。

    作者の鳥山まことさん、これが初の単行本なんだ。
    僕とほぼ同年代だけど、人の生の根源に触れる小説を書けるとは、正直信じられないくらいの衝撃。

    これからどんな作品を紡いでいくのか、本当に楽しみな作家さんです。

    0
    2026年08月04日

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