イタリア人女子が語る日本の古典文学の魅力。妄想力全開のところは万国共通。
本当にイタリア人女子が書いたのか、ゴーストライターがいるのでは、勘ぐってしまうほど自然な日本語かつ日本の古典文学に関する深い知識の内容の本。
「和泉式部日記」「更級日記」「古今和歌集」「蜻蛉日記」「伊勢物語」「とはずがたり
...続きを読む」「紫式部日記」「竹取物語」を現代的な視点から縦横無尽に語る。よくぞここまで日本の古典を愛し読み込んでくれたものだと思う。
平安女子、現代とは生活習慣や文化は当然異なるが感情は現代の日本人そしてイタリア人でも変わらない。
作者なキャラクタの直球勝負の解釈が心地よい。
和泉式部=平安京を騒がせたプロ愛人
菅原孝標女=ヲタク気質な妄想乙女
清少納言=女であることを誇れ!カリスマ姐さん
など。
最終章はイタリアの超奥手こじらせ男子ダンテと平安女子の比較。イタリアの高校生はダンテの「神曲」を全文読まされるそうだ。奥手なダンテ、イタリア人の恋愛観の真っ直ぐさと平安人の歌を通じた恋の駆け引きの比較文化論が面白い。
筆者は言う。
「古典は使い古した教科書にしか存在しない死んだ言葉だと思われることが多いが、その古びた単語は一瞬にして蘇り、詠まれた時と同じ、否、それ以上の生命力を持って輝き続けている。現代の日本人はみんなその華やか世界を簡単に覗けるというのだからなんて贅沢なのだろう。」
ハードルの高そうな古典文学。実は身近であり時に生々しい内容。そんな魅力をあらためて教えてくれる屈指の作品でした。続編を期待。
「東洋経済オンライン」連載のコラムをまとめた一冊。