作品一覧

  • わたしに無害なひと

    わたしに無害なひと

    小説・文芸

    4.2
    1巻1,760円 (税込)
    2018年〈小説家50人が選ぶ“今年の小説”〉に選出、第51回韓国日報文学賞受賞作! 十六の夏に出会ったイギョンとスイ。 はじまりは小さなアクシデントからだった。 ふたりで過ごす時間のすべてが幸せだった。 でも、そう言葉にすると上辺だけ取り繕った噓のように……。 (「あの夏」) 二度と会えなくなった友人、傷つき傷つけた恋人との別れ、 弱きものにむけられた暴力……。 誰も傷つけたりしないと信じていた。 苦痛を与える人になりたくなかった。 ……だけど、あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。 あのとき言葉にできなかった想いがさまざまにあふれ出る。 もし時間を戻せるなら、あの瞬間に……。 韓国文学の〈新しい魅力〉チェ・ウニョン、待望の最新短編集。 第8回若い作家賞受賞作「あの夏」を含む、珠玉の7作品を収録。 【目次】 ・日本の読者のみなさんへ ・あの夏 ・六〇一、六〇二 ・過ぎゆく夜 ・砂の家 ・告白 ・差しのべる手 ・アーチディにて ・あとがき ・訳者あとがき
  • 明るい夜

    明るい夜

    小説・文芸

    4.1
    1巻2,420円 (税込)
    〈大きな悲しみが、私を守ってくれる〉 『ショウコの微笑』<a href= https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=949" >『わたしに無害なひと』</a>の気鋭のベストセラー作家、初の長編小説 ---------------------- 夫の不倫で結婚生活に終止符を打ち、ソウルでの暮らしを清算した私は、九歳の夏休みに祖母と楽しい日々を過ごした思い出の地ヒリョンに向かう。 絶縁状態にあった祖母と二十二年ぶりに思いがけなく再会を果たすと、それまで知ることのなかった家族の歴史が明らかになる……。 家父長制に翻弄されながらも植民地支配や戦争という動乱の時代を生き抜いた曾祖母や祖母、そして母、私へとつながる、温かく強靱な女性たちの百年の物語。 ---------------------- 日が昇る前に大切なあの人に伝えておきたいことがあった。 明るくなったら、言えなくなりそうだから……。 2021年〈書店員が選ぶ“今年の小説”〉、第29回大山文学賞受賞。 ---------------------- 【目次】 ■明るい夜 ■あとがき ■日本の読者の皆さんへ ■訳者あとがき ---------------------- 「ものがたりを読む」ことの楽しさや喜びをお届けする新シリーズ〈ものがたりはやさし〉第1弾。
  • ほんのかすかな光でも

    ほんのかすかな光でも

    小説・文芸

    3.8
    1巻2,134円 (税込)
    『ショウコの微笑』『わたしに無害なひと』などで人気を博し、数々の賞を受賞してきた実力派作家の最新短編集! 手をのばし、すれ違う、 二人に差しこむひとすじの光。 人間関係の感情の機微を卓抜した力で描くチェ・ウニョン。 〈書くこと〉を使命とする強い意志。問い直される女性への差別。 【収録作】 大学で研究者を目指す私と女性講師を描く、表題作/基地村での女性殺害問題と校内誌編集部を描く、「役割」/雇用形態の異なる二人の車中での会話を描いた、「一年」/DV問題を扱った、「返信」/「夫と妻と子ども」という「一般家族」を超えた繋がりを描く、「種まき」「伯母さんへ」「消える、消えない」 2018年から2023年までに書かれた中短編全7編。
  • はちどり 1994年、閉ざされることのない記憶の記録
    完結

    はちどり 1994年、閉ざされることのない記憶の記録

    小説・文芸

    -
    全1巻2,420円 (税込)
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 世界を席巻した韓国映画『はちどり』にまつわる書籍が待望の邦訳刊行! 「世界は不思議で美しい」 映画『はちどり』はどのようにして生まれ、なぜ世界中の人々の心を魅了したのか。 思春期のうつろう心、家族との葛藤、変わりゆく社会、ジェンダー…。 1994年の韓国から現在地までを紐づける、 微細に紡がれた記憶の記録集。 <ノーカット版の完全版シナリオ> 韓国語訳者の第一人者によって翻訳された、 映画未収録シーンを含んだ完全版シナリオを全文公開。 <映画から社会を見つめる4つの寄稿> 日本でも注目を浴びる韓国の作家・チェ・ウニョン、キム・ウォニョンなど、 豪華な執筆陣によって綴られた、映画を介して社会をみつめる珠玉の寄稿集。 —わたしたちの個性をありのまま認めてもらえていたならば、大人になってからの人生はどれほど変わっていただろうか。 チェ・ウニョン —肉体は死んでも声は生きている。思いもよらぬ事件で命を失った存在から、人生の豊かさを語る音声が流れる。 ナム・ダウン —社会全体が生存と地位の上昇をめぐって競い合う韓国社会において、その秩序に忠実に従おうとする人々には不安という情緒が根幹にある。 キム・ウォニョン —いまの時代の愛というものは、その相手がペットであれ、伴侶であれ、友達であれ、愛する相手より、愛の主体が“愛する”自分を愛するだけである。 チョン・ヒジン <絶え間なき作家同士の対談> 2日間にわたり、女性、ストーリー、創作について語り合った、キム・ボラ監督とアリソン・ベクダル。 対話を重ねるほどに共振する、その作家性。 <日本特別企画・キム・ボラ監督インタビュー> 映画の公開から4年の時を経たキム・ボラ監督に、いま・ここでの話を聞いた。 撮影時の貴重な秘話やスチール写真を交えて語られた、邦訳版オリジナルのロングインタビュー。 —— 目次 1.|作家のことば 2.|シナリオ 3.|あの頃のウニたちへ/チェ・ ウニョン 4.|ヨンジ、わたしたちが失ってしまった顔/ナム・ダウン 5.|崩壊する夢のなかで誰かと出会い、別れるということ/キム・ウォニョン 6.|いま、ここの前日譚『はちどり』/チョン・ヒジン 7.|女性、ストーリー、創作について/キム・ボラ+アリソン・ベクダル 8.|特別インタビュー『はちどり』から4年の時を経て 9.|感謝のことば 10.|日本版に寄せて

ユーザーレビュー

  • ほんのかすかな光でも

    Posted by ブクログ

    女性どうしの関係を扱った短編が多い。いずれも、近づいては、離れていく。共通点を見出したと思ったのに、ふとした事で、違いに気づく。かといって、断ち切った関係にはならず、どこかで相手の事を覚えている。そんな曖昧な関係が多く登場する。

    『ほんのかすかな光でも』
    ヒウォンは、社会人編入で大学に入った。英文でエッセイを書く講座を担当する女性と、ひょんな事から親しく話をするようになる。ところが、ある一言で二人の間に隙間風が。

     社会の中で、まだまだ女性が軽んじられているのは、韓国も日本も変わりない。共闘して、それぞれの地場を固めていくのが理想だが、その理想を汲んだ、分かり合って終わり、という終わり方ではなく、分かり合えない所もあるが、それでも分かり合おうとする思いがある、という話。そのきっかけとなるのが、ヒウォンが求める光である。

    『役割』
    こちらも女性対女性の話。語り手があなた、と呼びかけるのは大学時代の友人ヘジン。彼女は大学の先輩ジョンユンを慕っていた。ジョンユンは校内誌の編集で、女性問題に鋭く切り込んでおり、ヘジンもそこに惹かれた。もう一人の学生ヒヨンも、ジョンユンを慕っており、次第にジョンユンはヘジンよりヒヨンに目をかけるようになる。ところがジョンユンとヒヨンの間もまた、疎遠に。

     女性と女性同士ならばよくても、そこに男性が割って入ると関係性が変わる。関係を断ち切っても残る相手への切ない思いが心に沁みる。著者の自伝的作品というから、ヘジン=著者なのか。それとも、本編の語り手で、全く行動が見えない、名前のない人物=著者なのか。

    『一年』
    私は、病院で、かつて同じ会社でインターンとして働いていたダヘと再会する。正社員の私のアシスタントとしてダヘと接するうち、同い年でもあり、プライベートを知る機会も増えて、互いに親近感を持つ。ところが、ある時、私はダヘが「無理をしている」と感じるようになり、ダヘは私のある言動に傷つく。

     うまくいくように見えた関係でも、思いがけないきっかけで、相手への見方が変わる。修復の道筋が見えればいいが、こじれていく一方ならば、それぞれに諦めるしかない。全てをありのまま語るだけが解決の道ではない。


    『返信』
    『役割』同様、語り手の語り掛け形式。
    「あなたは今、どんな暮らしをしているのかな(p110)」
    という言葉から、届くはずのないメッセージだとわかる。母が出ていき、父は子供に関心はなく、大叔母の元で姉妹は育つ。優秀だった姉は銀行員を目指していたが、高校時代の恋愛により結婚、主婦となる。しかし夫となった男性は支配的で、語り手は不満を抱く。

     語り手に向かって言っていることは、全てもう一人の女性に対する話だった。しかしその女性とは絶対に分かり合えないだろうということも、語り手はうっすら感じている。相手をわかり過ぎているからこその切なさが伝わる。

    『種まき』
    「私たち」から始まる本篇も、やはり女性どうしの話。今度は親子関係。娘ソリが疲れていることを、教師から知らされたミンジュは、かつて自分を救ってくれた兄を思い出す。これは珍しく、登場人物どうしがお互いを理解して終わる話。

    『伯母さんへ』『消える、消えない』も女性同士の微妙な関係を描いた話。

    0
    2026年08月26日
  • ほんのかすかな光でも

    Posted by ブクログ

    社会問題、特に韓国女性が人生の中で直面することになる問題を話に組み込み、結末としては作者があとがきに言うように諦めを伴ったものもあるが一部ではシスターフッド的連帯を描いており、話の流れとしても不自然でなく、日本(人女性)でもほぼ同様の問題を抱えているため共感を覚えながら読んだ。本書は背景にフェミニズムの思想があり大層力強い作品で素晴らしい。しかしながら同様の問題を抱える日本国内でこのような作品を描ける作家がどれほどいるだろうかと考えると虚しさを覚える。日本人女性も韓国女性のような自律性と力強さを身につけるべきであろう。

    0
    2026年02月15日
  • 明るい夜

    Posted by ブクログ

     9歳の時に初めてヒリョンの祖母の家に行ったジヨン。初めて出会った祖母が自分を受け入れてくれていると感じたジヨンはすぐになつく。そして再びヒリョンに向かったのは夫の浮気で離婚を決めソウルを離れた31歳の時だった。ヒリョンに引っ越して2か月経った時に、母が訪ねてきた。母は祖母と疎遠だった。母親の人生を見ていて納得できなかったジヨンは「キム君(元夫)はやさしい」という母の助言にも素直に頷けない。

     白丁という身分だった曾祖母ジョンソンと良家の夫パク・ヒスは、駆け落ち同然に家を飛び出した事から近所の人に噂される。娘ヨンオクはその事を母親に話さず、ある日結婚相手を連れてくる。ジョンソンは「あの男はお前の父さんに似ている」からと反対するが最後には
    娘が結婚して正常な家族を持つという事実に満足しようと気持ちを切り換えた


     ところが結婚相手ナムソンは北に家族がおり、ヨンオクは娘ミソンを育てる代わりに夫の戸籍に入れることを余儀なくされる。ミソンもまたいびつな家庭環境から抜けるために結婚に逃げる。ところが、三兄弟の嫡孫と結婚したため、旧盆や旧正月にも実家に帰れない。『82年生まれ、キム・ジヨン』 で描かれる、あの忙しい嫁の立場である。不自由な環境から抜け出すためミソンは娘ジヨンに期待をかけるが、その期待がジヨンには重く、彼女もまた逃げるように結婚する。しかし
    自分が特権を享受しているとわかっていたから、私は黙らなければならなかった。娘の声に耳を傾けてくれない両親のもとで育ちながら感じた寂しさについて。私に関心のない配偶者と暮らす寂しさについて。口をつぐんだまま仕事に通い、上辺だけとはいえ続いている結婚生活を回していきながら、理解されたい、愛されたいという感情に目を向けないようにしなきゃならなかった。私は幸せな人間なのだから。すべてを手に入れた人間なのだから。

    という我慢にも限界が来て、やはり結婚は破綻する。
     
     よしながふみの『愛すべき娘たち』で、美貌を鼻にかける学友を見てきた母親が、自分の娘はああいう性格にさせまいと、わざと容貌をけなして言い続けたという話が出てくる。しかし娘は戒めと取らず、娘には「可愛い」と言い続けて育てる。成長するにつれ、親の欠点を見抜いた子供が、いざ親となった時に自分だけはそうなるまいとする。うまくいけば順繰りにいい母娘関係が築けていくはずなのに、そうはならない。本編でも、母のバックグラウンドを知らない娘が母の育て方に反発し、家というより母から逃れたくて結婚を選ぶ。経験上失敗の予感を感じた母の反対も押し切っての結婚であったため、予想通り破綻しても、更に母娘関係はいびつになる。本来配偶者や家父長制を善しとする韓国社会に告げるべき不満不平が、「同じ女性なのにどうしてわかってくれないのか」と最も近い母・娘に向かう。出口のない迷路である。

     母娘の愛情が満たされていればどうなっていたか。その答えとして彼女の一族と対比的に描かれるのが、駆け落ちしてきたジョンソンの唯一の友となる女性セビおばさんの娘・ヒジャだ。セビおばさんの一生も幸福続きだったわけではないが、娘ヒジャは祖母のやりたかった事を全て叶え、結婚ではなく学究の道を選ぶ。彼女の生き方は、女達の迷路の出口の一つである。

     表紙絵は佇む二人の女性。裏表紙は走り出す女性を見守る女性。表紙は母娘女性同士の共闘。裏表紙は自由を求めて走る娘を見守る母と見える。走り出す女性の先と、二人の女性が見上げる空は明るい。迷路から出た女性が見る空は、こんな色をしているのかもしれない。

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    2026年01月24日
  • わたしに無害なひと

    Posted by ブクログ

    終生誓願をして修道士になる直前の男性の打ち明け話として語られる『告白』。男性ジョンウンは、一時期つきあっていたミジュに「神は殺人者も自殺者も等しく許すのか」と聞かれたことを思い出す。ミジュにはかつて三羽烏のように仲良くしていた友人ジニが自死した過去があった。ミジュの話の中にある殺人者とは自分、自殺者とはジニのことだ。ジニがある事を打ち明けた時に、もう一人の友人ジュニは率直な感想を口にし、ミジュは何も言わなかった。しかし「表情が全てを物語っていた」と後でジュニに言われたことで、彼女は直接手を下したわけではないが、自分がジニを追い詰めたことを悟る。

     ジョンウンは誓願をする前に「被造物(人間)に話さず慰めも求めてはならない。神に語り掛けよ」と言われるが、必ずしもその言葉に従えない時があった。誰かに話せば、もしかしたらその時は、相手にとって自分は“無害”でなくなっているかもしれない。相手の反応によっては相手も“無害”でなくなっているかもしれない。それでも話してみたい、聞いてみたいという欲望を棄てられないのが人間であり、その反応の方が自然ではないかと感じたからだ。

     『告白』は言葉が足りず後悔した女性が登場するが、逆に言い過ぎて後悔することもある。家族ならば、特に相手への遠慮を忘れて感情に任せて口走る事が多々ある。『過ぎゆく夜』は優等生の姉と落第生の妹というよくある取り合わせだ。母が早くに亡くなり、つい道を踏み外しがちな妹に口うるさく言ってしまう姉だが、必ずその後に来るのは後悔だ。謝るには時期を逸し、澱のように心に溜まってゆくものを長年抱え続け、久々の帰国で再会する。

     他の短編『あの夏』『六〇一、六〇二』『砂の家』『差しのべる手』『アーチディにて』とも、総て登場人物が過去を振り返る形式になっている。所詮“たられば”にならざるを得ないが、言葉にもしなければ、後悔も相手への想いもただ忘れるだけだ。そして大抵の場合、被害者より加害者の方が容易く忘れる。言葉が武器になりうることを知っている作家だからこそ、物語という形で弱者の痛みを語り続けることに決めた著者。今後の挑戦に期待したい。

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    2026年01月24日
  • 明るい夜

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本の統治下にあった時代、そして朝鮮戦争を生きて命を繋いできた女四代の物語。
    弱い立場に置かれた女性たちの苦しみが直に伝わってくるようで、私も苦しかった。何度も憤り、悲しみ、時には目を潤ませながらの読書となった。
    被差別民や男尊女卑のさまざまなエピソードを読むと、日本のそれととても似ていると思った。差別や偏見をなくすように努力し続けていくことが大事であり、こうやって小説の中で語られることには大きな意味がある。
    怒りの矛先を間違い、虐げられている人同士でぶつかり合うことはよくあることなのかもしれない。自分のことを諦めたつもりでも、溜め続けた負の感情は死ぬまで重い荷物となって離れないのだろう。いつかはそれをおろさなければ望むところには行けないし、周りの人々を傷つけることにもなるのだなと思った。
    もう修復不可能なのではないかと思ったけれど、主人公をきっかけにして少しずつ氷解していくのを祈るようにして見守った。生きていれば回復もできるという希望が見えてホッとした。
    大事な思い出を抱えて人は出会いと別れを繰り返している、でも心の底では温かい気持ちで繋がっていると信じられる、時を超えて生き続ける思いがある、そんな物語だった。
    特にミョンスクおばあちゃんのエピソードが切なかった。

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    2025年08月12日

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