小澤身和子の作品一覧
「小澤身和子」の「オービタル」「クイーンズ・ギャンビット(新潮文庫)」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
苦しい作品だ。解説で「少女版『キャッチャー・イン・ザ・ライ』」との謳い文句が付されていた時期があることを知ったが、言わんとすることはわかる。大都会の軽薄さへの失望、社会への反抗心、人生の実感のなさと空虚さといったものは確かに共通しているが、しかし押し潰されるような圧迫感と苦しみは、本書が段違いではないだろうか。個人的にはキャッチャー〜の主人公にはうんざりさせられたが、本書の主人公の痛みにはかなり心を寄せられるものがあった。特に両者の違いが明確なのはやはり異性との関係だろう。男性であるキャッチャー〜の主人公が自身の安全が確保された立場から女性を常に冷笑していたのに対し、女性である本作の主人公にとって、異性との関わりは常に社会の眼差しや要請に傷つくものであり、暴力により搾取される危機にも面し、また性交経験は実際的な肉体の痛み・負担を伴うものでしかなかった。この、両性におけるそもそもの立っている場所の違いが重たく胸にのしかかるし、両作品が世に出てから50年以上経過している現代においてもなお、共感できる部分が多いと思う。
新訳ということも影響しているかもしれないが、60年代の作品と言われなければわからないぐらい、現代にも普遍的な─いやむしろ現代の人間の方が自覚が多いのではと思う、息苦しさ、空虚さ、痛みが泣きたくなるぐらい率直に伝わってくる作品だった。