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わたしはぜんぶ覚えている。あの痛みも、暗闇も――。
ピュリツァ―賞受賞の天才詩人が書き残した伝説的長編小説、20年ぶりの新訳。
優秀な大学生のエスター・グリーンウッドはニューヨークのファッション誌でのインターンを勝ち取ったとき、
夢がついに叶うと信じて喜んだ。しかし、退屈なパーティー、偽善的に感じられる恋人、
空虚なだけのニューヨークでの生活に違和感を覚え、世界が支離滅裂なものに感じられる。
そして、とあることをきっかけに精神のバランスが徐々に崩れていく。
世の中は欺瞞だらけだと感じる人、かつてそう思ったことがある人たちに刺さりつづける、
英米だけで430万部以上を売り上げた世界的ベストセラー、待望の新訳。
海外文学シリーズ「I am I am I am」、第一弾!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
苦しい作品だ。解説で「少女版『キャッチャー・イン・ザ・ライ』」との謳い文句が付されていた時期があることを知ったが、言わんとすることはわかる。大都会の軽薄さへの失望、社会への反抗心、人生の実感のなさと空虚さといったものは確かに共通しているが、しかし押し潰されるような圧迫感と苦しみは、本書が段違いではないだろうか。個人的にはキャッチャー〜の主人公にはうんざりさせられたが、本書の主人公の痛みにはかなり心を寄せられるものがあった。特に両者の違いが明確なのはやはり異性との関係だろう。男性であるキャッチャー〜の主人公が自身の安全が確保された立場から女性を常に冷笑していたのに対し、女性である本作の主人公にとって、異性との関わりは常に社会の眼差しや要請に傷つくものであり、暴力により搾取される危機にも面し、また性交経験は実際的な肉体の痛み・負担を伴うものでしかなかった。この、両性におけるそもそもの立っている場所の違いが重たく胸にのしかかるし、両作品が世に出てから50年以上経過している現代においてもなお、共感できる部分が多いと思う。
新訳ということも影響しているかもしれないが、60年代の作品と言われなければわからないぐらい、現代にも普遍的な─いやむしろ現代の人間の方が自覚が多いのではと思う、息苦しさ、空虚さ、痛みが泣きたくなるぐらい率直に伝わってくる作品だった。
Posted by ブクログ
30歳という若さで夭折したシルヴィア・プラス唯一の長編小説。
日本で手に入る作品は詩集と、短編集である『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集』くらい。
長編はこの『ベル・ジャー』一冊だけ。訳者後書きにも記されていたが少女版『ライ麦畑でつかまえて』と言われているとか。確かにそれも頷ける作品だった。
物語は1953年の夏、ローゼンバーグ夫妻の死刑執行のニュースから始まる。
マッカーシズム旋風吹き荒れるアメリカ。国民は共産主義の影に怯える集団ヒステリー状態で、友人や家族であっても少しでも共産主義の疑いがあるなら密告し、根拠の有無を問わず告発される。
更に今以上に女性は、女性として妻として、生き方を押し付けられてきた。
自分らしく生きることが難しい社会、環境でキャリア、人生に悩み、次第に精神を壊していく若い女性の姿を本書は描いていく。
そんな時代に主人公のエスター・グリーンウッドは優秀な成績を収めて、ニューヨークのファッション誌のインターンを勝ち取る。エスター・グリーンウッドは物書きになりたいと思っており、インターンはその足がかりになるとそう思っている。
しかし、エスターは精神を壊してしまう。
その結果、希死念慮が頭から離れなくなり、何度か自殺未遂も起こしてしまう。
そして精神病院に入院するまでに……。
その理由については明確な理由があるわけではないのだが、アメリカ社会に流れている空気が、そうさせてしまったように見える。
だからだろうか、今読んでもこの息苦しさは古臭くない。
あと余談だが、本書を読んで後半部分の精神病院の場面で『17歳のカルテ』を思い出した。
影響下にあるかも、と調べてみたら『17歳のカルテ』の原作は作者スザンナ・ケイセンの実体験が元になっていた。
スザンナ・ケイセンは18歳で自殺未遂を起こし、入院させられているのだが、その病院はシルヴィア・プラスが入院させられたところと同じなんだとか。
Posted by ブクログ
言葉が詩的で綺麗で、特にスキー場の表現がお気に入り。表現があまりにもリアルで、何度か手に力が入らないくらい怖くなる時があった。
序盤NYの部分は、友達の容姿、お洋服の質感からレストランのテーブルに置かれたネームカード、身に纏っている香水の匂いまで、とても綺麗に描写されていて読んでいて凄く好きだった。
NYでの熱い湯船についての話も、自分が言語化できなかった感覚が綺麗に言語化されていて、読んでいてsatisfyingだった、嬉しかった。
figtreeの部分も、she explains so well like 読むのが苦しかったくらい。訳者のあとがきでの言及も良かった。
白人主義、精神病外国人等々色々な差別、時代的背景が見えた。
お気に入りの小説かも。
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