「幕末・明治篇」に続く老川日本鉄道史の第2弾。鉄道国有化から敗戦までを描く。本書においても,近代日本経済史を,鉄道を中心に見ることで,従来の通史とは異なる新たな解釈が思い浮かばれる。
とりわけ興味深かったのは,日本経済ないしは北東アジア経済におけるウラジオストックの位置づけだろう。従来の植民地史
...続きを読む研究や帝国日本研究サイドに立脚すると,日満間の結びつきは朝鮮半島を軸にしてしまうが,ロシアを視野に入れることで,東京―米原―敦賀―ウラジオストック―満蒙というルートが日本の鉄道史に与えた影響力の大きさに,改めて目を奪われよう。
「キセル乗車」(174頁)のエピソードは微笑ましく感じられたし,敗戦翌日の1945年8月16日においても「国鉄は時刻表のとおりに動いていた」という最後の一文が,日本の鉄道史を一言で集約できているといえるのではないだろうか。
なお本書(初版)においても,JR相模線が「JR相模原線」(204頁)と記されていたのは看過できない誤字である。