he Rhetoric 人生の武器としての伝える技術
著:ジェイ・ハインリックス
訳:多賀谷 正子
良書:500頁を超える大作、一読するにも、かなり時間が掛かってしまった
レトリックは、美事麗句ではない。効果的に相手を説得するための方法論であり、相手との緊張を和らげ、人を癒すこともできる。
さすがに西洋人とはいえ、一方的に自分の考えを相手に押し付けるためだけに、この説得術をギリシアの時代から今日まで伝えてきたのではないのである。
気になったのは、以下になります。
■序
・実のある議論をするためには、終わったことではなく、これからのことを話すこと
・説得とは、単に相手の合意を得ることではなく、聞き手をこちらの思い通りに動かすことにある
・レトリックは、リーダーシップに欠かせないスキルであると考えられていて、とても、重要な知識として高等教育の中心に置かれた
・話し合いの最大の成果を、同意という。これは単なる一致ではなく、妥協とも違う。人を信じるには感情が必要なのだ
■攻め
・うまく行っている夫婦は、議論し、うまくいっていない夫婦は口論をしている
議論:うまくやれば聞き手を語り手の思い通りに動きたい気持ちにさせる
口論:相手に勝つためにするもの
・他人の合意を得るためのひとつの方法は、あなた自身がまず相手に合意することだ
・人を説得するためのには、3つの目的がある
①聞き手の感情を刺激すること
②聞き手の考えを変えること
③聞き手を行動へ駆り立てること
・そのためには、3つのステップが必要だ
①まず気分を変えてもらう
②次に、考え方を変えてもらう
③最後に、行動したい欲望で満たさせる
・議論できないことは議論しない。道徳的な問題は議論することができない
・3つの最強の説得術
①語り手の人柄による説得
②話の論理による説得
③聞き手の感情による説得
⇒
エートス:人柄を使った技法
ロゴス:論理の力を使った技法
パトス:感情に訴える技法
・レトリックは、この3つの技法を組み合わせたものである
エートス
徳、技能、思いやり
聴衆と同じ価値観をもっているように見せる
自分の欠点を戦略的に使う
経験をアピールする
必要に応じてルールを曲げる
中庸であるように見せる
私利私欲がないこと、好意的であること ⇒ 無私の善意 という
・ロゴス
誇張して話すことは間違った論理ではない
感情に訴えるからといって間違った論理ということにはならない
帰納法 事実⇒比較⇒ストーリー
・パトス
説得するには聞き手の感情を動かすことが必要だ 共感
説得に役立つものがもう1つある、それは、欲望だ
シンプルに話すこと
説得効果の高い感情として感情として同情を挙げている
怒りは、相手に行動を起こさせる
忠誠心の力を使う
■守り
・論理の誤りを見抜けば、自分の身を守ることができる
間違った比較
不適切な例
無知を証拠とする
前提を何度も繰り返す
誤った選択肢
わざと関係のない話をする
間違った結末
・議論を口論に変えてしまうのは、最もやってはならない反則である
・細かい部分について議論すると、相手が自分の意見を和らげる傾向にある
■テクニック集
類推、撞着語法、修辞的疑問文、誇張法、遠慮、対話
・言葉の工夫、思考の工夫、比喩、の3つの技法がある
①言葉の工夫 反復、言い換え、響き、言葉遊び、くびき語法、慣用句
②思考の工夫 修辞的的疑問文
③比喩 見立て:隠喩、皮肉:隠喩、提喩、換喩
交差配列法、対照法、緩叙法、拡充法、反対の言葉、……
・カイロス 説得するタイミングがある
適切なことを適切なタイミングで、適切な手段で言うこと
・弁論術の5つのパート
①発想 何を言うか
②配置 それをどの順番でいうか
③修辞 聴衆に合わせてどんな表現をするか
④記憶 きめたことを自分の頭に入れる
⑤発表 実際に発表する
順番は、エートス(人柄)⇒ ロゴス(論理) ⇒ パトス(感情)
②配置
序論:エートス(人柄)をアピールする,関心と好意を得る
陳述:問題の経緯や、事実、数字をあげる、簡単明瞭に
提議:あなたと論敵の意見が一致するところ、不一致なところをあげる
立証:あなたの議論の核となるものを述べ、その例をあげる
反論:相手を論破する
結論:あなたの最も訴えたいところを、もう一度述べる、できれば少し感情的に
③修辞
その場の聴衆にあった言葉をつかう
明瞭に、わかりやすく
鮮烈さ、もっとも強い効果を発揮する
聴衆に、適応する技術
声のリズムや言葉の功名さ
・短い文を重ねていく手法は、スピーチやプレゼンで要点を伝えるときにも使える
・自分の欠点をうまく使う
・どんなときに、どのテクニックを使えばいいのか
・誰かをあなたの意見に寄り添わせたいと思うなら、その人の信念の核心にまで入り込んでいかなければならない。
目次
まえがき
新版へのまえがき
1章 伝える技術の達人になるために
Part1 「攻め」の伝える技術―相手の心をつかむ
2章 「議論」の目的を決める
3章 時制をコントロールする
4章 聞き手の心をほぐす
5章 聞き手に好感をもたせる
6章 聞き手に耳を傾けさせる
7章 聞き手の信頼を得る
8章 聞き手への思いやりを示す
9章 聞き手の感情を変える
10章 聞き手の怒りを和らげる
11章 有利な立場を築く
12章 論点をうまく定義する
13章 議論をコントロールする
Part2 「守り」の伝える技術―相手の議論から身を守る
14章 論理の誤りを見抜く
15章 議論を台無しにする反則を見極める
16章 相手を信用できるか見極める
17章 相手の能力を見極める
18章 いじめに対処する
Part3 「攻め」の伝える技術 応用編―相手を自然に動かす
19章 気の利いた受け答えをする
20章 現実を違った角度から見せる
21章 キーワードを使って集団をひとつにする
22章 あなたが選んだものに共感する
23章 失敗をうまく挽回する
24章 好機を逃さない
25章 適切な手段で伝える
Part4 大勢の人の心をつかむ技術
26章 説得力のある話をする
27章 聴衆の心をつかむ
28章 説得力のある文章を書く
29章 目的に合った技法を使う
30章 価値観で分断されている世界を生きるために
伝える技術 実践編
伝える技術 技法の一覧
謝辞
訳者あとがき
ISBN:9784591156926
。出版社:ポプラ社
。判型:4-6
。ページ数:560ページ
。定価:1980円(本体)
。発行年月日:2018年04月
。発売日:2018年04月07日