実に美味しそうな画像と簡単なレシピで構成してある。
画像の華やかさと構成のバラバラ感が、レシピ本の特徴なんでしょうね。
レシピ本のレビューを書くのは難しい。結局語おいしいに対する豊富な彙力が少ないのだ。たくさんあるレシピで一つでも参考になればよしとする。しかし、それがなぜ良いのか?を論理的に説明することは難しい。「部位別」や「調理法別」できれいに整理された体系的なレシピ本ではない。ビジュアルで決めてる感じ。
この本の2大特集である「ほっとく系の肉ごちそう(時間こそ、最高の調味料)」と「人が来る日の極上煮込み」がテーマだ。とにかく、「ごちそう」なのだ。とにかく表紙や誌面の肉の画像が美しく、ページをめくりながら「肉が食べたい」と思わせる本だ。肉は、霜降りではなく、赤身の肉が使われている。
「時間こそ、最高の調味料」をテーマにして、火にかけたらあとは「ほっとく系」の肉のごちそう。手間はかけないのに、時間が肉を極上に美味しくする。何もしないで、待つことで美味しくなるって、料理している感じではないが、料理は手をかけるだけではない。
「パラパラとめくって、直感的に食べたいものを選ぶアイデア帳」だと割り切れば、ワクワクする。味とビジュアルのクオリティは間違いなく極上だ。
肉料理は、なぜほっとくと美味しくなるのか。この本には、それの説明が詳しくないのが残念。
加熱された肉は、ギュッと縮んで中の肉汁を外に追い出す。しかし、火を止めて「ほっとく、つまり休ませる」ことで、肉の繊維が徐々に緩み、外に出た肉汁をスポンジのように再びお肉の中心へと吸い戻す。これにより、肉汁が肉の中から逃げず、しっとりジューシーに仕上がる。
すね肉やバラ肉など、動かす部位の肉には「コラーゲン」という硬い結合組織が多く含まれている。これは急に強火で加熱すると縮んで硬くなるが、65度〜80度前後の低温でじっくり加熱を続けると、プルプルの「ゼラチン」に変化する。これが、ほっとくだけで箸で切れるほど柔らかくなる最大の理由だ。
細胞の性質として、加熱されているときよりも、温度が下がっていくときのほうが、周囲の旨味スープを内部に抱え込みやすいという特徴がある。火を消して鍋ごとほっとく時間は、肉の芯まで味を染み込ませる最高の時間なのだ。肉料理は、温度の変化によって、美味しさが熟成される。熟成とは、時間軸で、料理を見ることだ。
「極上」にするための技として、煮込む、または塊のまま火を通す前に、お肉の表面を強火で「これでもか」というくらい濃い茶色に焼き付ける。これは「メイラード反応」で、肉のタンパク質と糖が反応して、強烈な香ばしさと旨味とコクを生み出す。この「焼き目」がスープに溶け出すことで、煮込みのソースに圧倒的な深みが出る。
火にかけ続ける場合は、絶対にグラグラ沸騰させてはいけない。
沸騰すると肉の繊維が固く締まり、さらに脂と水分が激しく混ざり合って、乳化してスープが濁り、ギトギトした味になってしまう。静かな対流を起こさせることだ。
また、玉ねぎ、にんじん、セロリをしっかり炒めてから肉と合わせることで、野菜の甘みと肉の脂が調和し、味の輪郭が驚くほどきれいに整う。極上にするには、技の根拠もがいる。
本を見ながら、なぜか満腹感がある。不思議なレシピ本だ。ご馳走と言えば、やっぱり肉なんだよね。このレシピ本は、肉をメインとしながら、伴走する副菜も載せてある。画像がいい。