■ナッジと仕掛けの大きな違いは、ナッジは「したいからするわけではない」のに対し、仕掛けは「したい」という欲求があるから行動する点。
ナッジの基本は人の意思決定のクセ(認知バイアス)を利用すること。ナッジは認知バイアスなど人間の意思決定の傾向を踏まえ、意識されることなく行動を促し、より望ましい選択へと導く手法。
仕掛けは自発的な行動選択を促すこと。
■仕掛けを3秒で理解してもらうには、どんなに多くても12文字以内に収める必要がある。効果的な仕掛けとは「文字はせいぜい10文字程度に収めながら、直感的にビジュアルで理解できるもの」ということになる。
■仕掛学における新規性と親近性の役割について
新規性とは今まで見たことがなく珍しいもので「何だろう」と興味をそそられるもの。
親近性とは今までに経験したことがあるものや、初めて見たものでも使い方が容易に想像できるものなどよく知っているもの。
親近性しかない場合は「どうやって使うのかな」と理解するのに時間がかかり面倒と感じて途中でやめてしまう人も多い。
仕掛けは新規性で好奇心を刺激するだけでなく、親近性で引き込む仕組みが効果を発揮する。
新規性は親近性のあるもの同士の組み合わせで生まれる。そこで仕掛けを作るには、まず過去の経験や体験から遊び心を刺激するような親近性のあるものを探す。そして、それらを課題解決の仕掛けになるように組み合わせることで、効果的な「そそる仕掛け」が生まれる。仕掛けとは一見ゼロから「1」を作り出すクリエイティブな試みのようだが実は精巧な組み合わせの技だということがわかる。大事なのはクリエイティビティ(創造性)ではなく、親近性のあるもののブリコラージュ(寄せ集めて組み立て直すこと)的発想ということ。
■プロチャスカの行動変容ステージモデル
・「無関心期」:行動変容に全く関心がない段階
どのように関心を持ってもらうかが重要。
・「関心期」:行動変容を考え始める段階
いかにモチベーションを保ちつつ、行動を継続してもらうかが主眼となる。
・「準備期」:行動変容を決意して準備をしている段階
・「実行期」:実際に行動を変え始めてから6か月以内の段階
人の行動は6ヶ月間続くと継続しやすくなる。
・「維持期」:新しい行動を6か月以上継続している段階
■行動の習慣化に必要な期間は66日間
実行期から維持期への移行には飽きる前に習慣化できるかどうかがカギとなる。プロチャスカの理論では実行期から維持期に移行するまでの期間は6か月とされているが、2009年にロンドン大学で行われた研究によると、習慣化までに要する期間は習慣の難易度によって異なり平均66日間としている。
継続に結びつく可能性があるのは、例えばトライするたびに達成感があったり反応が変わる意外性があったりするような仕掛け。仕掛けは「ちょっとしたいたずら」や「遊び心」を旨とする。手の込んだ複雑な仕掛けよりも仕掛けられた側が気軽に試して楽しめるようなシンプルなものこそ長続きすると考える。
■行動が習慣化するということは「システム1」から「システム2」に切り替わるということ。つまり仕掛けで行動を変化させるには、仕掛けの効果が持続している間にシステム2からシステム1に切り替わることが必要。
■習慣化を目指す仕掛けを作るときは、繰り返しやってもらえるように報酬の与え方を工夫する。
仕掛けでは金銭的報酬を使わないが、これは、金銭が目的になると行動自体の魅力が薄れ、内発的動機が失われてしまうから。
「アンダーマイニング効果」とは、もともと楽しさや興味で行っていた行動に対して金銭などの外的報酬が与えられると、目的が報酬に移ってしまい、報酬をもらえないとやる気が出なくなるというもの。楽しさや興味という「内発的動機」を外的報酬が弱めるということ。