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「toi8」の「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた 黒髪の戦乙女」「NO.6[ナンバーシックス]再会」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「toi8」の「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた 黒髪の戦乙女」「NO.6[ナンバーシックス]再会」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
2002年『空想東京百景』でイラストレーターとしてデビュー。『嘘つきは妹にしておく』をはじめ、ライトノベルのイラストを数多く手がける。2009年自身初の画集『幻想少女 toi8アートワークス 』を発表。
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Posted by ブクログ
前巻で子供が遂に生まれたという程度だったので、今巻にて早くも思春期くらいまで育っている、というかグロワスが中年に変じていた点は結構衝撃
もっと言えばこの巻でグロワスが亡くなってしまう点も。予想していなかっただけにかなり驚かされたな。しかし、後書きにて「グロワスが何を遺せたか」が焦点であると知れた事で本シリーズにおける諸々にスッキリでき、そして満足感を覚えられる結びの巻として迎えられたような気がするよ
冒頭で描かれるのはグロワスを永きに亘って支えたフロイスブル侯爵マルセルの死。思うように人を動かせない立場だった初期のグロワスが最も頼りにしたのがマルセルであり、最も困難な役目を何度も投げたのもマルセルだった
彼の存在無くしてグロワスの治世は無かったと言える。時が流れれば寵臣が変わっていくものだろうけど、マルセル程替えの効かない人物はない。彼の死がグロワスにとって終わりの始まりであると充分に納得できる
そうした出来事から始まるのもあって、この巻で描かれるのは終わりと始まりなのだろうと改めて思える
グロワスの子供達が成長していく様はどこまでも続く未来を感じさせる。しかしグロワスの死にとよって閉じられる物語は終焉を感じさせる
だからか「グロワスが何を遺せたか」を最も象徴する存在である子供達がどのように育てられているかに目が惹きつけられる
子供達、特にメアリ・アンヌ、ロベル、グロワス王太子。それぞれがグロワスから譲り受けた要素が見られつつ、同時に母から譲り受けた要素も見える。それで居ながら誰もグロワスに似ていないとも感じさせる
そこにはグロワスが父親として子の育ちにある程度関わった部分と、グロワスには異世界のルーツがあるが子供達には無い点が密接に絡みついていると思えた
グロワスと子供の関係性が最も象徴的に描かれているように思えたのは“王の授業”のシーンかな
グロワスは異世界の、サンテネリより洗練され先進的な知識を多数保持していたが、重臣や貴族相手には役に立たなかったから統治においてはあまり使用しなかった
しかし、グロワスの次代辺りから世が大きく揺れ動く兆しは見えつつあるからこそ、対面する事になる子供達には先進的な知識を与える必要が生じる
だからってジュールの『悪について』を読ませるのはエキセントリックが過ぎるよ!あれ、王侯貴族が読んでいると知られただけでも卒倒しそうな代物なのに、王が王太子に教えるなんて理解の範疇を超えている。けど、これをしているのが異世界の先進的な知識を有するグロワスであるならば少しの納得は出来る
グロワス自身はそうした思想を有しつつも己の統治には適用できなかった。未来に生きる子供達はそうした思想を適用しなかったとしても同じように有している必要がある
これはグロワスによる未来への道であり、同時に自分が今後を歩めない諦観による終焉だ
未来を生きる者を育てる点でもう一人言及したくなるのはジュールか
グロワスと初対面を果たした頃のジュールは高い知能と理想を有しながらも王に噛み付いてしまう無鉄砲な若者だった。二度目に遭う頃にはグロワスへの認識を改め世への認識を研ぎ澄ましつつ、いつ命を落としてもおかしくない危うい青年だった
そして三度目の邂逅を叶えた彼はグロワスを手本とし理想を叶える為に世を滑らかに渡り歩く革命家の卵となっていた。まさか自分を曲げられない堅物といった風体のジュールが硬軟織り交ぜる社交家になっているなんてね。しかもそれがグロワスに倣った遣り方であるというのは感慨深く思えますよ
ならば、今のジュールはグロワスに比肩する人物に成りえたか?との点が描かれたのが32話の対話であり、グロワスとジュール最後の邂逅か…
二人の会話は冒頭部分を除けば直截な言及は殆どしていない。しかし、互いの主張を判り合った諒解の上に議論を行っている。グロワスにはジュールが描く絵が見える、しかしジュールにはグロワスの絵の全容が見えない。それが両者の差となって初めて現れる
“よりよいサンテネリ”を目指す為にどの程度の不正、どの程度の悪を許容するか?ジュールは自身の出世や死を許容し王権の失落を望んだ。対してグロワスが許容していたのは更に大きなもの、しかし将来的には“よりよいサンテネリ”へ確度高く辿り着くもの
これは別にグロワスの方が知見高く物事を見ているという話ではなく、ジュールが平等の為に自国の王権という象徴性の打倒を目指したのに対し、グロワスはサンテネリという国家性を志した為に“よりよいサンテネリ”が立脚すべき場所が異なっていたと言う話であり、グロワスに倣い少しの悪を許容するように成っていたジュールにより不正を許容させると言う話。将来のサンテネリを背負うだろうジュールに国を治めるとは何かを説いたとも言えるのかも知れない
子育ては描かれた、ジュールへの薫陶も描かれた。であるならばグロワスについて描くべき事項はもう多くはなかったのかも知れない
だからって王太子達が成人にもなっていない段階でグロワスが倒れるなんて想像もしていなかったけどさ…。いや、本当はちゃんと判っているべきだったのかも知れない。グロワスがどれだけの無理を重ねているかを。しかし、妻達も重臣達もグロワスがあまりに偉大な王であるだけに彼の不豫を予見できなかった
それだけに突然“物”へとグロワスが変じてしまった事で周囲は静かに騒乱を始めるわけだ。その様はグロワスが築こうとした諸々が崩れ始める序幕のように感じられ何とも言えない気分になってしまったな…
だってグロワスの路線をそのままに引き継げそうな人材が誰も居ない。彼の子達ですら役者不足である点は明白
彼の家族や重臣が病床へ訪れる様はグロワスを見舞うというより、彼に未来への道筋を尋ねるように見えてしまう。誰もがこれから訪れるグロワス亡き後の世に不安を覚えている事が手に取るように判る。一方で病により朽ちていく彼は最早何も出来ない。せいぜいがアキアヌに後を託せた程度か
そうなってしまえば唯の“物”だ。まだグロワスが生きていようと、彼を残して世界は進む
そうして進み始めた世界の中で見えた未来への道筋の一つが王太子の思想か。勿論それはグロワスと比すれば劣った思想に違いない。しかし、『悪について』が根付いた彼の思想は王らしからぬものであり、同時にこれから訪れる革命の時代を迎えるに相応しいもの……かもしれない
それで居ながら王太子は次代の王として振る舞う決断が出来た。それで居ながら彼は頼りないからきょうだい達が真心によって彼を支える奇跡的な光景も生じた
これはモノローグで示されたように善きにつけ悪しきにつけグロワスが遺したものだと言えるのだろう
また、グロワスが遺したものという点ではこれまた善きにつけ悪しきにつけ、ジュールの存在が挙げられる。登場初期は知恵者であれど向こう見ずだった青年が革命家に至れたのはグロワスの理解と庇護が在った故だろうし
もう一つ、遺物を挙げるなら渦型機構の時計もあるか。意味はさておきグロワスがあの世界に顕現せねば実現しなかったブラーグとの共同作業品と言えるだろう
他方でグロワスはそれらを自身がこの世に遺したモノであると認識できるかといえば怪しい所。自身の政策や判断に自惚れを抱けなかった彼はきっと先述したモノを自分の成果と思う事はないのだろうね
ならグロワスが、“ぼく”が満足に自分が遣り遂げられたと思える何かが在るとすれば、それはブラウネとの最期の対話に見られるのだろうな
最期までの瞬間、ブラウネは王妃ではなく一人の個としてグロワスを抱き締めた。それはかつて“ぼく”がブラウネに「踊り子のきみを選ぶことができる社会になってほしい」と告げたシーンを少し思い起こさせる。あの言葉が叶った訳では無い。しかし、メアリやアナリゼ、ゾフィがそれぞれの形で王・グロワスの死を実感した後に王とは思えない姿をした彼を愛らしく抱き締めた彼女は「王ではないグロワスを選んだ」シーンと言えるのではないかと思えてしまう。社会の革新まで行かなくても、彼が愛した人は彼を愛してくれた
これをグロワスが、“ぼく”が成し遂げた事だと言わずして、何を成果というのだろうね
この巻で最終巻かと思って、諸々に想いを浸していたのだけど、どうやら5巻とスピンオフ作品が発表されるようで
今巻はグロワスの死で締められた為に以前から仄めかされていた次代に起きた騒乱がどのようなものだったのか、彼の子供達がどのような運命を辿ったかは判らないまま。断片的な言及から想像できる部分はあれど、やはり想像を超えはしない
それらがせめてグロワスが遺したモノに適う幸せな何かを備えた未来である事を祈ってしまうような、つまりは彼がサンテネリで行った諸々が報われるような光景であればと願ってしまうだけに、次の巻で描かれるだろうグロワスの周囲がどうなったかを是非にでも知りたいものですよ…