作品一覧

ユーザーレビュー

  • ぼく東綺譚

    Posted by ブクログ

    『濹東綺譚』を読んでまず驚いたのは、メタ的な物語の作りがこの時代にすでに使われていることだった。
    大江匡の世界があり、その大江が書こうとする小説の中には失踪した種田順平の物語があり、さらに最後には「『濹東綺譚』はここに筆を擱くべきであろう」と、作品そのものについて読者に語りかけてくる。この多重の構造が妙に現代的(ポストモダン的)で、あとはタイムスリップでも起きたら完璧だったと思う。
    大江は異常なほど冷静に自分を分析している。そのせいで静かな小説のように感じるのだが、起きていることだけ整理すると、60手前の男が玉の井に通い、雪とかなり深い関係になっていく。なかなか激しいことをしている。
    ただ、その関係を読んでいるあいだ、ずっとどこかに終わりの気配があった。雪にはほかの客がいるし、大江にも雪とは別の生活がある。親しくなっていくほど、むしろこの関係はいつか終わるのだろうという感じが強くなっていった。
    それでも大江は雪との関係に入り込みながら、同時にその関係を外側から見ているようでもある。季節の移り変わりや天候、自分の心の動きまで冷静に眺めていて、その静けさの中から逆に人物の異常さが見えてくる。
    読後に残ったのは、小説を一本読んだというより、何か芸術作品を見たような感覚だった。物語が面白かったというより、「こんなものをこの時代にどうやって作ったんだ」と思うような、誰も思いつかないものを見せられた感じに近い。
    そして「作後贅言」まで読むと、その感覚はさらに強くなった。極度の不眠、夜中まで銀座を歩くこと、真夏でも熱いコーヒーを飲み、それを出す店を探して歩くこと、多分締切に追い詰められたのだろう、新聞を持って髪を乱して歩く人を見て電柱に身を隠すこと。大江だけではなく、やはり作者の永井荷風そのものも相当変わっていたのか(追い詰められてだけかもしれない)と思ってしまった。

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    2026年08月12日
  • 断腸亭日乗(一) 大正六―十四年

    Posted by ブクログ

    長い本でしたが、面白くて読みやすかったです。後半では、菊池寛とその一派(?)の批判が登場し、直接関係がないところでも名前を出して批判しているところで思わず笑ってしまいました。

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    2026年07月07日
  • 断腸亭日乗(一) 大正六―十四年

    Posted by ブクログ

    上下2巻の「摘録版」を長年愛読しておりました。ところが、本書では「摘録版」につけられていた「ふりがな」が多く省略されていたので、辞書で検索するのの往生しております(^_^) 両販とも旧漢字で統一されていないのが残念です。でも、私の教科書であることに変わりございません。

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    2026年04月18日
  • つゆのあとさき・カッフェー一夕話(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    時代背景が全然ちがくて、分からないことだらけ。
    コモン・センスが分からないのにすごく引かれてしまって、このつゆのあとさきの時代にいるみたいな気さえしてました。
    小説は進んでいくのに、巻き戻したくなったり、舞台から降りた登場人物のその後を追いたくなったり。
    そしてとにかく主人公の女給さんに一定の理解と不理解をもちながら、なんだかほんとに、愛さずにいられなかったです。
    小説の終わりまで、ぶじでいてくれてありがとう。

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    2026年02月21日
  • ぼく東綺譚

    Posted by ブクログ

    何やら引き込まれるような美しい日本語で綴られる東京下町の風情、風俗、情緒。季節が移り変わる描写も趣があって良い。おじさんの悦びと切なさが入り混じるような一夏の思い出に染み染みするような味な作品でした。あらすじは大した話ではないようなものだが、永井荷風の筆を通すと化けるこの物語。

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    2026年01月25日

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