■幼少時に決まった「安心の広さ」が大人になっても続く
虐待を受けて育った子は目の前の親や周囲の人からとにかく嫌われないことが安心の大きさ。一方、親から愛されて育った子は親に見守られ、周囲に褒められ認められることが安心の大きさ。安心の大きさは幼少時の愛着形成がうまくいったか否か、うまくいったとしたらその度合はどの程度かによって決まってくる。小さい頃に一度決まった安心の大きさはほぼ一生を通じてその人固有のものとして定借し、影響を与え続ける。「安心」と「自己肯定感」は人生の一番の欲求であるので、自覚されていなくても、この問題は大人になってからも形を変えていつも大きなテーマであり続ける。
■愛着形成の重要性を説いた精神科医のボウルビィは愛着理論を土台にして「内的作業モデル」という理論をつくった。内的作業モデルとは、子供は母親とどのような関係を持ったら安心を得られるかという幼児期医の体験をもとにして「人付き合いのモデル」を作り上げ、大人になってからもそれに基づいて他人との関係を作っていくというもの。そして、このモデルは一度出来上がって内在化(心のなかに定着すると)されるとその後も変更なく維持されていくとした。
■愛着欲求
赤ちゃんが①安心と②自己肯定感を求めて母親に近づこうとする欲求。その動きを愛着行動という。
①安心(他人への信頼)というのは、いつでも困ったら誰かが助けてくれる、誰かが自分のことを分かってくれる、自分は孤独ではない、と確信できる体験。
②自己肯定感とは他人が自分を認めてくれる、だから、自分はこのままの自分でいいのだと確信を持てる体験。
■愛着形成
小さい頃(二歳くらいまで)に母親との間で、愛着欲求が満たされた体験をすること。愛情豊かな母親に育てられた子は愛着欲求が深く満たされて人生を歩み、不安定な母親に育てられた子は欲求不満を持ったまま成長する。
■愛着障害
乳幼児期に十分な「愛着形成」ができなかったことによる心の傷。
■愛着障害の三段階のレベル
│愛着の持ち方 │幼少時の生育環境│社会適応
①愛着障害レベル3│愛着欲求を否認 │虐待を受けた │必死〜破綻
②愛着障害レベル2│愛着欲求に不満足 │不安定な家庭 │緊張〜困難
③愛着障害レベル1│愛着欲求にほぼ満足│愛情豊かな家庭│大きな問題なし
■もともと持っている自己肯定感の強弱(自責感の強弱)がうつ病発症のしやすさに関係する。
■愛着障害の各レベルで起こりやすい精神疾患。
レベル3
・反応性アタッチメント症
虐待を受けた子供に典型的に見られる「心の傷」。そこに愛着障害のすべての症状が典型的にに表現されており、愛着障害の原型と言える。傷は生涯にわたってその子を苦しめ、大人になってからも人生を制限し続ける。何ごとも自分を出さずに我慢し、自己主張をしない。そうしないと心が不安定になってしまう。
・脱抑制性対人交流症(以下のうち少なくとも二つによって示される行動様式)
①見慣れない大人に近づき交流することへの躊躇いの減少又は欠如
②過度に馴れ馴れしい言語的又は身体的行動
③たとえ不慣れな状況であっても、遠くに離れて行った後に大人の養育者を振り返って確認することの減少又は欠如
④最小限に、又は何の躊躇いもなく、見慣れない大人に進んでいついて行こうとする
愛着欲求を潰された子は我慢して生きている。親から認めてもらえずに「いつ見捨てられるかもしれない」という恐怖を持ち続けている。見捨てられないために、常に親や大人に近づいて機嫌を取ろうとする。
・重症の反復性うつ病、複雑性心的外傷後ストレス症、解離症 など
レベル2
・うつ病、不安症、社交不安症、パニック症、適応反応症、分離不安症、神経性やせ症、神経性過食症
レベル1
・過大なストレスが続くとレベル2と同様にうつ病、不安症などを発症
■「自己」には「同一性」と「単一性」がある。
①同一性
時・場所にかかわらず、「自分は同じ自分である」という通時的な感覚。
②単一性
「自分は一人である」「自分は自分であって他人ではない」という共時的な感覚。
■精神科医のコフートは愛着形成と同じ内容を「共感的応答」という概念で述べた。母親から一貫性のある「共感的応答」をもらえなかった子には「自己の断片化」(自分がばらばらになっていく感覚)が起こるとした。自己の「同一性」と「単一性」が保てなくなることで「自己の障害」という。
■物理的な時間は過去に戻せないけれど、心は過去に戻ることができて、小さい頃の心の傷を取り除くことができる。
■大人の愛着障害(レベル3)は人口の5%くらい。
■愛着障害(レベル2とレベル1)を抱えていることで人生にどんな制限や損失が生じるか。
①素直な自己主張ができない損失
第一段階:自分は他人と違う意見を持っていると自覚できていること
第二段階:それを相手に主張できること
②人に甘えられない損失
③うつ病・不安症・神経性やせ症で苦しむ損失
④悩みを引きずることの損失
⑤配偶者選択を狭める損失
■愛着障害を治す三つの対人関係スキル
①人に甘えるスキル
最も重要な対人スキル。レベル3の人はこのスキルを身につけていない。幼い頃甘えたい気持ちがあっても母親のとこの交流がなく訓練ができなかった。
レベル2の人は甘えることは体験して知っているが社会的な場面ではそれをうまく使えない。
②人と対等に付き合うスキル
③人を甘えさせるスキル
甘えることが甘えさせることにつながる。
■思春期やせ症の治療は娘からではなく母親から始まる。
発症要件は、まず母と娘の愛着障害が重なり合っていること、かつ、母子間の愛着形成はできているけれど娘の欲求不満が強烈な場合。男女比は10対1で女に多い。
■悩みの本質は「対立する二つの気持ちがある」こと。「悩み」と「迷い」の違いは背景に自責感があるか否か。
■人は結婚する相手をどう選ぶのか。一番重視されているのは「安心できる人」。
■愛着障害を治す四つのステップ
①これまで自分を動かしてきた大きな「力」に気づくこと
②満たされなかった愛着欲求の代わりをしてきた行動(代用行為)を知ること
③十分ではなかったけど満たしてきた自分を褒めてあげること
④小さなことから愛着欲求を満たしなおしていくこと