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清水幾太郎さんへの手紙
進歩的文化人として60年安保闘争の指導者であり、その運動を大きく先導する論陣を張り、時には言論活動を超えた闘争の先頭に立って安保反対のリーダーとして活動した社会学者である清水幾太郎。その清水に劇作家の三好十郎が公開質問状の形で1953年『群像』に発表したのが本書である。絶対的な平和なのか反米としての平和なのか、と清水幾太郎およびその向こう側にある平和運動の欺瞞を問うている。 その後、安保闘争を敗北と捉えた清水幾太郎はマルクス主義を批判的に総括し、その立場を「右旋回」させ、のちに核武装による軍事力強化を含んだ戦後批判を唱えるのであった。 -
桜の森の満開の下
昔、鈴鹿峠に山賊がおり、旅人を襲っては金品を奪い、気に入った女がいればすべて自分の妻とした。我が物顔で山を支配する山賊だったが、桜が生い茂る森だけは忌み嫌っていたのだった。そんなある日、旅人を襲い一緒にいた美女を妻として迎えた。その女は山賊に対して物怖じせず、今抱えているすべての妻を殺せ、など様々な命令をするなかで、女は山を降りて都に住みたいと言う。山賊はそれに従いふたりは都に移り住むのだが、女は山賊が殺した生首を並べたり、目玉をくり抜いたりする遊びに興じるのだった。さらに新しい首を要求する女に山賊は参ってしまい、山へ帰ることを決めるのだが……――。 -
南へむかう貨物列車
ホーボがもたらした、ハーモニカによる言葉 広大なアメリカ大陸の歴史を語るには、鉄道の存在を欠かすことはできない。人々はそれに乗って移動し、鉄道はまた多くの人の職場でもあった。そして、ホーボと呼ばれる無賃乗車の放浪者がいる。積荷を見れば列車がどこに行くかを正確に言い当てることができた、というホーボがいて、彼はまたハーモニカを使って酒場の喧噪を鎮めるだけの能力を持っていた。ハーモニカの音楽は彼の言語だった。そのホーボが列車の中で亡くなり、小さいが墓が作られ、形見のハーモニカは今、また別の困難を生きてきた男の掌に握られている。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
西テキサスの小さな町
どのような町にも歴史があり、語る人がいる 水道もなければ店屋もない。水は100マイル先からタンクで買ってこなければならない。それでも、そこには67名の人々が生きていた。西テキサスの小さな町。そこにあるのはカフェとガソリン・ステーションだけだ。カフェの女性主人は、流れてこの町にやってきた客に昔日の様子を語る。サーカスがやってきたことを語って聞かせる。たとえそれが昔であろうと、今は語るだけになってしまったとしても、その思い出をありありと語ることのできる人がそこでは生きている。西テキサスとは、そんな場所なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
霧の朝はやく、二車線のハードライダーが......
引き延ばされる恐怖の時間 『ロンサム・カウボーイ』には、アメリカを移動する様々な人々が描かれているが、中でも巡業は典型的に北米大陸的な行為であり、この小説の主人公であるマイク・シュミッドもまた然り。彼が人々に見せるのは、通常では考えられないような空間をモーターサイクルでジャンプすること。死と隣り合わせの稼業であり、何度も骨折し、入院している。それでも彼は飛ぶ。飛ぶことが自分自身であるから。読者はディズニー・ランドの噴水の上の壮大なジャンプ、引き延ばされた圧倒的なスローモーションに付き合わされることになる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
ライク・ア・ローリング・ストーンだって?
生まれたのは汽車のなか 流しのハスラー。それはもはや商売というより男が生きている状態そのものだ。なにしろ、生まれたのは汽車の中。幼い時からビリヤードがめっぽう得意で、なんでも巻き上げてしまうから共同体に置いてもらえない。それで旅に出ることになる。日銭を稼ぐ流儀はお手のものだ。彼は必ず勝つ。そして勝つから、またよそに行かなければならない。その生き方は孤独そのものだが、他人にまるで関心がないわけでもないようだ。その片鱗は随所に見られる。ただ他人に執着はまったくなく、すぐに忘れるだけだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
拳銃つかいの最後
アメリカの小さな町で生きるとはどのようなことか? 広大なアメリカ大陸。そこで生きるなら、例えば移動には大型バスが不可欠だろう。カントリー・バンドのメンバーたちは、特別にしつらえられたバスと共に暮らしながら、数々のショーをタフにこなしていく。そしてアメリカ大陸の広大さと反比例するように、いや、大陸があまりに広大であるがゆえに、アメリカには無数の小さな町がある。そんな小さな町で生まれ育った男がバンドのリーダーだ。移動中にインディアンと遭遇することだってある。アメリカ的な、あまりにアメリカ的な生の輪郭がここにある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
六杯のブラック・コーヒー
大陸の広がりにさらされ続ける男たち 冒頭から始まる容赦ない雨の描写、そして死についての記述が読者を圧倒する。北アメリカ大陸の自然を最もダイレクトに生き、それゆえ誰よりもその大陸を恋することになってしまう男たち。長距離ドライヴァーがこの小説の主役だ。途方もない距離と雨と風をいつも相手にしている彼らにとって家庭や通常の人間はどこか虚ろに見えてしまう。ドライヴ・インのウエートレスとの束の間の交流のほうがはるかにやすらぎを与えてくれるだろう。そしてブラック・コーヒーは六杯くらいなければ追いつかない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。https://kataokayoshio.com/ -
道順は彼女に訊く
これは謎についての小説ではなく、関係についての小説である 一人のフリー・ライターがいる。彼は引越しに伴う書類の整理中、ふと昔の雑誌記事に目を留める。5年前、25歳の女性が失踪したことをめぐる記事だ。記事と、その後どうなったかについて興味をそそられた彼は、取材を開始。多くの人物に会う。記事を書いたライター、失踪した女性の友人、両親……調べながら彼は、これは犯罪や事件ではなく、失踪者自身の意志ではないかと推測するに至る。そして作者が「あとがき」で書くように、小説の核心は、なぜ? という謎以上に女性を中心とした関係性そのものにあるのだ。 【目次】 第一章 五年前のこと 第二章 最初の取材者 第三章 裸婦は語る 第四章 暗室で夕食 第五章 写真と油絵 第六章 父親の見識 第七章 二階の部屋 第八章 上司や同僚たちが語る 第九章 それまでの一時間三十分 第十章 髪を切った女 第十一章 ひとり二役 第十二章 ふたたび最初の取材者 第十三章 詩人は結論を出した 第十四章 彼女が見たはずの恐怖 あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
東京青年
「東京は激変するよ。だから東京を撮っておくといい」 1950年代から60年くらいの東京を舞台にした長篇小説。作家と同じヨシオ、という名前を持つ若者が登場する。彼が高校生から大学生にかけて接触する女性たちは、すべて年上だ。変わってゆこうとしている東京の街で、ヨシオは女性たちに学び、まだ何者でもない自分の中に核のようなものを作ろうとしている。そしてこの小説は高度成長期の、前を向いたエネルギーばかりでなく過去を確かめ、過去の連続の中に現在があることも大切にしている。そのことを端的に現すのが、この小説における写真の役割であろう。 【目次】 名前は仮にスーザン 肩はいかにセクシーか 美しき太腿のほとり 謎を記録する、謎を記憶する 可能性という謎 電話を受けているうしろ姿 あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
主題と変奏
かつての家は現在の家だ 作家と女優がいる。同じ高校出身の旧知の仲だ。年齢は女優のほうが2歳上。ある日女優は、ふだんめったに乗らない京王線に乗り、車窓から、かつて自分が一時期を過ごしたことのあるなつかしい家がそのままで残っているのを発見する。その家には二人の鮮烈な思い出があり、二人の、女優であることと作家であることにつながっている。その家の近所の喫茶店もまた、20年以上の時を経過して、やはりまだ健在という演出も心憎い。二人は昔の思い出のつまったその家を訪ね、あらためて現在の輝きを更新する。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
化粧して読書と映画
あなた専用の女優になること 誰かと付き合いたい、ということと少し違い、誰かの女になりたい、という願望を持った女性がいる。彼女はその願いをあっさりと実現させた。一人の男性の女として。その男性とは、男性が撮る写真を介して出会い、その出会いの瞬間から「この女性は女優だ」と彼は確信する。今では二人はピンク映画の監督と女優だ。二人はプライヴェートで愛し合いながらも、その最中に姉と弟の設定で会話をしたり、カメラの角度やシーンのことを話し合ったりする。彼が監督であれば、彼の女は専属女優なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
エロティック憂鬱
創作を通じて、憂鬱を外に出すこと 二人の女性がいる。一人は大きな体をしているがそれは本来、男性であったことと関係がある。二人は二人でいることによって、互いのエロスを充実させることができる。それがいささか通常と異なる形態を取ろうとも、そんなことは瑣末なことでしかない。互いに撮影をし、セルフ・ヌードを撮り、やがてその撮影行為の中に模造男根を挿入し……一人が言う。「自分の基本は憂鬱」なのだと。その「憂鬱」とバランスを取るのがエロティックな世界でありその「憂鬱」を自分の中で創作を通じて作り替え、外に出していくのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
センティメンタルではない理由から
殺意と反射、その20年 20年。長い時間だ。20年かけて男は二人の女に会う。20年前は母親のほう。そして20年後の現在は娘のほう。二人は共に28歳である。20年前に自分の中に刻印されてしまった憎悪が男にはある。その20年前の出来事を描写するのに、〜た。〜た。〜た。の短いセンテンスをひたすら続けていく文体のアクションがすばらしい。さあそして20年後の今。男の憎悪はようやく解放の時を迎えるのだろうか。女も、男も、それぞれピストルを所持したその状態ではたしてどう展開するのだろうか? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
ラハイナまで来た理由
イージー・チェアから見えた世界 ハワイ。作者・片岡義男の祖父が、父が住んだその場所のことを書いた渾身の長編。優れた農業技術者だった祖父。その息子である「僕」の父は、アメリカ軍の軍人だった。そして姉が異母姉であることが姉弟関係に微妙な影を落とす。アメリカと日本のあいだにあるハワイという場所にあった歴史。家族写真。アロハ・シャツ。コナのコーヒー。古いビートル。ヴェトナム戦争。エルヴィス・プレスリー。「僕」は今、父が作った庭を、父がイージー・チェアに座って絶命する瞬間も見ていたであろう庭を、同じ位置から見ている。 【目次】 ラハイナまで来た理由 片仮名ではスパム・アンド・エッグス パウ・ハナの美女 雛祭りに泣いた 雨の夜の映画 濡れた新聞とコナ・コーヒー 赤い帽子のバトロメ いつもその窓から見ていた 失われた路面電車 写真に添えたひと言 買って来たピッツアとロウソクの明かり 干潮時水位 カプリース・クラシック・クーペ ふたりで食べた林檎 父親のウクレレ 雨の朝のヒロ・マーチ エルヴィスで四ページ カリフォルニア生まれだ、ソバカスがある ファミリー・フォトグラフズ プールにも台風が来た プレート・ランチという幸福 ファイヴ・オーのなかのハワイ ウルパラクアの赤 まるで落穂拾いのように ホノルルで雑誌を作る そこを滑り下りる遊び 別れの磯千鳥 姉とエルヴィス・プレスリーの会話 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
無人島へ連れていく人
すべてがうまくいく撮影の成り行き 写真家がいる。パートナーとして優秀な編集者もついて新しい写真集の企画が持ち上がる。写真家と編集者は語り合う。アイディアが拡がる。そして、瀬戸内の島でヌード、ということになる。これだけなら凡庸に聞こえかねないが、ここから完璧な島と完璧なモデルを見つけ出す。島は瀬戸内の歴史を色濃く残す奇跡のような島であり、モデルはその体の均衡、撮影に対する理解力など、パーフェクトだ。撮影が進んでいく様子が、次々に小気味よく描かれる。もっともらしい試行錯誤の場面などはなし。それが片岡義男の小説である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
個人的な雑誌 1
雑誌とは、リラックスした一つのトーンである 雑誌であり、同時に本でもある稀有の試みだ。前半部は片岡義男に対するインタヴュー、という形式が取られ、インタヴュアーのクレジットはないがどう考えても作家本人である。そして写真がくる。かつて自身が出演していたラジオ番組『気まぐれ飛行船』のスタジオを撮った貴重な1枚があったりする。セルフインタヴューには植草甚一さんの思い出が召還され、そして気が付くと、主題というほど前景化していないが作者の「フェミニズム」に対する深い関心がうかがえる。この雑誌=本には、あきらかな一つのトーンがある。 ※写真:片岡義男 【目次】 長いインタヴュー 『語ることによるエッセイ』1 7枚ずつひと組の、ジャズのLPをながめる 五十年まえの「名画」を二本、観た。そしてぼくは、昔の二枚目男優たちの限界を知った 彼の後輪が滑った あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
個人的な雑誌 2
アメリカと日本の風景を、雑誌として集めてみる TVニュースを通した、アメリカ的光景の観察。愛してやまない東京湾岸の風景を中心とした、日本のさまざまな場所についての考え。アンセル・アダムズの圧倒的な風景写真について寄せた言葉。サーフィンと海についての考察。初雪のあるショート・ストーリー。これら五つの雑誌的なバリエーションに最後は他人(写真家の佐藤秀明氏)の言葉がくる。これは、あえてまとめれば風景についての、そして英語と日本語といずれが母国語かわからない状態で育った人によるアメリカと日本の、極めて「個人的」な思考の記録である。 ※写真:佐藤秀明 【目次】 アメリカ的光景の遠近法 1 軽飛行機の使い方 2 日本がニュースになるとき 3 いつかはかならず失業する 4 ニュースのなかの音楽 5 大統領を鑑賞する 6 国際情勢という対立関係 7 グラフィックであること 8 外観と内容の関係 9 まさにアメリカ さまざまな場所での、いろいろな想い 1 湾 岸 2 首都高速道路 3 謎の核心 4 バス・ルート 5 東京湾岸地帯 6 散歩道 7 下北沢 8 半 島 9 海 岸 10 斜めに交差する川 11 甲州街道と新宿 めぐり逢う風景の物語——アンセル・アダムズと彼の写真 彼らはなぜ海へ来るのか 1 長い海岸線の全域にわたって 2 彼がはじめて太平洋を見たとき 3 薄く立ちあがり、まっすぐに走る 4 聖地への入口としての駐車場 5 完璧にちかい正三角形がひとつ 6 冬のハーモサ・ビーチ、六フィート波 7 霧の海でひとり叫ぶとき 8 桟橋(ピア)で聞いた話 初雪より一日早く——ショート・ストーリー 僕と僕の写真について、すこしだけ語ります ——語りと写真 佐藤秀明 あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
愛とハッピー・エンディング
人工の女、自然の女 作家は常にストーリーを考えている。女性だ。彼女の担当編集者もまた女性。彼女は時に一人でストーリーを考え、それを今一度確認するように編集者に披露する。今書きつつあるのは、ジェンダーを越境する人物の小説。女なのに男の意識で生きてきた人。女になりたい男。その男から「女であること」の何たるかを吸収したい女。作家の趣味が全国の防波堤を見て回ること、という設定が象徴的だ。防波堤とは、陸の力と海の力が激突する場であり、それは性の境界を思わせるものでもある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
配色の効果
淡いブルーとスカイブルー 女性同士の出会いと恋愛を描いた短篇小説。女性二人が、もう一人の女性の結婚式に出席するため夜の国道を2台のクルマで、つまり、一人1台に乗って連なりながら走っていく冒頭のシーンからして鮮やかである。1度目は電車の中。2度目はバーで。ごく短い時間のうちに2回会ってしまえば、それは偶然を超えて、運命になる。一人が一人に言う。「誰にも、その人を支配している色があるのよ」。そして一人は、淡いきれいなブルー。もう一人がスカイブルー。二人は絶妙なブルーの相違を互いの内に抱きながら生きる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
誕生日のドア
誕生日のドアは、一人で通れ 一緒に生活している男女がいる。まもなく男の35歳の誕生日がやってくる。3日後には、今度は女の35歳の誕生日だ。しかし、家の中の空気はおだやかではない。彼と様々な女性との関係がバレてしまったのだ。一つひとつ暴露されているあいだも腹が減ったといっては食事を作り、コーヒーを飲み、書いた小説(男は作家なのだ)をさんざんにけなされてもその小説について悪びれずに語ってしまう男がなんともユニークだ。誕生日、というものが毎年やってくるドアだとすれば、今年は一人でくぐるしかなさそうだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
水平線に時を読む
「ストーリーは過去であり、過去はストーリーだ」 波乗りを好む男が、雑誌の取材でインタヴューに赴く。相手は57歳。その人も波乗りの練達で、しかもその人の祖父こそが、日本で初めてのサーファーの可能性もあるという。加えて彼の家には、日本最古のサーフボードが保存されている。過去はどんどんどこからか湧いてきて「波が呼ぶんだよ」という小説の話、その映画の話、ハワイの話に広がってゆく。「波が呼ぶんだよ」とはまさに片岡義男の小説のタイトルであり、ハワイは作家の父方のルーツである。自伝的要素を巧みにフィクションに混入した、手の込んだ作品だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
恋愛生活
嫉妬心から好奇心へ、自分自身へ 愛する人の死。深く、悲しい喪失からこの物語は始まる。自分が表現する才能は無いが、音楽に係わる仕事をしたいと考えた主人公の女性は自分が世に送り出そうと考えていた女性歌手の遺品の整理をし、遺されたノートを見ていく過程で、亡き彼女の「恋愛生活」を知る。親しかったのは自分だけではなかった嫉妬心に震えるが、やがて嫉妬心は好奇心に変わり、トランスジェンダーの魅力を備えた女性、また別の作家の女性まで現れ、そこに身を投げることによって、今まで知らなかった自分の可能性が花開いていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
思いがけないベッドの上で
その複数の声を、一人で聞くということ ホテルに一人の女性が滞在している。彼女は朝食を取るために下まで降りていくがウォークマンを携帯させている。そこにはテープが挿入されており、いま、彼女は、その音声をイアフォンごしに聞きながら朝食の時間を楽しんでいる。そのテープには、2週間前に女性3人でさんざんに語り合ったことが録音してあるのだ。その時の熱気。口調。辛らつさとあけすけな内容。それらが朝の彼女の頭蓋の中に響き渡る。そしてその会話のあとの行為についても思い出している…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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