小説 - 三浦哲郎作品一覧

  • 愛しい女
    3.0
    婦人雑誌記者の清里は、妻子を連れて温泉地で休暇を過した折、旅先の吊橋で立ち往生して動きのとれぬ女性二人を救う。その一人は同じ会社の電話交換嬢・妙子で、もう一人は、その友人のスタイリスト留美であった。留美の異様な眼差しが、清里の心を射抜く。留美は清里に強く惹かれ、彼との結婚を強く望むようになる。が、道ならぬ恋を諦めてヨーロッパへ旅立つまでの、濃密な愛の日々。
  • 踊子ノラ
    -
    さいはての地に舞う抒情あふれる踊子物語。女子大に学んだ日も、男たちとの夜も、すべては遠い思い出だ。過ぎ去った日を追わず、明日を夢見ず、踊り疲れて楽屋を出れば、今夜も外は、心も凍らせる一面の雪……。哀しみに耐え、ひたすらに生きる女の姿を、美しい北海道の風光のなかに鮮やかに描く長編小説。
  • おらんだ帽子
    値引きあり
    5.0
    たばこのヤニから作る“おふくろ”の妙薬。奇病から髪の毛を失った母親へ、オランダで買った帽子。重なる心痛を耐え生き抜いて来た老母や肉親を描き、生きてあることの哀しみの源へ、真にあたたかな光を送る、短篇の名手・三浦哲郎の珠玉の名短篇集。
  • 結婚
    4.0
    芥川賞受賞作『忍ぶ川』以降の6つの作品集から選ばれた9編と、早稲田大学仏文科在学中に24歳で執筆し第二回新潮同人雑誌賞を受賞した「十五歳の周囲」を収録。
  • 拳銃と十五の短篇
    値引きあり
    4.8
    うわべは優雅な村人であった亡父の形見の6連発拳銃。母の心臓に、雷に打たれたようにある6つの小さい深い穴。さりげない筆致と深く暖かな語りのうちに、生きることへの声援をおくる三浦哲郎の鮮やかな短篇連作の世界。野間文芸賞受賞。
  • 曠野の妻
    -
    看護師として彼女が勤める北国の病院に運び込まれてきた患者は、かつての恋人だった。激しい愛の果てに自分を裏切って去っていった男との20年ぶりの再会。冷えた家庭を抱え、生と死に対峙して働く緊張のなかに突然現れた男の姿は、過去の愛憎を超え、心を大きく揺らす。行き場を喪っていた感情が燃えあがる。恋愛長編小説。自分を裏切った男と再会し、恋の葛藤に揺れる女心!
  • 笹舟日記
    -
    きょうだいの4人までも自殺や失踪で失った血の悲劇を背負いながらも、心ゆたかに生きようとする著者が、四季折々の日常の光景と、それによって呼び起される切実な過去の記憶との響きあいの中に、生活というものの深い味わい、生命のよろこびと哀切さを、ていねいに紡ぎだして心温まる連作掌編集。
  • 百日紅の咲かない夏
    3.8
    1巻1,023円 (税込)
    父の事故死、母の出奔で別々に育てられた姉弟が、十年ぶりに再会した。以来、十七歳の弟は、二十歳の姉を週末ごとに訪ねる。夜、姉の布団で幼子のように身を寄せながら、歳月の重さと互いの愛の深さにおののく二人。その年、北国の町では怪しげな商事会社が暗躍し、孤独な二人に危険な人間関係がからみつく。
  • 忍ぶ川
    4.1
    兄姉は自殺・失踪し、暗い血の流れにおののきながらも、強いてたくましく生き抜こうとする大学生の“私”が、小料理屋につとめる哀しい宿命の娘・志乃にめぐり遭い、いたましい過去をいたわりあって結ばれる純愛の譜『忍ぶ川』。読むたびに心の中を清冽な水が流れるような甘美な流露感をたたえた芥川賞受賞作である。他に続編ともいうべき『初夜』『帰郷』『團欒』など6編を収める。
  • 愁月記
    5.0
    一家の暗い宿命を負って生きた母が、九十一歳で長かった辛い人生を終えようとしている。その死の前後を静謐な文章で淡々と綴った母への絶唱「愁月記」ほか、久しぶりに肉親たちや著者自身に関わる作品ばかりで編む待望の短篇集。収録作七篇は、それぞれ『忍ぶ川』『白夜を旅する人々』など、著者自らの運命の系譜を辿る諸作に連なるもので、短篇の名手が遺憾なく真骨頂を発揮する。
  • 素顔
    -
    夜になると人通りがとだえる、郊外の新興住宅街に、馬淵家がある。小説家の夫、妻、思春期にさしかかった娘たち、そして一匹のブルドッグ。彼らのさりげない日常のなかから、小さなドラマや人生の哀歓が、さざ波のように湧いては、また静まってゆく。さわやかな叙情と確かな視点にささえられた、みごとな長篇小説。
  • みちづれ 短篇集モザイクI
    4.7
    1~3巻561~638円 (税込)
    宝石のような短篇を百篇綴り、壮麗なモザイクに組上げる、著者独創の連作シリーズ第一巻。青函連絡船から海峡へ花束を投じる男に、見知らぬ女の視線がからむ表題作。四十近くなった娘が幻の父と対面する、その一瞬の情愛がせつない川端賞受賞作「じねんじょ」、寝静まった家に、夜毎すすり泣きの声が響く「すみか」など、僅か数ページに封じこまれた人の世の怖れと情味。
  • 妻の橋
    -
    1巻638円 (税込)
    十数年ぶりに帰郷した男が木橋を渡る。男は結婚当初、身重の妻を伴って東京を追われるように故郷に逃げ帰った。生活の術を失った男の辛い日々とひと時の甘い想い――一つの木橋のうちに時の足音を聞き、若き日の生への不安と苛立ちを抒情的に描く。表題作ほか10篇収録。
  • 肉体について
    4.5
    1巻1,881円 (税込)
    あの栞というのは、下の方に髪の毛の赤い子供が蹲ってなにかしている絵のついた栞のことだが(いまになってみると、それがにんじんのスケッチだということがわかる)、その栞が忘れられないのは、余白のところに、ペンでこんな文句が書いてあったからである。家庭は愛し愛される者だけで作れぬものであらうか。
  • 野

    5.0
    著者の故郷を舞台にそこに住む人々とその暮らしを描く。厳しい自然と対峙する強靱な生命力のしたたかさ。優しく哀しくユーモア滲む短篇の名手・三浦哲郎の瑞々しき豊饒の世界。「金色の朝」「がたくり馬車」「沈丁花」ほか〈故郷〉の匂い染み込む作品群16篇。新境地を拓いた著者ならではの短篇集。
  • はまなす物語
    3.0
    北の浜辺にひっそりと咲く、はまなすの花。傷つき、こわれやすい生への愛惜をこめた、北国に開いた、静かで、透明な美しさをたたえる、愛の物語。北国の若い獣医、東京に嫁いだ姉、都会に憧れる妹の兄妹三様のひたむきで真摯な人生を、はまなすの花に寄せて、砂地に染み透るようにしみじみと描く。三浦文学の円熟の境地を示す長編恋愛小説。
  • 白夜を旅する人々
    4.4
    昭和の初めの東北、青森――。呉服屋〈山勢〉の長女と三女は、ある重い運命を負って生まれついた。自らの身体を流れる血の宿命に脅えたか、心労の果てに新たな再生を求めたか、やがて、次女は津軽海峡に身を投げ、長男は家を出て姿を消した。そして長女もまた……。必死に生きようとして叶わず、滅んでいった著者自身の兄姉たちの足跡を鎮魂の思いでたどる長編小説。大佛次郎賞受賞作。
  • 繭子ひとり(上)
    -
    1~2巻440~550円 (税込)
    幼い繭子を残して去っていった母親と弟――過酷な境遇にじっと耐えながら、幸せを求めて強く生きる、純朴で多感な乙女繭子の遭遇する友情と愛を抒情ゆたかに描く青春のドラマ。
  • 真夜中のサーカス
    -
    晴やかに装っても振り返る者のない生活に失望し、兄の買ってくれた赤いミニで散ってゆく娘、老醜と整形したふくよかな乳房を花嫁衣裳に包み宣伝パレードに繰り出す老婆、夫のいわれのない嫉妬にいたたまれない気持になる女……。つましく生活する市井人の姿を架空の町・菜穂里を舞台に浮び上らせる。もの悲しい場内がスポットライトをあびる、サーカスの意匠に仮託した連作短編集。
  • 木馬の騎手
    4.5
    出稼ぎに出たきり戻らぬ父を尋ねて、ひとり東京に着いたキワ、自分は電気仕掛けで動くのだと頑なに信じる少年・作次、晴れ着を着て父親とメリー・ゴー・ラウンドに乗るチサ――。危ういバランスをとりつつ、生と死の深淵を覗き見る子供たち。この、人生の小さな冒険家たちの、様々な死とのたわむれを、清冽な抒情と澄んだユーモアを重ね合せて描く「接吻」「睡蓮」「厄落し」「星夜」「初秋」「ロボット」「遠出」「遊び」「出刃」など12編。著者会心の連作短編集。
  • モーツァルト荘
    4.0
    都会を捨てた一家が静かな高原で営むペンション〈モーツァルト荘〉。ラジカセのロックで踊り狂い、奇妙な忘れものを残していく若夫婦、駆け落ちカップルを囲む不思議な晩餐会、月夜に前庭で舞う裸婦、そしてクリスマス・イブに化けて出るのは狐?四季折々、訪れる老若男女が起こしていく事件ともいえない波紋の数々―。彼らが奏でる人生の協奏曲を円熟の筆で伝える連作小説集。
  • 夕雨子
    -
    遠い、北の町の盛り場で、ステージに立ち、酔客相手に裸身をさらす、踊り子ひとり。地方のクラブやキャバレーをまわる、ヌード・ダンサーの夕雨子だ。踊り子だった母が、呉服屋の息子と恋をして、生んだ娘。彼女がどんな哀しみにみちた過去を抱いているのか、客はだれも気にしない。しょせん彼女は流浪の芸人であり、風でしかないのだ。そして月日が残酷に移ろってゆく。けなげな踊り子の人生哀歓を、美しい抒情性とリリシズムあふれる澄明な筆致で綴った、連作小説集。
  • ユタとふしぎな仲間たち
    3.9
    東京育ちの少年・勇太は、父を事故で亡くし、母に連れられ東北の山あいにある湯ノ花村に移ってきた。村の子供たちになかなか馴染めず退屈な毎日を送っていたが、ひょんなことから不思議な座敷わらしたちと出会った。彼らとの交友のなかで、いつか勇太はたくましい少年へと成長していく――みちのくの風土と歴史への深い思いがユーモアに包まれ、詩的名文に結晶したメルヘン。
  • 夜の哀しみ(上)
    3.0
    1~2巻869円 (税込)
    夫が出稼ぎに発った晩から激しくなるばかりのからだのほてり。東北の海辺の町に住む35歳の浜浦登世は、自分でも不可解な性の衝動を抑えきれなくなり、幼なじみの英子に相談を持ちかける。やがて英子は病気で入院し、皮肉なことに登世はその留守中に近づいてきた英子の夫・聖次を受け入れてしまう。ある日、抱擁の現場を息子に覗かれ…。性に翻弄されて狂ってゆく平凡な女の運命。
  • 駱駝の夢 上巻
    -
    1~2巻594~638円 (税込)
    いつも信じあって生きてきたはずの妻が、突如、得体の知れない存在に変貌するとき、夫は……。心の歯車が微妙にくるってゆく夫婦の危機を描く1200枚。上巻。昭和47年~48年、日本経済新聞夕刊連載。

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