くるんぱさんのレビュー一覧
レビュアー
-
-
-
-
-
砂漠に水を撒くような奮闘記
西都で起こった蝗害の後処理に陰の司令塔となって食糧などの手配を整える皇弟の月の君。
それを助ける猫猫たち医師団をはじめ、都からの援軍部隊は奮闘。
しかし表に出ないだけにその働きが民衆には伝わらず、后となった玉葉の義兄の玉鶯は劇場型の将軍のような振る舞いで民衆の歓心を得、それに乗じて扇動し隣国を攻めて良港と地下資源を得るための戦を起こそうとしている。
そんな玉鶯と因縁を持つ思いがけない人物が現れ想像を絶する方向に展開していく。
キーパーソンとなるのが猫猫の父羅漢、そして羅半兄、高順の息子馬良の嫁の雀さんがとても良い仕事をしています。
それにしても、猫猫と月の君は一体どうなっていくのでしょう?...続きを読む -
触れ合うことからはじめよう
生きる性の切なくて哀しくて狂おしくて逞しい物語です。
派遣として医療事務の仕事をしながら、好きなネイルの仕事を始めようとする26歳の主人公青木薫が初めて恋した人が癖のある外科医の矢飼先生45歳。矢飼は助けてはいけない人を助け、体に深い傷を負い、助けられなかった恋人が助けられてしまい、深く心に傷を負い満身創痍で全てが贖罪のように、人を助ける為だけに生きていた。そんな先生に向ける薫の恋心に、触れてはいけないと思いつつも触れてしまう先生の想いは、年齢の制御を超えて深い愛へと変わってゆく。
ひたむきで一途な若い恋は、触れられて気持ちがいいと思う本能が、ちょっとした異変を敏感に感じ取り、触れられると...続きを読む -
青春は自分の気持ちを探る時間
高校生活を謳歌している男女の恋心をギリシャ神話のリリド、アダム、イブ、パンドラなどになぞらえながら、文化祭の演劇部の演目として展開していくのが面白い。
バード部の野鳥観察会でイユンクスという珍しい鳥を絡め、魔術が本当に備わったかのように心を動かしていくのも神秘的。
自分でも分からない心が、人と関わることで自覚しながら少しずつ大人になっていくそれぞれの登場人物たち。
とても落ち着いた学園もので、青春の痛みを感じる秀逸な作品です。
登場人物の名前に「実」を入れてアダムとイブが食べた林檎の果実を思わせるところや、ギリシャ神話の三美神を表す重要な数字の「三」が入った名前や万葉集から取った名前、三を持つ...続きを読む -
運命をひた走る
何に惹かれたかというと主人公小玉の女っぷりのよさ。その魅力が男はもちろん周りの女たちをも魅了させていく。片田舎で畑を手伝いながら育った小玉は家庭の事情で軍に志願し、持ち前の素直さ明るさ機転で頭角を現していく。皇帝文林は母親の身分の低さから市井に育ち、心を壊した母のもと世をはかなみ悲観的に。投げやりな気持ちで軍隊に入った文林は小玉と出会い、鍛え上げられ、関小玉将軍、副官文林となり阿吽の呼吸でお互いを助け合い戦場を駆け巡る。戦果を挙げるも左遷され、それに不満も抱かず仕事にいそしむ小玉。小玉の煌めく才能を愛し始めた文林は不満を抱き、小玉の才能を自由に活かせる場所と、国内に蠢く反皇帝勢力を抑えるため、...続きを読む
-
いつから愛に変わるのだろう
いち日はホテルの仕事を辞め、桑乃木の料理人となる決意をするがなかなかお客がこない。
そんな時お月見の出張料理の依頼が舞い込む。
当日は周が給仕に付き添い、女性には好評だがお茶の師匠の藤原には味に深みがないと酷評され不愉快だから仲居に戻れと言われてしまう。その言葉にいち日以上に怒る周の心の動きに注目。
その後いち日のお披露目の昼食会を催し、芸妓の市賀や新聞記者に気に入られ、新聞に載ったことや芸妓仲間の紹介でランチのお客様が増え始める。
いいなぁと思うのは料理のアイデアはもちろんいち日が出すのだけれど、周も毎回相談に乗ってメニューを決めるところ。仕事での積み重ねがお互いの信頼関係を確かなものにし...続きを読む -
男子も女子も厨房に入る
父が亡くなり夫が戦死した後、桑乃木の料理長を勤めていた戸川が、沈んでいく船で心中したくないと全ての料理人と共に辞めてしまう。
そんな時にGHQの妻子と日本の婦人と子供たち40人の交流会の依頼が舞い込む。
この機を逃してはと周にはっぱをかけられたいち日。枕元に立つかなしげな父の姿に、女が入ってはいけないとされた厨房に立つ決意をする。
いち日は周に相談しつつ料理メニューに腐心し、手伝いの人を集め、足りない器を周の実家のホテルより借り受ける。
交流会は粛々と進み最後の手巻き寿司で静かだった会が大いに盛り上がる。
しかし、こっそりと撮られた厨房のいち日の写真と共に周の若主人としてのインタビューが載った...続きを読む -
かくし味が盛り沢山
戦後6年を経て傾きかけた京都の老舗料亭を立て直す為に奮闘する主人公の桑乃木いち日の物語。
「ながたん」は包丁、「青と」は青唐辛子。題名の古風な響きに惹かれ、何より京都の街並みの丁寧な描写に戦後間もない頃に誘われるような気持ちになります。
いち日は桑乃木の長女で料理人と結婚したものの二ヶ月後に出征したのち戦死し後家に。京都の古いしきたりに縛られ、女は厨房に入れず。料理好きのいち日は女がひとりで生きていく為としきたりにあまり囚われないホテルのシェフとして精進を積む。
いよいよ行き詰まる桑乃木を見かねた叔母が、いち日の妹ふた葉に大阪のホテルの次男とのお見合い話を持ってくる。お見合い当日に現れたのは御...続きを読む -