あらすじ
戦国最強の騎馬軍団を膨大な数の鉄砲で打ち負かしたとされる「長篠の戦い」。
だがそこには、それぞれの武将の深い思惑が働いていた。
長篠城の奥平信昌はどうして武田を裏切って徳川方についたのか。
内藤・馬場・山県ら武田の勇将たちは無駄な特攻をなぜ敢行したのか。
家康・酒井忠次主従は何を期して奇襲軍を出したのか。
信長が仕掛けた罠とは何だったのか。
勝頼は絶対的に不利な状況で、なぜわざわざ攻撃を仕掛けなければならなかったのか。
そして、長篠の戦いの最大のヒーローとも言える奥平勢の足軽・鳥居強右衛門の活躍とは。
最強合戦の真実に迫る書下ろし歴史小説!
感情タグBEST3
歴史の醍醐味
歴史を語る時人は自分の視点で見てしまうが、多くの登場人物がめいめいに、あるいは阿吽の呼吸で動き、そして歴史が紡ぎ出されていく。
長篠城址、鳶ケ巣山砦なと何度か足を運び現地の空気を呼吸した我が身には、短編集の形をとったがゆえにこの本の臨場感はすごいと感じた。特に織田、徳川連合軍が籠城戦だという評価には思わずうなった。納得!
長篠の戦い以前の出来事があって、この長篠の戦いあり、そして長篠の戦い以降の出来事へと続く。引き続き登場する人、去る人、そして新たに登場する人、その人々の深層心理まで思うと歴史は例えようもなく面白い。
Posted by ブクログ
大河ドラマでも取り上げられていた著名な長篠合戦。武田側、徳川側の両側面から細かく描かれており、特に武田軍の内部紛争に近い様相が非常に面白かった。ただ、過去の矢野氏の作品と比べると、彼らしい戦いの疾走感や苛烈さが薄かった。鳥居強右衛門のエピソードなどは虚実をうまく混ぜながら物語性が高く描かれるかと思ったが、驚きは少なく凡庸という印象。
武田勝頼が長篠合戦後もしぶとく織田・徳川に食らいつき、最大版図を拡大していくという点に勝頼の武将としての優秀さが窺える。ただ能力が高いからこそ、信長や信玄の奇抜性に憧れ、勝負をかけてしまったのではないかと思う。一方で四天王の3将が欠けたことが武田滅亡の要因と語られがちだが、生きていたらもっと早く滅亡していたのではないかと本作を読んで感じた。武田のような分権の支配体制より織田のようなワンマン軍の方がこの時代にはあっていて、勝頼が才能を発揮できたからこそ滅亡までの数年を生き続けられたのではないか。