【感想・ネタバレ】中国の歴史11 巨龍の胎動 毛沢東vs.鄧小平のレビュー

あらすじ

「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版、第11巻は、様々な試練を乗り越え中華人民共和国を成立させた建国の父・毛沢東と、経済大国への改革開放路線を敷いた鄧小平の二人を軸に激動の中国現代史を辿る。
1921年の中国共産党結成に参加した毛は、非主流を歩み十数年後の長征中に漸く主導権を掌握する。抗日戦争後は国民党の蒋介石に挑戦、文化大革命では紅衛兵を動員し政敵・劉少奇を追放した。継続革命論者でその政治手法は敵を見据えてからどう打倒するか戦略を練る「軍事芸術」とも言われる。
一方、毛の忠実な部下だった鄧は、黒い猫でも白い猫でも鼠を捕る猫は良いとした「黒猫白猫論」を説いたリアリスト。文革と不倒翁・周恩来の逝去後に二度も失脚したがいずれも復活。毛沢東夫人の江青ら文革「四人組」逮捕後の再復活後は改革開放路線に邁進して経済大国の道を切り拓く。変わりゆく状況を的確に判断し次々と最適の選択をする「政治芸術」の人とも評される。この対照的な二人の生涯を縦糸にして清朝末期から中華民国成立、日本の侵略、国共内戦、1949年の中華人民共和国建国宣言を経て朝鮮戦争、中ソ対立、プロレタリア文化大革命などの激動を丹念に描いた渾身の力作。文庫化にあたり、習近平時代を加筆。〔原本:2004年11月、講談社刊〕

目次
はじめに 「中華民族の偉大な復興」
第一章 毛沢東と鄧小平
第二章 エリート革命から人民戦争へ
第三章 揺れる新国家建設
第四章 中国独自の社会主義への挑戦
第五章 プロレタリア文化大革命
第六章 革命と近代化の確執
第七章 改革開放・近代化へ邁進
第八章 大国化する中国の光と影
第九章 ポスト毛沢東と鄧小平の中国
第一〇章 習近平の時代と世界への挑戦

学術文庫版のあとがき
主要人物略伝
歴史キーワード解説
参考文献
年表
索引

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Posted by ブクログ

ネタバレ

近現代中国を作り上げ牽引した毛沢東と鄧小平を反逆者と逆境者として表現している。毛沢東はその人生において常に反逆を志向していた、またその類まれな戦略家軍事指揮官としての才能は常に迫る具体的な現実の敵を打ち倒す際にはいかんなく効果を発揮したが、建国後の富国強兵と行った抽象的な建設事業においては権威の壁により現実を把握できずに大躍進政策の失敗につながった。鄧小平は長い逆境生活の中で常に現実を見つめ、長い間毛沢東の忠実な部下だったが建国後の失政を受けて徐々に距離を置き、政権の安定を常に志向していく。
建国時からの最高指導者毛沢東は、理想的ユートピアな社会主義国家中国を志向し、ソ連とも対立を辞さず、第三世界の先兵を自負していった。大躍進政策の失敗により、劉少奇・鄧小平ら実権派が資本主義的経済の立て直しを図っていると、文化大革命によって権力を奪い返した。その際に利用した紅衛兵や林彪も切り捨てることで絶対的権力を確立する。中央集権の皇帝として振る舞った。
毛沢東の忠実な部下としてキャリアを積んできた後継者鄧小平だが、毛沢東死亡後には政権に舞い戻り最高指導者としての皇帝的地位を確立する。先富論や黒猫白猫論によって地方分権を推し進め、改革開放政策によって政治より経済優先の政策を摂った。また対外的には韜光養晦政策により極力摩擦を避けた。しかし、国内においては第二次天安門事件では武力で民衆弾圧を行い、政治の安定性を何より重視した。
二人の後を襲った習近平も、自己の皇帝化を図っている。経済成長とともに噴出してきた格差や腐敗に対して、対応を迫られている。米国覇権体制に対して挑戦し、一帯一路で違う覇権を確立しようとしているが、周辺国からの警戒は強い。

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2022年01月03日

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