【感想・ネタバレ】中国の歴史8 疾駆する草原の征服者 遼 西夏 金 元のレビュー

あらすじ

「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版、第5回配本の第8巻は、中原の「中華王朝」を脅かし続けた北方遊牧民の興亡史。
8世紀半ば、唐王朝を揺るがした「安史の乱」は、600年におよぶ大変動の序奏だった。耶律阿保機のキタイ、李存勗ひきいる沙陀、李元昊の西夏、完顔阿骨打の金。多極化と流動化のはてに、歴史の統合者たる大モンゴル国が浮上する。13世紀に世界史を大きく転回させた「大モンゴルの時代」は、突然訪れたわけではなかった。
中国王朝史のなかで忘れられた英雄・耶律阿保機が、10世紀初頭に建国した「キタイ帝国」すなわち大契丹国は、中華風には「遼」と呼ばれる。現在の中国東北部から東モンゴルを領域とし、北宋を圧迫したが、1125年、金により滅亡する。その後、耶律大石が中央アジアに建国した「第二次キタイ帝国」は、「西遼」「カラ・キタイ」と呼ばれる。タングト族の李元昊が1038年に建国した大夏は、中華からは西夏と呼ばれ、1227年、モンゴルにより滅ぶ。ジュシェン族(女真族)の完顔阿骨打が建国し、北宋を滅ぼした金も、1234年、モンゴルにより滅ぼされる。
そして、チンギス・カンに始まる大モンゴル国は、5代皇帝・クビライの時代にユーラシアの海陸を覆う世界帝国となった。この超域帝国の宗主国を、中華風には「元」と呼ぶ。グローバル化の扉を開き、現代へと続く巨大帝国誕生のドラマ。〔原本:2005年10月、講談社刊〕

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

バカ面白い。中国という枠組みが虚像である、それはなぜか?証拠を上げていく流れに引き込まれて一気読みしてしまった。同シリーズの五胡十六国自体〜前巻の宋代までいかに「異民族」が中国に進出し、血としても文化としても混じり合ってきたかを学んできた、その伏線が一気に回収される本巻。「異民族」の従来の暴力的なイメージをひっくり返された(沙陀軍閥は除く)。
ポイントだと元寇のモンゴルサイドの背景が面白かった。日本史(特に戦前の一般に流布した史観)からすると英雄時宗が国難を打破した事件だが、実態は南宋征伐の牽制、というのがなんとも肩透かしのような気分。本郷和人さんの執権時代の入門書では時宗の外交的失敗という主張とも符合した。

0
2025年10月12日

Posted by ブクログ

遼による南北共存の成立までで半分以上を占める。特に耶律阿保機の時代が詳しく、あまり知識が無い領域だったため新鮮だった。宋朝を扱った前巻の別面としても面白い。

0
2021年04月27日

Posted by ブクログ

表紙はチンギスハンですが、内容はキタイ帝国が主。従来の中国史では、宋の記述が多く、それは日本人の文化受容過程で刷り込まれたものだという主張。

0
2021年02月23日

Posted by ブクログ

中国の北に長期間繁栄し、強大を誇ったというキタイ帝国という言葉は学校時代の世界史では学んだことが無かった用語。そしてその始祖・耶律阿保機(916年に帝権確立)という英雄も初耳。キタイは後年、中華風の国名「遼」を名乗ったという。遼、金、西夏などの国々は中国史の地図の中で北に描かれているが謎の国だった。キタイと北宋、そして沙陀の李克用・李存勗親子の三国者迭立なども知らなかった世界。いかに中華王朝を中心とした歴史しか視野に入っていなかったかを痛感させられた。キタイは金、西夏を滅ぼし、その政治的遺産がモンゴルに受け継がれていくという。モンゴルの世界席捲という覇業はモンゴル系であったキタイの継承であり、そのモンゴル帝国の伝統が、胡元と卑しめた明帝国、そして今に至るまでロシア「帝国」に引き継がれている?という示唆。著者は大胆な主張をこの本の中でいくつも述べている。
そして面白いのは日本の平将門がキタイ耶律阿保機が渤海を滅ぼし帝位に就いたことを「新皇」を名乗った際に書いていること。そして遣遼使が来貢したと遼史に記載があるとのこと。当時の東アジアの情勢も面白い。

0
2022年07月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 書名と表紙から手に取った。副題に「遼 西夏 金 元」とある。
 「唐」が終わり「元」を経て「明」が起こるまでの500年余の現在の中国国土に起こった複雑な国家群の解説だ。多様な民族が国を形成し、また多民族により国が形成されていた様子が詳細に語られている。特にキタイ帝国(契丹国)について多く語られている。
 モンゴル帝国の第5代の帝位に就いたクビライが「大都」として造営したのが今の北京であるという。また、陸・海の交易も確立したとのこと。他書でこの辺の歴史をもう少し詳しく学んでみようと思う。

0
2021年03月07日

「学術・語学」ランキング