あらすじ
講談社創業100周年企画「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版。第3回配本、第5巻と同時発売の第6巻は、古代東アジアに君臨した隋唐帝国の興亡史。
後漢末以来、400年にわたった分裂は、589年、隋によって統一された。2代皇帝・煬帝は大運河を開鑿するなど強権を発動したが、高句麗遠征に失敗して求心力を失う。煬帝の死後、3代恭帝から禅譲された李淵は唐王朝を樹立。2代太宗は、均田制・租庸調・府兵制を中心とする律令体制によって国力を充実させ、国際都市・長安を中心とする当時世界最高の文明国を現出させた。唐は一時、中国史上唯一の女帝・則天武后の周朝により中断するが、第6代玄宗により中興を果たすと、唐詩の李白・杜甫、書の顔真卿らを輩出して文化面でも繁栄を極めた。しかし、8世紀半ば、突厥の母とソグドの父を持つ安禄山の反乱、さらに9世紀後半の黄巣の乱へと混乱の度を加え、907年、朱全忠の簒奪により唐王朝は滅亡する。
シルクロードと都市の発展、女性たちの進出、日本からの遣唐使と円仁の求法の旅、朝鮮・ウイグル・チベットなど周辺諸国の動向もまじえ、世界帝国の300年を鮮やかに描き出す。
〔原本:2005年6月、講談社刊〕
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Posted by ブクログ
日本史でも馴染み深い隋唐ですが、実際のところはどんな政治状況だったのかということはこれまで私もほとんど知りませんでした。隋や唐が巨大な勢力を誇った世界帝国だったという漠然としたイメージ以外はあまりありませんでした。それこそ豪華絢爛な中国文化というイメージです。
ですがこの本ではこれら隋唐がどのような経緯で建国され、衰退していったかを詳しく見ていくことになります。そして何より、中国全土を統治するというとてつもない難事業をどのように行おうとしていたのかというのは非常に興味深かったです。
現代のような通信手段がない中でどうやって広大な国土を治めるのか。そのことについて改めて考えさせられるのがこの本です。
Posted by ブクログ
隋唐時代はあまり面白くないイメージがあったのですが、とても面白かった。広大な帝国を統べる強大な皇帝がいて、絶大な権限を奮っていたのだろうと思っていたのは違っていました。
春秋戦国時代を終わらせて、南朝の陳を滅亡させ中国全土を統一した初代皇帝(文帝)は、14歳年下の皇后に頭が上がらず、後宮には数千人の美人が揃っているのに手をつけることができなかった。一度お手つきした奴婢は皇后によって虐殺された。
唐になっても、歴代皇帝は皇后に手を焼くことになる。則天武后なんて太宗の後宮にいたのだから、太宗の没後は大人しくしてるべきなのに、年下の息子高宗をたぶらかせ、その皇后を押し退け、自分が皇后になり気弱な高宗に代わって全てを取り仕切る。高宗の没後は皇帝に即位してしまうのだから凄い。
さらに中宗の韋皇后も旦那そっちのけで、娘と共謀して旦那や息子を殺して権力を奪おうとするのだから凄まじい。この「武韋の禍」を解決し党の最盛期を築いた玄宗だって、晩年いい歳こいて楊貴妃に入れ上げて安禄山に長安を奪われ、まるでアフガニスタンの大統領のように都を逃げ出す。
男性はどんだけ女性に弱いか
女性はどこまで暴走するか
どんなに成功した人でも最後まで立派で貫けない
様々な教訓が隋唐時代にはありました。
Posted by ブクログ
前半で隋建国から唐滅亡までの通史、後半で様々な視点からの社会の諸相、周辺国との関わりといった幅広い内容で、時代の理解を深めるにはうってつけの内容。懐の深い時代だったと感じさせられる。