あらすじ
地図帳の老舗・帝国書院と地図研究家・今尾恵介氏がタッグを組んだ『地図帳の深読み』
待望の第2弾!
今回のテーマは、ズバリ「昔の地図帳」。
100年以上の歴史を持つ帝国書院の書庫に眠る大正や戦前戦後の地図帳を、今回も今尾氏ならではの軽妙洒脱な筆致で「深読み」します!
日本一高い山、日本の東西南北端、地名、国名、国旗、国境など…現代の地図と読み比べると、あらゆる部分が変わっていることに気づかされます。
各時代の地図帳を「深読み」すると、地図帳が作られた当時の社会情勢、時代背景がまざまざと浮かび上がってきて、歴史好きな方にも読み応えがある一冊に仕上がりました。
皆さんが学生時代に使っていた頃の地図帳も登場するかもしれません。
家の奥に眠るあの地図帳、今もう一度繙いてみませんか。
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Posted by ブクログ
今尾恵介さんが書かれた、帝国書院の地図本。
前作『地図帳の深読み』に引き続き、帝国書院が今まで発行してきた地図をもとに地理的なことからわかる国土、交通、産業などについてかかれています。
今作は特に、100年の間に帝国書院で出版してきた地図帳からわかる歴史を、詳しく書かれています。
パナマ運河ができていく過程など、世界的な開発を地図から読み取る。
時代で変わる国境を地図から見る。時の政権に翻弄されて名前が変わっていく都市を見る。
明治以降、日本の国境が、樺太、千島列島、台湾、南方の様々な島、朝鮮半島など拡大していくのを地図でも描かれているのを複雑な思いで読みました。
場所は同じはずなのに、その時々でどんどん変わっていくのだなあ。
また、それぞれの時代で地図として描かれているのだなあと感じました。
それから、帝国書院の地図、時代によって描き方は変わっているのだけど、どの時代もきれいです。好きですねぇ。
Posted by ブクログ
端的に、ガチで興味深かった。
前作は文章と図の対応が非常に読みづらかったが、大きく改善されている。
主な地図や表が数枚に対して、説明の文章が3−4ページ。
分量も構成も丁度いい。
現代とは違い、領土を血で奪い合う歴史がよく分かる。
・満洲
・パナマ運河
・戦前日本の東西南北端
・台湾統治とサトウキビ、鉄道
・日本産レアメタル
・沖縄、奄美、小笠原の無い日本
・樺太
・磐梯山
・新高山
・日本人移民
Posted by ブクログ
前作「地図帳の深読み」に続いて帝国書院の高校教科書地図を肴に地図から読み取れる蘊蓄を語っていきます。
今回は過去の地図と比較してというもの。戦前の地図は日本の範囲が違うので当然差が有るのですが、そういう表面的な差だけでなく、細かい字で書かれている産業が違っていたり、主題図で取り上げるテーマ自体に差があるというのは面白いですね。
帝国書院の教科書地図は古いものが幾つか復刻されているので、それを手に入れて追体験してみようかと思います。
Posted by ブクログ
前作に続き、地図帳から読み取れることを歴史と交えて解説し、地図の面白さを伝えようとする本。今作は古い地図帳を多く引用し、当時の世相や、地名・地形・境界の変化などに焦点を当てている。「深読み」というタイトルに相応しく、どの項目も詳細に分析されていて、内容の濃い一冊となっている。
本書を通じて学んだ点は次のとおり。
- 1923年の関東大震災を機で市街地の多くが焼失したのを機に、東京では復興と共に防火対策が行われた。昭和通りや隅田公園、浜町公園を設けたり、街路樹にイチョウが選ばれたのがその例である。
- 三角州には様々な種類があり、円弧状、カスプ状、鳥趾状の3つが代表的。円弧状は太田川など日本でも多く見られたが、埋立地として工業地帯化され、あまり原形をとどめていない。カスプ状はテヴェレ川、鳥趾状はミシシッピ川が有名。
Posted by ブクログ
100年前の古い地図からいろいろなことを読み解く本。全編カラーで古い地図もたくさん載っている。4ページごとくらいに話題が次々と変わり、地図を楽しむことができる。ただ挿入されている地図はどうしても部分的な小さなものであり、せっかくの地図の本なのにそこが不満。解説を半分にしてでも、あるいは話題を半分にしてでも、見開きで大きく古い地図をのせてくれたほうが、地図好きの私としては楽しめた気がする。
Posted by ブクログ
地図の専門出版が世に問う「深読みシリーズ」で、地図の歴史的な読み比べが出た。今年8月に発行された時から紐解くのを愉しみにしていたが、感想は「少し残念」というものだった。
100年前の地図というと、全て旧字体でしかも印刷技術は発達していないから文字が潰れているものも多い。それなのに、前作と同じレイアウトを使い、1ページの1/6ぐらいしか使わない地図が多用されていた。これだと、目の悪い私なんかそれだけで見る気が半減した。地図にある豊富な情報が読み取れないのだ。昔の地図は今回の倍ぐらいは総て拡大するべきだったと思う。
それでも、面白かったところ。
・関東大震災直前とその後区画整理された後の東京・新大橋辺りの地図の比較(25p)。
・台湾台中辺りの昭和9年の地図。サトウキビを収穫するため鉄道が発達している(55p)。←旅した時にこの辺りが栄えていた理由がわかった。
・台湾に今も残る日本式地名の意味(高雄、松山、板橋等々)。台湾の親日の現れというだけではない。その前の地名は、当時の宗主国清朝が与えた。その現地読みの漢字化が屈辱的だった。高雄の前は「打狗(ターカオ)」。←そういうことは、日本人はきっちり知っておかないといけない。だから、一方で韓国の地名は戦後直ぐに元に戻ったのであるし、韓国民にとっては日本人に三十数年間強制された地名(ソウル市内だけでも青葉町、大和町、並木町、弥生町等々多数)は屈辱だったに違いない。(57p、106p)
・沖縄・嘉手納基地の大正8年の地図を初めて見た。銃剣とブルドーザーで接収された土地は野原や畑だけではなかった。数千人の生活を保つ大きな町が2つもあった。(68p)
※ ここで、本書の記述を少し超えてハイジさんのリクエストに応えたい。165p、167pの二つの岡山県南地図は本書では珍しく大きな縮尺で、細かい所まで確認できる。地域の産業の変遷が、地図から読み取れる例として使われているのではある。質問されたことに答えるとともにもう少し詳しく解説したい。
先ず令和3年の地図に特産品として「弁当」が載っている。「弁当の特産品って何?」ハイジさんの指摘では何のことかわからなかったが、弁当と言えばどうせ駅弁のことだろう、だとすると祭り寿司かなと想定して紐解くと、何と弁当産地は大きな町のない田舎、むしろ山の中ではないか!笠岡在住の詳しい友人に質問したが、初めて聞いたという。「昔は下駄の産地だったらしいです(←これは私も初耳)」とのこと。全然違いますね。もしかしたら教科書の誤植である可能性があります。
県南の児島地区は干拓地なので、塩害の関係で塩に強い産業が発達した。それが、昭和9年の地図に綿花、綿糸、染料、花ござ、真田紐、除虫菊が記入されている理由になっている。最近の干拓地ではなく、戦国から江戸時代にかけての非常に大掛かりなもので、500年の歴史がある。
それどころではない。実は、岡山県の人口の大半を占める県南地の平野部分のほとんど(現在の岡山市・倉敷市の大部分)は、岡山県にある三本の三大一級河川の土砂でできたものなのである。古く弥生時代前期に遡れば、この平野部分は全部海だった。「吉備の穴海」とも言い、遠浅の海が続いていた。この500年こそは人口干拓だったが、3000年かけての長い干拓地だった、とも言える。だからこそ、2000年前に吉備国が栄えた。1000年以上かけて岡山平野という大きな穀倉地帯が現れたのである。源平合戦の時は、遠浅の海を巡って様々な悲劇が繰り広げられた(←すみません、省略します)。
閑話休題。
塩害に強い綿花から綿糸や染料へ産業が広がり、現在は学生服(シェア7割)、ジーンズ(厚手織物の技術の継承)に移りました。
一方の流れとして、児島の由加神社お土産の真田紐から厚手織りの小倉織、足袋、ジーンズに変遷して行く。ここには書いてないが、厚手織物として帆布の生産も高い。それを使ったトートバッグは多くの商品が出回っている。ジーンズは児島だけでなく、離れた井原も生産地だ。
また、倉敷から大原孫三郎が出現してクラボウを世界的な企業にしている。だから、大原美術館もできた。
真田紐から麦わら帽子が発達して、現在もシェアは高い。祖母が長いこと、麦わら帽子の原料の組紐みたいな材料つくりを内職でやっていた(50年前)。除虫菊生産も塩害の関係だろう。近くの玉島に古くて大きな線香の工場があるのを知っている。つい最近まで存在していたけど、最近行っていないなぁ。
塩害の関係で、イグサの生産量は高かった。その関係で現在も備前畳表は生産量質共に高い。
‥‥こう書くと、改めて3000年にわたる土地を活かした産業への、庶民の「工夫」が、我々の生活を作っているのだな、と感じた。